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第九一七話 「魂魄」

 『魂魄こんぱくってなんにゃ?』


 えっ?!


 『なんだ、そっちの猫の仔も話が出来るのか。

 ……もしかして、お主も勇者か?」


 『地母神様の勇者チャチャにゃ。』


 『地母神様の勇者だと?!……たしかに地母神様の神気を感じる、いや待て、お主もそうか。』


 『同じく地母神様の最初の勇者、レインよ。』


 チャチャが【古代共通大陸語】で話し始めた事に驚いている間もなく話しが進んでいく。


 『これは想定外だな。地母神様の勇者となれば無碍むげにもできまい。

 その問いにも答えよう。』



▽▽▽▽▽



 魂魄の話については、魔王の解説よりも、それを聞いたチャチャの要約の方が分かりやすいものだった。


 雑にというか、簡単にいうと、人は卵のような形で出来ている。


 身体という殻と、心という黄身と、身体を動かす白身の3つだ。


 そのうち、黄身をこん、白身をはくといい、両方合わせて、魂魄、つまり魂なのだという。


 死後、こんは天に上り、魄は殻である身体とともに土へと帰る。


 魔王曰く、こんの一部は次の生へと転生し、もう一部は氏神の元へ行き、そして最後の一部が迷宮へと吸収され、その願望を迷宮へと伝える。


 はくは、迷宮の魔力と合わさり7つの魔素核と材料を生むのだそうな。


 これ、外で人が死んだ場合はどうなんだろ?とは思うが、少なくても迷宮の中でのシステムとしてはそうなっているらしい。


 雑に言ってしまえば、7体魔物を狩っているうちに一人死なないと迷宮側としては赤字になるということか。


 魔素核がドロップしない場合はその限りではなさそうだし、エグザルの迷宮のように野生のハーピーなどが生息している場合とかも、また条件が変わってくるのだろう。


 『今の迷宮は、どういう状態なの?』


 なにやら話が通じそうなので、思い切って魔王サイドの現状を聞いてみる。


 『欲が満ちておる。

 欲望を持ち迷宮に入るものが多く、またそれを抱えたまま死を迎える者も多い。


 特に強い欲から生まれたものが、そのまま放置され、力を強め、他の欲を圧迫しておる。


 欲を解放しろと、欲望を叶えるためのはくを集めろと、迷宮がえずいている。』


 つまり、ランクの高い魔物が放置され、中堅の魔物を追いやり、逆に低ランク帯は狩られ過ぎて、材料が足りない。


 だから、外に魔物を吐き出してでも材料を確保しよう。という、状況がスタンピートなのだろう。


 魔王に悪気はない。

 むしろ人の欲を叶えるために、迷宮の状況を整えようとしていると、いっても良いだろう。


 いや、だからといって、はいどうぞ、というわけにはいかないのだが。


 逆に話が出来て、状況が分かる分、困ったなこれ。



▽▽▽▽▽



 『魔王にとって、魔族は倒されて困る存在だとは思うが、迷宮獣は倒されて当然という認識で良いのかしら?』


 『そのとおりである。

 むしろ倒され、循環しなければ、迷宮の健全性が保てぬ。』


 ふむ、落としどころがあるとすれば、そこか。


 『話を聞く限り、第6階層並びに第7階層の過密化の解消と、それ以上の階層の高ランク迷宮獣を倒し、それが循環側に回れば、迷宮獣の迷宮外への暴走は止められるように聞こえるけど、間違っているかしら?』


 『それが可能か不可能かは別として、考え方としては正しい。

 それらが循環側にまわり、迷宮が初期状態に近くなれば、我らの力で迷宮を安定させることは可能だろう。』


 『逆に魔族が迷宮獣を倒すことは禁忌なの?』


 『禁忌であるし、そもそも倒す必要がない。

 そもそも魔族にとって迷宮獣は、迷宮のために生み出し、育て、使役するものであり、迷宮にとって魔族は、バランスの崩れた迷宮を整えるためのシステムであり、その統括が魔王たる我である。』


 なんか、今まで聞いていた魔王と全然話が違うんだけども。


 まあ、それならそれで、やりようがある。


 『では、魔王、取り引きしたいことがあるわ。』


 サオリです。


 凄いわレインさん、魔王と互角に交渉しているなんて……。

 

 てっきりわたし、このまま戦闘になるものだと思いこんでいたわ。


 次回、第九一八話 「提案」


 でも、魔王を倒さないというわけにもいかないのよね?

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