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第八九六話 「夜天神と天父神」

 「味方というか、中立、バランサーといった方が近いわね。


 勇者召喚の儀式だって、今となっては対魔王用、つまり対宙転神用の儀式だけど、もともとは対亜人用、つまり私達三柱用の儀式だったわけだし、先を見越して中立を保っているって感じなのよ、夜天の姉さんは。」


 なるほど。

 地母神様にとっては完全に味方というわけではないのか。


 「天を裂き、地上に落下した『種星落とし』は、文字通り天父神の身体も裂き、ある意味、私以上に危ない状況だったところを、夜天の姉さんが月の中に保護して、その神力の回復に努めさせている。というのが、こちら側からの視点ね。


 天父神の眷属への加護は月の満ち欠けで、加減をさせながら、本人の完全な回復を待っているといったところかしら。」


 「逆にいうと、宙転神に対しては、殺しきれなかった天父神は、夜天神様が幽閉して、下手な手出しをできなくしてあげる。とでも言っていると?」


 「ま、そんな感じね。」


 なるほど、中立といえば中立だ。


 その分、どっちが本気なのかがわからないのと、どちらの敵にもまわりうるのが怖いところだな。


 「関連の質問なんですが、もしもの話、夜天神様は宙転神をその月に幽閉することが可能ですか?」


 「……鋭い所をついてくるわね。


 結論からいうと、『種星落とし』の際の天父神や私くらい宙転神が弱っていれば可能らしいわ。」


 らしい、ということは、おそらく地母神様も既に夜天神様に聞いてみたのだろう。


 「ただし、宙転神を相手にするには全部の地母神わたしが、元の世界にちゃんと戻れて、天父神も傷が癒え、海母神ねえさんも、完全に神力を取り戻して、三柱で当たるくらいの神力が必要となるわ。


 それくらい、宙転神や夜天の姉さんとの差が私達にはあるの。」


 あれ?それって……


 「逆にいえば、夜天神様の力を、もしも借りられれば、もっと有利になるってことですよね?」


 「まぁ、そういうことにはなるわね。」


 「勇者って元を正せば、夜天神様のお力じゃないですか?」


 「あ。」


 そうなのだ、使っているのは宙転神の眷属である人族かもしれないが、もともとは夜天神様の術式、つまり勇者自体は夜天神様の属性も持っているはずなのだ。


 「勇者を上手く使えば、宙転神に有利に対抗できるということ?」


 いや、厄介事に関わりたくはないのだが、その可能性は高い。

 なにせ星の根にだって対抗できたのだ、その同属性に対抗できない道理はないだろう。


 「おそらく。ですけどね。」


 「うーん、ちょっと考えておくわ。


 状況が整うまで、何年、何十年、何百年かかるか分からないから、貴方がたにお願いするかどうかは分からないけど。」



 さすが神様、スケールがデカい。

 逆にいうと、神力や傷の回復には、本来それくらいのスケールの時間がかかるのだろう。


 『種星落とし』だって、最近の話のように会話しているが100年以上前の出来事だしな。


 「あー、そういう事だったんスか。」


 会話を黙って聞いていたミツキが、何かを思い出したように声を上げる。


 「なにかあったの?」


 「いえ、昔、本で呼んだ、『星降りの日、太陽はその身を隠し、地上は闇に包まれた。』って文言があったんスけど、それって、夜天神様が天父神様を保護した時の事を表現してあったんだな、と、思っただけッス。」


 「あー、それ、ユメニシ陛下に聞いてみたら教えてくれるかも知れない。

 あとの亜人ひと、『種星落とし』リアルタイム世代だし。」


 「女王陛下に質問とか恐れ多いッスよー。」


 「迷宮の中では仲良くしてたじゃないか。」


 「それはそれ、これはこれッス。」


 まぁ、ミツキが気にするほど、ユメニシ陛下は気にしないと思うけどな。


 イメージ的には日食の事を話したら、「あー、そんな感じ、わえ見たもん。」とかいいそうだ。


 「む、そろそろ時間みたいね。

 

 じゃ、最後に……




 では、また会えるのを楽しみに待っているわ。

 眷属の子達が頑張ってくれるのは嬉しいけど、無理しちゃ駄目よ?

 本当に駄目よ?


 じゃあね。」


 そういって笑顔で手を振りながら消えていく地母神様。


 無理しちゃ駄目よ、が、ネタフリじゃないことを信じたい。

 是非、信じたい。

 ミツキッス。


 ユメニシ陛下は気さくな方ッスけど、流石に立場というものがあるッスからね、そうそう気軽に知的好奇心で思ったことを聞くのは、はばかられるッス。


 次回、第八九七話 「神殿からの帰還」


 それにしても、100年以上前の出来事がリアルタイムッスか……想像もつかないッスね。

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