第八九〇話 「性なる儀式」
「それは、なにか特殊な儀式かなにかで譲りうけたんだべか?」
「……ええ、まぁ……。」
『レベル上げ』ばっかりしてたら貰えるようになっていた、とは言いづらいので言葉を濁す。
「そ、それじゃぁ、レン君はその儀式を最優先に……」
「そうだべ、いち早く地母神様を元のお姿に……」
「まてまてまて」
凄い食いつきをみせたマミ先生とヤコさんをユメニシ陛下が引き止めた。
「亜人族の感覚で考えすぎじゃ。
『種星落とし』はおそらく110年ほど前、それで今この状況なのだから、今日明日どうなるものでもなかろう。」
「110年前、って、ご存知だったのですか?」
ユメニシ陛下の以外な言葉に思わず聞き返してしまう。
「まぁ、子どものころに見たからなぁ。
たぶん、あの流星と衝撃が『種星落とし』だったのじゃろう。
当時は結構大騒ぎになっておったぞ。」
そういや、この竜人族117歳だった。
「まずは、その特殊な儀式とやらは継続してもらうとしてだ、勇者殿には、各迷宮に魔王が発生していないかを確認して貰いたい。
なに、勇者就任の表敬訪問も兼ねているとでもいえば、どこの街でも無下にはされまい。
本来ならば、各国から重鎮を呼んで、新勇者のお披露目会をするところではあるが、お硬い会が好きそうには見えんしの。」
どうやら私の索敵能力をかってか、ユメニシ陛下はそんなことを言い出した。
確かに迷宮の最下層を目指して、かつ魔族を見分けられる速度からすれば、私の右に出るものはいないだろう。
淫魔法【夜遊び情報誌】様様だ。
それに今回使った短距離転移魔法を組み合わせれば、おそらくあっという間だろう。
「それは私達のパーティーだけで動いても?」
「もちろんじゃ。サビラギもそれでいいか?」
「そうじゃな、その方が婿殿も気兼ねなく動けるじゃろう。
礼儀作法はサオリに仕込んであるから、後で習うといい。」
ユメニシ陛下とサビラギ様の許しが出たので、これからは久しぶりに一家での旅になりそうだ。
それはそれで、ちょっと楽しみだな。
▽▽▽▽▽
勇者への認定も終わり、迷宮の探索も終わって淫魔法【ラブホテル】の別荘に戻ったころには、もう相当遅い時間だった。
食事自体は流石にユメニシ陛下が用意してくれたのだが、良いことも悪いことも色々あったため、酒宴状態になってしまい、こんな時間になったというわけだ。
もちろん、王城にそれぞれの部屋は用意されているのだが、家族の要望で、こうして、別荘に集まって、サナの入れてくれた麦茶を飲みながら1名を除き人心地している。
まあ、その1名とはチャチャなわけだが。
いつものチャチャの皆で一緒にいたい病が発病したので、こうして家族だけで帰って来たのは良いが、もうそれだけで満足してしまったのか、今は子猫モードに入って丸くなって寝てしまっている。
たぶん、サビラギ様の指導がハードだったせいもあるのだろう。
「せっかく里に戻ってきたと思ったら、また旅の生活に逆戻りですね。」
サオリさんが、そうはいいつつ、悪い気はしていないような口ぶりでそんなことをいいだした。
「と、いっても、大体寝る時は、この家ッスからね、いつもの生活とかわんないッスよ。」
と、ミツキが続く。
「どの街の迷宮から調査に入るんですか?」
お盆を胸に抱えたままのサナの問に、
「ロマさん達をエグザルの街に送ってからだから、そのままエグザルの迷宮からかな?
一度魔王が発生している場所だから、ほかの場所とは勝手が違うかもしれないけど、だからこそ最初に調べておいた方が良いと思う。」
魔王の発生前、発生後が見れる貴重な場所だしな。
こんな風に簡単な打ち合わせをしながら、和やかな家族の時間が過ぎていった。
ミツキッス。
なんか孤児だったアタシが、女王陛下に謁見できるどころか、一緒に戦うなんて、絶対2ヶ月前の自分にいっても絶対信用しないッスよね。
我ながら波乱万丈な人生ッス。
次回、第八九一話 「性なる儀式(実践)」
ま、こうして幸せな生活ができるのもパパのおかげなんスけどね。
……そう考えると、お礼したくなるッスね……。




