第八八八話 「神々と迷宮」
まずは星の根の話をする前には、地母神様、海母神様、天父神様の三柱の神以前の二柱の神、宙転神、夜天神について話さなくてはならない。
まずは簡単に、それらの神々を知っているかどうかの確認をとってみると、このメンバーの中で知っているのはマミ先生とヤコさん、それからユメニシ陛下の3人だけだった。
古い神話の一節の中で、と、ことわりを入れた上で、どういう神様なのかは、ヤコさんが変わりに説明してくれたので助かった。
私達が地母神様に教わった、天父神様が空と太陽を司るのであれば、その外側、この星を回し星の運行を司る神様が宙転神、夜の帳を下ろし、夜と月を司る神様が夜天神というあれだ。
やはり専門家だけあって、説明が上手く、マミ先生の補足もあり、地母神様からの情報以上の話を聞くこともできた。
たとえば、この二柱以外の、三柱の父母神を含むその他の神様を創造し、この世界を去った二柱の創造神の詳しい情報なんかがそうだが、今回の案件には直接関わってこないので省略する。
そしてここからが、私達が地母神様から教わった現状を説明するくだりとなった。
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人族が増え、信仰を集めていく天父神に天どころか宙を統べる自分に人の信仰が集まらないのはおかしい。と宙転神が嫉妬をしはじめたのが事の発端で、宙転神は二柱の創造神から見ても長兄?(性別は無いが男神よりらしい)で、それらから創造された三柱の内、末の天父神に自分が劣るのが我慢ならず、今の天父神の座を乗っ取ろうとしはじめたとのこと。
実際のところ、星の運行を司る宙転神は、長兄の上、星の一部として太陽や月の運行自体も司るため、能力的にも、天父神を超えており、二柱の創造神がこの世界を去った当時、誰も宙転神止められるものが居なかった、という状態だったらしいことを説明した。
「うにゃ?七兄弟なのにゃ?」
「ちがうべ、ちょっとわかりづらいけど、二柱の創造神の兄で長兄が宙転神様、二番目が姉の夜天神様、創造神様方の子どもが地母神様、海母神様、天父神様の三柱の神様。
創造神様はすでにこの世界を去り、地母神様、海母神様、天父神様が、この世界を統べていたと思ったら、天父神様からみると伯父にあたる宙転神様が嫉妬をし始めたという話だべな。」
混乱するチャチャにヤコさんがフォローを入れてくれた。
そして宙転神が人族の信仰を集めるために行ったのが『種星落とし』。
現在、大聖神国街がある位置に星の種を落とし、無理やり星の生気を活性化させ、迷宮を創るという荒業だ。
荒業過ぎて、大地を司る地母神様が衝撃に抵抗しなければ、下手したらこの島自体が消し飛んでたかもしれず、地母神様が怒っていたという話にはマミ先生とヤコさんが顔をしかめていた。
その星の種は落下の衝撃で二つに割れ、大聖神国街に二つの迷宮をつくり、そこから根を張って、大地の精を吸い上げながら、十二新興街にあるほとんどの迷宮の元となった。
海母神様が作ったこのトラージの迷宮や、地母神様が作ったエグザルの旧迷宮などは例外だが、それには十二新興街という円の形の迷宮群による魔法陣を引かれ、地上を支配されることを阻止する意味合いもあったらしいことも説明する。
十二新興街という円の形の迷宮群が完成しているということは、結果的に星の根は迷宮の元になったものの、迷宮自体は宙転神以外の神様が作り上げたことになるのかな?
地母神様のお話だと、結局地上を侵食されて新迷宮が山の中に出来たエグザルしか宙転神の迷宮は無さそうな口ぶりだったし。
地母神様の話と現状を考えると、魔王は2種類いるらしく、一つは迷宮の魔力のキャパオーバーとして発生する魔族の王としての魔王。
そしてもう一つは、その魔王を材料として星の根を核として生まれる魔王。
魔王は宙転神側の存在で、十二新興街+大聖神国街の迷宮全てに魔王が存在したら、地上は支配され、宙転神がこの世界の天と地を統べることになるので、少なくても亜人族はピンチ。と、思ってくれれば良いと地母神様は言っていたが、前者の場合はセーフなような気がしないでもない。
問題は後者の場合、つまり、今回は偶然防ぐことができたが、星の根に魔王の種が食われ、星の根の魔王が誕生することだ。
地母神様から教わったことを全部話すと、異常な量になるので、星の根に関する情報を提示したのだが、それだけでも、一同、重たい表情になっている。
まぁ、なんせ、ここにいる純粋な人族ってカレルラだけだし、亜人族のピンチと言われれば、そんな表情にもなるだろう。
「ま、そんなに悲観することもあるまい。」
そんな思い空気の中、声を発したのはサビラギ様だった。
「迷宮については、星の根はともかく、要は魔王を発生させなければ良いだけの話じゃ。
それぞれの迷宮の深階層の間引きを徹底して、魔族や最下層を発生させない。という、従来の原則を強化すれば良かろう。」
「そ、そうですわね、その旨、十二新興街の各迷宮のギルドへ私の名前で、触れを出しましょう。」
サビラギ様の言葉に気を取り戻したようで、ユメニシ陛下が、胸の前で手を合わせながら、そう対策を立案した。
それは良いのだが。
「問題はー地母神様やー天父神様はーご無事なのかということですねー。」
まぁ、マミ先生としてはそこに注目しちゃうよね。
サオリです。
わたしたちみたいに、みなさんも直接地母神様とお話ができれば一番話が早いのでしょうけども、あまりにも情報が多すぎて、整理するだけでも大変です。
次回、第八八九話 「地母神様の変質」
地母神様の現状は、お話するのが心苦しいですね。
 




