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第八八六話 「脱出」

 やがて二人共【神使化】を解き、元の姿に戻った後、装備を整え直して、皆んなのほうに向き直った。


 「心配かけたの。

 見たところ、魔王の種が消滅して、この階層自体が異物になりつつある。


 待たせたようだが、早く脱出しよう。」


 サビラギ様が、階段の方を警戒しているロマを除いた全員の顔を見回しながら、そういって、脱出を促す。


 「と、その前に、魔王の魔素核は落ちなかったか?

 種なら微妙なところじゃろうが。」


 「チャチャが見るにゃー。」


 サビラギ様にそういわれて、そういえば、とガラスケースの方を見ると、すでにもうチャチャが走りよって覗き込み、槍で開けた穴から手を入れて伸ばしていた。


 ガラスで手を切りそうで、見ていて怖い。


 いや、普通のガラス相手なら防刃性能あるから大丈夫だろうけど。

 あれ?あのガラスケースの魔法の物品だったり?だったら切れちゃうな。


 そんなどうでもいいことを考えているうちに、チャチャが両手で虫でも捕まえてきたように手を合わせながら、こちらに走り戻ってきた。


 「あったけど、なんかちっちゃいにゃ。」


 そういって手を開くと、普通は親指の爪くらいの大きさの宝石のような魔素核に比べ、小指の爪ほどの大きさと、かなり小さい。


 今まで魔素核は相手の身体の大きさに関わらず一定の大きさだったので、これは珍しい。


 大きさの代わりといってはなんだが、その色がサファイヤを思わせるような深い青と色が濃くなっている。


 「おお、それで良いそれで良い、よし、それをもって撤収じゃ。」


 「そうもいかなそうだぞ姐さん。」


 サビラギ様の声にロマが声を返す。


 「階段が崩れかかっている。上の方までは見えないが、最悪、生き埋めだぞこれ。」



▽▽▽▽▽



 勇者特性【ビジュアライズ】でマップを出すと、たしかにロマのいうとおり、9階層への階段が、崩壊しかかっているのが分かる。


 急げば間に合うかもしれないし、間に合わないかもしれないくらいの微妙なスピードで、上のほうから崩れ始めたら一気に崩壊してもおかしくない。


 「どうする?姐さん。」


 「走る以外に手があるか?」


 「そんな力技じゃなくてもぉ、あれがあるじゃなぁい?」


 以外な人物__カレルラがそういってヤコさんを見つめた。


 「!ああ、短距離転移魔法があるべ、この上の階は広間のはず、ならそんな難しくないべよ。」


 「あたしも手伝います!」

 「じゃあ、アタシは魔力を送るッス。」

 「じゃあー、わたしもー。」

 「チャチャもお手伝いするにゃ。」


 短距離転移魔法、すごい前にサナが覚えたという話を聞き、その使い方について考えたことがあったが、今、ここでその手があったか。


 「……迷宮の空間が崩壊しつつあるから、慎重にやるんだよ。」


 サビラギ様のGOが出たので、私が【ビジュアライズ】でマップを3D表示にして、転移場所をイメージしやすくさせた後、ヤコさんが主体で呪文を唱え始めた。


 皆は、同期魔法のためヤコさんと両手をつなぐサナ、それぞれの肩に手をおいて魔力を送るマミ先生とミツキとチャチャの周りに集まる。


 「いくべ!「【短距離転移】!」」



▽▽▽▽▽



 終わってしまえばあっさりとしたもので、広間に転移した途端、10階層への階段が崩れ落ちていくのが目に見えた。


 危機一髪と捉えるか、10階層に異物がなくなったから崩壊したかは、神の、いや、迷宮の身ぞ知るといったところだが、こうして無事に戻ってこれたのはなによりだ。


 「今回はカレルラのお手柄だべ。」


 「この人数を転移させられるぅヤコ姉さんのおかげですよぉ。」


 しおらしいカレルラというのも珍しいな。


 「なら、それこそ手伝ってくれたサナのおかげだべな。」


 「いえいえ、あたしなんて……。」


 お互いに謙遜しあっているが、なにはともあれ、命あっての物種だな。

 サナです。


 短距離転移魔法。


 やしろの裏門前の屋台通りで、お父さんと話した使い方が、こんな時に生きるとは思いませんでした。


 いつもだと、御主人様の扉の魔法で帰っちゃいますしね。


 次回、第八八七話 「魔王の魔素核」


 それにしても、無事、脱出できて良かったです。

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