第八七九話 「ヒュージ・カミツキガメ」
「デカいのか?」
「デカいですね。トリプルヘッド・シャークとどっこいといったところです。」
つまりトレーラー並の大きさがあるということだ。
淫スキル【性病検査】での鑑定の結果も伝えるが、体力もあり硬いモンスターだ。
前足はリクガメっぽく後ろ足はウミガメっぽい形状なので、機動力もそれなりにありそうで、噛む、引っ掻く、水流を使った攻撃やスキル、魔族なので魔法も使うことも考えられる。
レベルは人族の上限の50だが、このメンバーで負けるということは、まずなさそうだ。
このメンバー全員、あるいはサビラギ様抜きでも、という条件付きだが。
▽▽▽▽▽
「本当に見てるだけでいいのにゃ?」
「ああ、その代わり、ちゃんと見て、カレルラやユメニシ、ミツキがどう立ち回っているか、ちゃんと見てるんだよ?」
「はいにゃ!」
そんな師匠と弟子のような会話をしているチャチャとサビラギ様、そして私は見学組ということになった。
理由としては贅沢なもので、上位ランクの敵を倒した時のレベルの上がり方の検証のためだ。
要は、ランク差ボーナスというものをこの戦闘で実証してみようということだ。
サビラギ様にとっては、それを試すだけの信頼のおけるパーティーだということなんだろう。
また、今後の亜人族の育成に関しても、結構、重要なことなので、実際に自分の目で見ておきたいとのことだった。
なにげに稲白鬼の里の迷宮でもこのランク差ボーナスでパワーレベリング出来そうな場所があるので、サビラギ様が納得したら今度紹介してみよう。
と、いうわけで、レベル50以上の私達は見学、それ以下のメンバーは、こうして戦っているわけだが、
「バランスはいうほど悪くないですよね。」
「前衛にロマ、ユメニシ、盾役にサオリ、中衛と撹乱にカレルラとミツキ、後衛にマミ、ヤコ、サナと、むしろ良い方だろう。」
「凄いにゃぁ、圧倒的にゃぁ。」
「あ、何かスキル来ますよー!」
「頑張るにゃー!
まぁ、こうして見ている私達にとっては、スキルや魔法が来るタイミングを教えることと応援することぐらいだ。
もっとも、それを聞いて十分対応できる戦闘組が凄いのだが。
▽▽▽▽▽
「いくべ!!一点収束、同期魔法と同調魔法の複合術式、単発上級土魔法!!」
「魔力補佐ーしますー。」
「術式サポートします!」
「同じくッス!」
「じゃぁ、わえも、ロマ、前衛よろしくね。」
「長くはもたんぞ。」
「3秒後、そちらに向かせるわぁ。」
「その際、一瞬、止めます。」
いよいよクライマックスらしい、ヤコさんがの頭上にオベリスクを思わせる大きな石の槍のようなものが形成されていく。
その形成に合わせて、ヤコさんが弓を引くようなポーズで引き手を絞り切る。
「今!穿け!」
カレルラの攻撃による誘導と、ロマによる力任せの横殴りにより、石の槍の真正面にヒュージ・カミツキガメの顔面が合わさる。
噛みつくかのように大きく口を開け、首を伸ばして対抗するも、その首自体をサオリさんの【金剛結界】で固定され、逆に口の中へと石の槍が吸い込まれていった。
「魔力上げるべ!口さえ抜ければ、あとは止められないっしょ!」
「「「「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」
術師5人、裂帛の気合が迷宮に響く。
その際、本日2回目の【金剛結界】がヒュージ・カミツキガメの口を捉える。
事前にかけててよかった淫魔法【回春】。
使い切った気力ゲージが【回春】で回復したのだろう。
噛みついてでも石の槍を止めようとしたヒュージ・カミツキガメの口を強制的に開けるよう、口角の左右に1本ずつ【金剛結界】が形成されていた。
「押し込むわよぉ。」
「さっさと……いけぇ!!!」
「いやぁあああああ!!」
カレルラが蹴りで角度を再調整して、最後部をロマの槍とサオリさんの薙刀の石突によって叩かれ、威力と速度を増す石の槍。
ヒュージ・カミツキガメの抵抗も虚しく、その口から喉を割くように体内へと石の槍はその体内を蹂躙していき、尻尾の穴から顔を見せたところで止まり、それから一拍おいて光となって消えていった。
チャチャにゃ!
みんな凄いにゃぁ、ととさんもいないのに、あんな大きなカメやっつけちゃうんにゃ。
チャチャもちょっとお手伝いしたかったにゃぁ。
次回、第八八〇話 「ランク差ボーナス」
うにゃ?カプセル拾いに行ってもいいのにゃ?
でもチャチャ、何もしてにゃいにゃよ?




