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第八七一話 「竜人族」

 それにしても、ユメニシ陛下の顔を、どこかで見たことがあると思ったら、トラージの街の娼館ギルドのマスターだ。


 ギルドマスターは長い金髪の両側の側頭部から3本づつ黒い角が生えており、青黒い尻尾が生えていたが、ユメニシ陛下も髪色は更に明るく、角は青、尻尾も海をおもわせるような明るい青と、全体的に色が明るめだが、身体のつくりは似ている。


 「なに?竜人族が珍しい?」


 「いえ、いや、珍しい分には珍しいんでしょうけど、失礼ながら娼館ギルドのギルドマスターに似ておられるな、と、思いまして。」


 「あー、妹じゃからな、それはとうぜんじゃ。」


 声も似ているので、話し方まで似せると、本当にそっくりだ。


 「竜人族は特殊でな、一番多く姉妹がいる長女が族長となるんじゃ。長命だが繁殖力が低いが故の風習らしい。」


 「流石に4色族まで合わせると、そう簡単な話じゃないがの、とりあえず今は、わえが族長で種族長で女王じゃ。」


 先ほどのメイド姿での話し方は若作りをしていたのか、あるいはこれが威厳のある話し方として認識しているのか、口調まで娼館ギルドのギルドマスターに似て来た。


 それはさておき、長命種はいるが、その場合は繁殖能力が低く、レベルの上りも遅い。

 故に繁殖力と長寿、そしてレベルの上りが早い人族に対して、亜人族は総合的に不利な上、対亜人族用決戦兵器「勇者」まで現れたが、ゆくゆくはそれが対魔王用決戦兵器へと転化していく。


 それをリアルタイムで見ている可能性があるのが、ユメニシ陛下を含む竜人族なのか。


 機会があれば色々聞いて見たいところだ。

 サビラギ様の話みたいに、伝え聞いたことと、実際起きた事とは、たぶん相当差異があるだろうからな。


 横にいるミツキも同じような考えらしく、キラキラとした目で尻尾をピコピコと動かしている。


 「で、なんでユメニシはここに?」

 「ああ、どうせサビラギのことだから、予定どおりに話が進んでないとおもってね。

 事前に口裏合わせに来たのよ。」


 うん、やっぱりカレルラとは仲が良いのか、フレンドリーに会話している。


 あと、ロマ、マミ先生、ヤコさんが、そうだそうだといわんばかりにユメニシ陛下の言葉に頷いている。


 「失礼な!と、いいたいところじゃが、実際、少々困っておる。

 女王陛下の知恵をお借りしたいところじゃな。」


 「最初からそういえばいいのよ!」


 「そう思って押しかけるなら、先ぶれの一つでも出せ!」



 「仲良しにゃー。」

 「そうッスね。」

 「うん。」



▽▽▽▽▽



 「女にもなれるなんて、一部の魚族みたいね。」


 レンから淫スキル【淫魔】を使って、淫魔の身体になって見せた時のユメニシ陛下の一声目がそれだった。


 いるんだ、そういう亜人族。

 ちょっと安心した。


 「耳の形は人族っぽくないから亜人族でも通りそうだけど、少し弱い感じがするわね。」


 そう、淫魔の通常モードでは、それほど私は亜人族っぽくないのだ。


 ハーフの人族でも、いそうな感じッスよね。と、前に何かの時にミツキにいわれたのを覚えている。


 ミツキもハーフというか人族の血を引いているせいで、形だけだが人族の耳もついているしな。


 実際、今はただの眼鏡かけ扱いだが。


 「あ、最近、羽根を生やせるようになりました。」


 地母神様とのことを思い出して、蝙蝠型の羽根を一対生やして見せる。


 「ほう、これなら十分亜人族らしく見える。

 羽根付きなら天父神様の系譜だろうから、勇者になりうる種族として昔候補に挙がっておったしな。」


 と、いうことは、今は上がってないのか。

 って、口ぶりから察するに、勇者召喚や神使化以外に勇者化の実験まで昔はしていたっぽいな。


 それだけ人族との軋轢が強い時代があったのだろう。


 「あとは、地母神様から授かった聖印があります。」


 少し満足そうにしていたユメニシ陛下に追い打ちをかけるべく、左手の甲に聖印を光らせた。


 「こ、これは、確かに地母神様の聖印……じゃったな?」

 「ああ、間違いない。」


 あれ?思ったよりリアクションが良くない。

 なんでサビラギ様に確認するんだ?と、一瞬思ったが、よく考えたら竜人族は、海母神様系の亜人族だった。


 それなら急にピンとこないのも仕方がない。


 「と、いうのが勇者レインじゃ。

 率直な感想を求む。」


 とりあえず私の勇者らしいところを見せたあと、そういってサビラギがユメニシ陛下に意見を求めると、


 「ちぐはぐじゃ。」


 と、ばっさりと切り払われた。


 「天父神様の系譜に見えるが、明確に地母神様の系譜の勇者と名乗るくらいなら、淫魔族じゃったか?

 かつての鬼族のように地から這い出たのではなく、迷宮から這い出た新種の地母神様系亜人族で地母神様から勇者の力も賜ったと言い張った方がまだマシじゃな。


 魔族と間違われないよう、魔素核が身体にないことを証明するため全裸になる必要もあるが、羞恥心はあるか?」


 「それはもちろんあります、必要とあらば。」


 淫魔の身体は自分の身体のようで、そうでもないので、淫魔の身体で全裸になることには意外と抵抗がない。


 それを家族に見られるのはどうかと思われるからしないだけだ。


 「なら、羽根は無しじゃな。

 迷宮で魔族かと思ったら迷宮から生まれたと思われる勇者の力を持つ新種の亜人族に一族が助けられた。

 勇者であるしるしとして地母神様の聖印を賜っているのが、魔族じゃない証拠じゃ。

 くらいでどうじゃ?」


 「ふむ、悪くない。」


 サビラギ様が満足そうに頷いている。


 たしかに時系列ガン無視だけど、それほど嘘ではないな。

 迷宮で召喚されてサキュバスと融合して生まれているのがこの身体なのだし。


 「よし、勇者レインはその路線で行こう。

 問題は……」


 「こっちの子猫ちゃんじゃな。」


 「にゃ?」

 ミツキッス!


 117歳ッスよ?117歳。

 しかも老化してない、117歳。


 歴史の生き証人じゃないッスか。

 いやー、本で読んだ歴史の矛盾点とか聞いて見たいッスー。


 次回、第八七二話 「猫人族」


 ただ身分の差があるッスからねー。

 サビラギ様の友達ということでワンチャンないッスかね?

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― 新着の感想 ―
[良い点] 女王様のチェックはいりまーす [一言] 「魔族と間違われないよう、魔素核が身体にないことを証明するため全裸になる必要もあるが、羞恥心はあるか?」  ついつい悪戯心が出てしまいましたレイン…
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