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第八六〇話 「旅立ちの詮議」

 さて、あんなに気合をいれてミナちゃんが練習をした、サビラギ様の旅立ちの詮議だが、あっさりと可決されてしまった。


 もちろん、根回しはしていたのだろうけども、今回のサビラギ様は、元族長ではなく、ミナちゃんの摂政のような補佐でもなく、一人のサビラギ・サオトメとして、


 いや、違うな、三国の探索者ギルドのプラチナの冒険者として、つまり、爵位を持った貴族として、かつ、アサーキ共和国の勇者代行として、詮議の場に立っていた。


 しかも自身の力を抑えることもなくだ。


 もう、こうなってしまうと、地母神系亜人族筆頭種族である鬼族にして正三位、白鬼族の詮議といえども、ぶっちゃけ何をしようと止められないのだ。と、後で赤の家守やもり様が教えてくれた。


 そう考えると、普段はそうとう抑えて、下手したてに出てるんだなぁ、サビラギ様。


 強いて問題を上げるとすれば、やりすぎて、本来なら明日出発の予定が、今日出発するようなノリになってしまい、午後からでも里を発たなければ格好がつかなくなっているくらいか。


 なにやってんだ、って話なのだが、サビラギ様の装備に合わせて、私達の装備も三頭大鮫みつがしらおおざめ革装備(一式)に揃えて登壇したものだから、それこそ準備万端に見えてしまったのかもしれない。


 っていうか、あの装備、外で見ると陽の光の反射で、めっちゃ威厳がありそうに見えるのな。


 結局、サオトメ家を除く四家が午後から里を送り出すセレモニーをしてくれるというので、現在は一度、サオトメ家の族長室に戻って来ている。


 「ちょっと、やりすぎたじゃろうか?」

 「はい。」


 ちょっと食い気味に返事をするミナちゃん。


 ミナちゃん怒ってる?


 「必ずレン本国トラージに勇者として認めさせて見せる。

 力ずくでもだ!」


 と、いうセリフとともに、力ずくの安心感を演出させたかったのだろうが、(たぶん)サビラギ様が全力を出して見せた瞬間、気絶者が続出したのだ。


 ざっくり鑑定した感じ、ランク2までは問答無用で気絶。


 ランク3なら一部、対抗できていたようだが、レベル差というより、威圧的なものをレジストできたかどうかが問題っぽい。


 ランク4以上なら大丈夫なようだが、そもそもランク4以上なんて、私達を除けば、里には片手で数えられるくらいしかいないしな。


 ちなみにシロツメとカタバミも、ちゃんとレジストした上で、めちゃめちゃテンションが高かったのだが、一応、貴方達、経済奴隷なのだから、大人しくしておいた方が良いのでは?と思ったものの、サビラギ様に憧れていた二人がその本当の力を目にしたのだから、気持ちは分からないでもない。


 そんな訳で、諸々の予定を狂わせた罰ということで、サビラギ様はミナちゃんに私達用の武器を分け与えるよう命じられていた。


 まぁ、たぶん、このくだりもヤラセで、サビラギ様も最初から私達にくれるつもりだったのだろうが、頑張って練習をしていたであろうミナちゃんに敬意を払って、恐縮したふりをしている。


 少なくても私とサオリさんは。



▽▽▽▽▽



 「ふむ、まずはサナじゃな。

 サナにはこの呪弓まじないゆみを授けよう。」


 サビラギ様はそういって、壁にかけてある、古めかしいというか、一見、地味で飾り気のない弓を手に取った。


 デザイン的な面で強いて言えば、地味なクリスマスリースのように、木の実が数種類ついているのが特徴だが、松ぼっくりみたいな実の方はともかく、赤い木の実は瑞々しい色合いを保っているのがちょっと気になる。


 生命力に満ちているように見えるが、ちょっと浮世離れしており、それでいて古めかしい。


 そんな矛盾を弓の形にしたような呪弓だ。


 サビラギ様の話によると、タツルギの迷宮にある、小世界樹の最上層の枝に寄生していた4本のヤドリギを素材に作った呪い弓なのだそうな。


 ヤドリギといえば、元の世界でも魔術に使うような魔法要素のある木だったはずだが、それが、あの迷宮の大樹より高く飛ぶ『何か』の糞により枝に種が宿り、あの迷宮の大樹の力を吸いあげ、枯れることなく、また、それでいて、一度も地に落ちず汚れたことがないとなると、その神秘力というか、込められている『何か」は、私では想像もできない。


 なにせ、サオリさんが今使っている業物の薙刀でさえ、その辺りに傘のように立ててある武器を一本持ってきた程度のものであるのに対し、弓としては唯一族長室の壁に掛けてあるということだけでも、その希少性が分かろうというものだ。


 それはサナ自体も理解しているらしく、祖母と孫という立場も忘れ、うやうやしく、


 「頂戴いたします。」


と、両手を差し出して受け取っていた。


 魔法に詳しい【修験者】であるサナには、なおさらこの弓の凄さが分かるのであろう。

 「説明はいるか?」


 「いえ、弓が語りかけてくれておりますので。」


 「ほぅ、そうか、それは授けた甲斐がある。

 使われることなく、上手く使うが良い。」


 「ありがとうございます。」


 まって、インテリジェンス・ウエポンでもあるの?それ?

 サナです。


 えーと、御本人?によると「小世界樹四方呪装弓」というお名前なのだそうです。


 とりあえず、今、持っているだけで感じるのは、体力と魔力と気力が常に回復していて、もう一本の枝で、その回復割合を変えられるとのことです。


 次回、第八六一話 「第2の武器」


 まだまだ凄い能力があるそうなので、暫くの間、耳を傾けておきますね。

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