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第八五八話 「旅立ちの朝」

 「素敵な装備ですね。」


 「今回はアサーキ共和国の勇者代行としてじゃからな、やはりそれなりのものを着んと格好もつかんでな。


 まぁ、実際、性能はそれなり程度なんじゃが、トラージの街にいくなら手堅いじゃろう。」


 本来であれば、昨日の午前にシロツメとカタバミの詮議が、午後からサビラギ様が私を勇者としてアサーキ共和国首都トラージへ連れて行くという件についての詮議が行われるはずだったのだが、昨日は午前中の詮議の結果、二人を奴隷化するという儀式が入ってしまったので、後者の詮議は今日の午前へと延期されている。


 で、その事前打ち合わせも含めて、サビラギ様の、いやミナちゃんの族長室にお邪魔しているというところだ。


 ちなみに今朝の朝食はサナの「美味しく食べて貰えるのは嬉しいが、ズルをしているようで落ち着かないので、普段は(淫スキル【裸エプロン】を)使わないようにする。」とのことで、昨日の夕食のようなことにはならなかったが、スキル【調理】自体はランク1になったので、普段より少し美味しい朝食を楽しむことになった。


 サナは何かお祝いごとでもあった時には、また昨晩のように全力で料理を振る舞うということで、他の3人を説得していたが、サオリさん以外は基本、普段は粗食派組なので、今後の楽しみが増えたと、むしろ喜んでいたから、これはこれで良かったのだろう。


 さて、話は戻ってサビラギ様の装備だが、ざっくりとした分類としては革鎧に分類されるだろう。


 色は白を基調に灰色でアクセント、というか、シルバーを基調にいぶし銀色でアクセント、あるいはその逆が入っているという感じだ。


 その色合いの割には思ったより光を反射せず、落ち着いた雰囲気を見せている。


 デザイン的にはまず頭の装備から視界確保を重視した半首はっぷり(だっけな?)。


 本来おでこから頬までを覆う面具だが、おでこから角の間を抜けて、後頭部まで広くカバーしてあるので、実質、かぶとだなこれ。


 サビラギ様はロングヘアーで上手く後頭部側の装備部分を隠すように着こなしていたが、そうでなくても装飾が見事なので、この辺りは好みが出るところだろう。


 胴体部分は上から和服のような前合わせをデザインしたベストにコルセット。


 インナーは2段階で、一番下はシルバーの長袖。


 イメージとしては装飾の入った銀のヒートテックみたいなものを想像してもらえれば、近いかもしれない。


 その上に少し暗めの銀のレオタード状の第二インナーが続き、一番上が、いぶし銀色のベストとコルセットで、どれも、なめし加減や厚さ、あるいは部分を変えた同質の革で出来ているようだ。


 下半身も基本的に上半身と同じく3層構造なのかな?


 ただ、排泄面を考えてなのか、あるいは可動域確保のためなのか、股間周辺は銀のインナーが少し広めに出ており、その上をレオタード状の第二インナーが覆っている。


 逆に太ももから下は、いぶし銀色の厚めの革で作られた一体型のブーツで覆われている。


 ん?よくみると膝の裏とか、関節部分などの要所は開けられており、第二インナーが見えてることを考えると、やはり可動性や機動性を重視しているのだろう。


 肘下から手の甲までをカバーする手甲も同じようなイメージのようだ。


 もちろん手袋もしているのだが、指ぬきグローブ状態なのは、【神使化】を使用した際に、爪が出る事を想定しているのかもしれない。


 ちなみに後ろから見たら第二インナーのレオタードの尻が丸見えだな。


 それにしても、


 「さっきから気になっていたのですが……」


 「ん?なんじゃ?」


 その丸見えのレオタードの尻を隠すかの用に、外側がいぶし銀色、内側銀色のマントを羽織るサビラギ様。


 どうやら肩辺りのパーツで簡単に固定や逆に外すことが出来るらしい。

 しかもリバーシブルみたいだな。


 「それってもしかして鮫革ですか?」


 「ほぅ、よく分かったのぅ。鑑定でもしたか?」


 「しても良いのなら。」


 「装備だけなら良いぞ。」


 暗に人物鑑定はするな、と釘を刺されつつも、淫スキル【淫具鑑定】をしてみると、『三頭大鮫みつがしらおおざめ革装備(一式)』と出た。


 トリプルヘッド・シャークの素材装備かい!


 基本、亜人族を含む人の最大レベルが50なところに、レベル45のトリプルヘッド・シャークの素材で作った装備をもってしても、「性能はそれなり」程度の扱いですか、サビラギ様。


 「トリプルヘッド・シャークの素材装備ですか……。」


 「そういや婿殿も倒してなかったかの?」


 「みんなで協力してやっとでしたよ。」


 サオリさんなんてトリプルヘッド・シャークの【ライトニングボルト】食らって酷い怪我を負ってたしな。


 ん、いや、待てよ?


 ふと思いつき【淫具鑑定】から素材逆引きで淫スキル【淫具制作】のメニューを立ち上げる。


 ある、ある、これもある、ある、おお、あるあるある、ランク5の魔素核は流石にないが、パーツごとに作ればランク4の魔素核でもいけるし、在庫もギリギリある。


 「サビラギ様、お願いが。」


 「ん?なんじゃ?」


 壁に掛かった武器を選びながら振り返りもせずにそう答えるサビラギ様。


 って、格闘かサオリさんみたいに薙刀メインだと思ってたけど、選ぶほど武器、なんでもいけるの?


 ああ、いけるのか【神使化】ランク5以上持ちだものな、どんな武器でもランク5スタートでスキル使えるんだっけ。


 まぁ、もちろん、それでも得手不得手はあるだろうけども。


 いや、そうじゃなくて、


 「その装備、私達も着ても良いでしょうか?」


 そう、これが言いたかったのだ。

 チャチャにゃー。


 うん、やっぱり、ねねさんのご飯はこれくらいの美味しさの方が安心するのにゃー。


 ……うにゃ?それでも昨日の朝ご飯より美味しいような気がするにゃ。


 ねぇねもそう思うにゃよね?


 次回、第八五九話 「三頭大鮫革装備」


 ととさんは、朝ご飯食べ終わったら、おでかけなのにゃ?

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