表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

853/979

第八五二話 「裸エプロン」

 とりあえず二人には無事、チャチャが【神使化】を自由に使えるようになり、今の猫化はその成果であることを説明し、子猫状態のチャチャを起こさないようにミツキに手渡した。


 「かわいー。」

 「可愛いッスね。」


 白い子猫となったチャチャにはサナも気になるようだが、その料理の手は止まることなく、軽やかに動いていた。


 サナのスキル【性技】ランクは3。


 つまり、淫スキル【淫魔】を使った時に、淫スキル【裸エプロン】で代替えされる【調理】スキルも3となり、それに加え、本来の腕前もプラスされることを考えると、今の手際も当然かもしれない。


 前にミツキから聞いた、そのスキルを商売として使う場合、ランク1で一人前、ランク2でプロ、ランク3でベテランと呼ばれることを考えたら、その腕前も分かろうというものだ。


 名残惜しそうだが、料理の邪魔をしてもなんなので、子猫のチャチャを抱きかかえたミツキと一緒に囲炉裏のある居間へと移動する。


 「そういえばサオリさんは?」


 「本家の方に行ってくるって、早くに出て行ったッスよ?

 会わなかったッスか?」


 ありゃ、入れ違いになったか。

 横着をせずに早乙女家に顔を出せば良かった。


 「ミナちゃんに話があるっていってたッスね。」


 猫チャチャの頭を撫でながら、ミツキがそういって座る。


 「ミナちゃんに?」


 サビラギ様からじゃなくて、サオリさんからミナちゃんに話というのも珍しい。


 いや、本来はサオリさんこそ先代の族長なんだから、そういうこともあるんだろうけども。


 ちょっと気になるのと、可能なら迎えに行こうと思いサオリさんに念話を飛ばしてみる。


 『サオリさん、今、どちらですか?』


 『あら、レン君、お疲れ様。

 今、丁度、本家を出るところです。

 

 お母様から聞きました、チャチャちゃんの訓練、上手くいったんですってね。』

 

 おう、本当に入れ違いだったようだ。

 

 『ええ、ちょっとスパルタでしたが、サビラギ様のおかげで、無事終わりました。

  今、帰ると面白いものを見れますよ?』

 

 『うふふ、子猫になったチャチャちゃんでしょ?

  きっと可愛いのでしょうね。』

 

 サビラギ様、そのことも話してあったのか。

 

 『今、早乙女家を出るなら、蔵の方まで来てください。迎えに行きますよ。』

 

 『あら、ありがとうございます。

  じゃあ、お言葉に甘えちゃおうかしら?』

 

 サオリさんと話がまとまったので、ミツキと台所のサナに断わりを入れ、裏口の扉を淫魔法【ラブホテル】でいつもの別荘に繋げ、そして改めて早乙女家の蔵へと繋げ直す。

 

 外に出て迎えに行こうと扉を開けようとする前に、扉が開き、サオリさんが入って来た。

 

 白鬼族の種族衣装だったので、おそらく大事な話だったのだろう。

 一瞬疲れているような表情を見せたが、目の前の私を見ると、いつものように柔らかい笑顔を見せてくれた。

 

 「わざわざ迎えに来てくれてありがとうございます。」

 

 「はは、これくらいならいくらでも。

  ……少し休んでから戻りますか?」

 

 疲れた顔を子ども達には見せたくないだろうと思い、そういってサオリさんの手を取り、別荘の居間の方へと連れ、長い方のソファーに座らせる。

 

 「ちょっと待ってくださいね。」

 

 電気ケトルでお湯を沸かし、別荘に備え付けのインスタント緑茶を二人分入れる。

 

 私も結構喉が渇いているから入れるのは夫婦湯呑のほうでいいか。

 

 本当はサナみたいに急須に茶葉を入れて、ちゃんとしたものを出してあげるべきなのだろうが、数十年単位でそんなことをした記憶がないので、インスタントで我慢して貰おう。

 

 お湯を沸かし、湯呑を用意している間、少し落ち着いたのか、居間の方からサオリさんがポツポツと話しかけてきた。

 

 今回、ミナちゃんに会いにいったのは、『弱い族長としての心得』を教えに行ったのだそうな。

 

 「弱い族長、ですか?」

 

 お盆に乗せた湯呑をサオリさんの前とその横に並べ、自分もサオリさんの横へ座る。

 

 ありがとうございます。と小さく礼をした後、湯呑を傾け、ほっと一息ついた後、サオリさんが語り始めた。

 

 通常、族長は30歳前後で代替わりするものらしい。

 

 サオリさんは27歳で、サビラギ様は32歳で代替わりしたらしく、それに比べれば13歳のミナちゃんの就任は明らかに早い。

 

 とはいえ、前例が無いわけではなく、サビラギ様のお姉さんも12歳で族長に就任したらしく、当時はサビラギ様がその補佐としてついたらしい。

 

 「昔の私と同じで、身体の弱い方でしたし、子どもも出来ず、わたしを我が子のように、また、いつか族長になるだろうと育ててくれた、もう一人の母のような存在でした。」

 

 懐かしそうな顔をしながらそう語るサオリさん。

 悲壮感のようなものはなく、純粋に懐かしんでいる様子だ。


 ミツキッス!


 こんな綺麗な子猫、触るの初めてッスよ。

 毛並みもいいし、いい香り……ってこれはチーちゃんの匂いッスか。


 おわー、肉球、肉球もピンクッスー。


 次回、第八五三話 「隠居」


 さて、アタシの方の実験は上手くいったッスけど、サナちーの方はどうッスかね?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ