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第八十三話 「奴隷再び」


 「これは美味しそうだ。」

 サナが用意してくれた目の前にあるお昼ご飯を一言で例えるなら『親子丼定食』だ。


 午前中に買った食器セットの中にあった丼サイズの椀二つにそれぞれ親子丼と豚汁が入っており、大皿には何種類かのお漬物が並んでいる。

 豚汁は野菜多めでいかにも健康に良さそうだ。

 というか、あの道具でよく容器のサイズぴったりに親子丼作れたな。


 「冷めないうちに食べて、お父さん。」

 「ああ、それじゃあ「いただきます。」」


 「うん、美味しい。」

 「本当ですか?嬉しい。」

 親子丼は卵の半熟具合も絶妙で、味付けもちょうど良い。

 基本的にギルドや夜市の料理は身体を使う探索者向けなのか味付けが濃いめなのだ。


 野菜が元の世界で食べている野菜と似ているようで微妙に風味が違うのに面を食らってしまうが豚汁もいい味だ。

 スライスじゃなくてカレーのように角切りで入っている豚肉の食感も良い。

 これは食が進むな。



▽▽▽▽▽



 お茶を飲みながら食休み中にサナと今日これからの予定を相談している。

 と、いっても迷宮に行くか、手持ちのお金が多いうちに一度サナの奴隷解放にどれくらいかかるかを確認に行くかのどちらかとは思っている。


 ただ、奴隷解放についてサナはあまり乗り気じゃないようだ。

 多額の金がかかるというのもあるが、奴隷と主人との関係を自分と私を結ぶ繋がりの一つだと考えているみたいで、それが無くなってしまうのは寂しく感じるのだそうだ。

 

 奴隷としての「隷属の首輪」も、今では私が褒めてくれるので気に入っているとの事。

 サナを買った貴族の趣味で選んだのだろうが見た目は赤いチョーカーに見えなくもないお洒落なデザインの首輪。

 こういっちゃなんだが、奴隷という身分を気にしないようにというのも、もちろんあるのだが、単純にエロいので、ついつい褒めてしまってたのだ。

 しかもたびたび。

 悪いことしたな。


 とりあえず今は淫魔法【夜遊び情報誌】で街の地図を再確認し、特性【ビジュアライズ】でサナにも見れるように拡大してテーブルの上に表示している。


 地図によると普段夜市が開かれる場所から北側の路地を入っていき、歓楽街を抜け更に北側に行くと大きな屋敷が一軒建っており、ここがこの街唯一の「公認」奴隷商らしい。

 昨晩ロマから聞いた話だと裏では非公認の奴隷商の元締めもやっているそうな。

 サナのように攫われたりした後になった非合法の奴隷を合法奴隷にする奴隷ロンダリング疑惑もあるらしいが、正面から客として入る分にはまっとうな店だとのことだ。


 「結構大きな建物だな。」

 「そうですね。え?あれ?」

 サナが何か気になることがあった様子なので、建物を更に拡大する。


 「この間取り…やっぱり…お父さん、たぶんここ私がいたお店です。」

 サナの話によると人さらいにあった後、最終的に売られた店がこの店で、ここで人族の言葉や風習、礼儀を教え込まれたそうな。

 数少ないながら亜族の子たちもいたので、お互い教えながら助け合いながら数か月をここで過ごしたらしい。


 「嫌なことを思い出させてしまってごめんねサナ。」

 「いいえ……そういえばミツキちゃん、どうしてるかな…。」

 「ミツキちゃん?」


 ミツキというのはサナと一緒に最後まで残っていた兎人族の娘らしい。

 攫われたのも同じ町で、同じ亜人ということもあり、ずっと一緒に助け合ってきた友達だそうな。

 目つきは悪いが持ち前の明るさで何度助けられたかわからないとサナは教えてくれた。


 サナが売られてからまだ5~6日くらいだから、ひょっとしたらまだ店にいるかもしれないな。

 そう思って、淫魔法【夜遊び情報誌】で屋敷内を詳しく調べる。

 ミツキミツキ…これかな?茶兎族のミツキ・エオーレ、16歳の女の子だ。

 肌は小麦色、髪の毛は金髪の内巻きミディアムに白いうさ耳が伸びており、サナがいうとおり、つり目がちなのを除いても目つきが悪い。

 ちなみに売値は金貨25枚だそうな。


 「この娘かい?」

 拡大してサナにも見せる。

 「あ、ミツキちゃん!」

 サナが懐かしそうな、申し訳なさそうな顔でミツキの画像を眺めている。

 ギュッと自分の服の裾を掴んで、何か言おうとしているのか、それともそれを我慢しているのか、口が小さく開いたり閉じたりしていた。


 そりゃあ助けたいよな。


 「サナ。」

 「…はい。」

 「とりあえず今回サナを奴隷から解放するのは止めようと思う。しかし、そうなるとそのために貯めていたお金は宙に浮いてしまうので、迷宮での戦力増強のために奴隷を一人買おうかと思うのだけどサナはそれを許してくれるかい?」


 「お父さん……いいんですか?」

 「お友達なんだろ?いいよ。」

 サナが胸に顔を埋めるように抱き着いて来た。


 「ありがとうございます、お父さん。あたしなんでもします。働いてきっと返しますからミツキちゃんを助けてください。」

 堰を切ったように思いを吐き出すサナの頭をそっと撫でる。


 そうそうに売れるものではないとは思うが、善は急げということで早速奴隷商のところに赴くことにした。

 サナは思うこともあるだろうし留守番をさせておこうかとも思ったのだが、一緒に行きたいというので連れてきている。


 淫魔法【夜遊び情報誌】で街のマップを確認しながら歓楽街を抜け店に入り店員に要件を伝える。

 

 「こちらにミツキという兎人族がいると聞いてきましたが会えますか?」

 「茶兎族のミツキですか?…会うことはできますが…。」

 なぜか店員の歯切れが悪い。


 「譲り受けたいのですが何か問題が?」

 「引き渡しが今日なのでまだ店内にはおりますが、実はもう行き先が決まってしまったんですよ。」


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