表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

836/979

第八三五話 「そして勇者へ」

 これは元々、私が勇者になるタイミングによって、万が一サナとミツキの授法じゅほうの内容の差異が出るのが嫌だと二人が言っていたので、これは予定どおりの発言でもある。

 

 と、いうか、私がそれを言うはずだったのだが、地母神様との話の流れ的に私の勇者化が先になりそうだったので、ミツキが焦ってしまったのだろう。


 「ええ、いいわよ。その方が私とレインの結びつきも強くなるから、勇者として帰依させやすくなるし。」


 神様との話に口を挟むのは失礼かと思ったが、地母神様的にも都合が良かったらしく、ニコッと笑って承諾してくれた。


 代わりと言ってはなんだが、ミツキが冷や汗を拭っていたが。


 

▽▽▽▽▽



 「それでは始めるわよ。」


 早速、ミツキの授法の儀式が始まった。


 サナに続いて2回目ともなると、慣れたもので、前回以上にサクサクと儀式は進み、


 「■■■!」


 地母神様の詠唱、いや、発声?とともに、私の身体から次々と紫色の光の玉が現れ、頭の上で渦を描くように回り始めた。


 相変わらず淫スキル【睦言】でも言語スキルを覚えないってことは、やっぱりこの発声は魔法扱いなのだろう。


 「二人の両手を合わせなさい。」


 地母神様の指示に従い、向かい合ったミツキに両手を差し出すと、そっとミツキがその上に両方の手のひらを乗せてくる。


 お互い見つめ合い、体温を感じながら、そうすることが当然かのように目をつむる。


 くるぞ!



 一瞬、そのまま水平に回転したかのような感覚が走る。


 ミツキのいた場所に私が、そして私がいた場所にミツキが。

 そう感じたかと思えば、それがもう半回転して元の場所に戻るような感覚。


 う、なんどやっても三半規管に悪い。

 酔いそうだ。


 「終わったわよ。」


 「ありがとうございました。」


 気持ち悪さを抑え込みつつ、そう地母神様にお礼をいうと、ミツキもそれに続いた。


 おそらく前回と同じくらい20分くらいの時間がかかっていたのだろう。


 ちょっとチャチャが暇そうにしているくらいだ。


 ミツキは私の元から離れ、サナと何やら話をしている。


 おそらくお互いの授法の数や内容の確認をしているのだろう。

 しばらく話をした後、安堵の溜息を出していた。


 さて、これからが今日のメインイベントだ。



▽▽▽▽▽



 「レイン、こちらへ。」


 地母神様に導かれるまま、部屋の隅に置かれている祭壇の上へと上がる。


 ここに上がるの2か月ぶりだな。


 思い返せば色々なことがあった2か月だった。

 と、軽く走馬灯のように思い出が蘇るが、そんなことをしている場合ではない。


 「それでは、いいわね?」


 地母神様の導くまま、祭壇の上で鏡合わせに向かい合う。


 この淫魔の身体のモデル、いやサキュバスのモデルを共有しているだけあって、自分でいうのもなんだが、地母神様と私はそっくりだ。


 「それでは汝、レイン・キュノミスは、我、地母神、ウィズ・キュノミスの勇者となることを望むか?」


 「望みます。」


 まるで結婚式のような問答の後、地母神様がまた言語として理解できない詠唱というか発声を始める。


 言語というより音のうねり、あるいは波動的なものなのだろうか?


 祭壇の上の魔法陣が紫色に輝き始め、それに合わせて、地母神様の、そして、私の身体も同じ色に輝き始めた。


 「ならばその願い叶えよう。」


 そういって、先ほどの私がミツキにしたように、そっと両手を差し出す地母神様。


 その上に、そっと手を乗せると、地母神様はそのまま手をとり、指を絡め、お互いの指を組み合うように手を握り直すと、そのまま、手を引きながら、そっと身を寄せて来た。


 つられるようにというか、身体の動くまま、鏡に映ったように同じ動きをしてしまい、そのまま、地母神様と額同士がくっつくほど密着した状態となる。


 唇すら触れそうに近い状態だが、その地母神様の唇からまた音のうねりが発せられた。


 「■■■■■■■■!」


 言葉としては相変わらず分からない。


 だが、確かに『汝地母神の勇者也』と、宣言されたように感じられ、膨大な魔力が渦を巻くように私と地母神様を包み込む。


 周りを見るどころか目を開ける余裕すらないが、感覚的に魔法陣を底と天井にした円筒状の魔力の塊の中に、地母神様と二人、いや、一柱と一人で浸かっているのがなんとなく分かる。


 そして、ランクアップの時の急激な身体の変化とは別に、ゆっくりと身体が変化していくのが感じられた。


 5分か、10分か、1時間か、体感時間があやふやになったところで、「帰依完了」との地母神様の声が聞こえ、我に返った。


 そっと地母神様から離れ、手も放し、身体を擦るようにして、異常が無いか確かめる。


 ぱっと見、変わった様子は無いようだが、何故か目の前の地母神様が、目を見開き、驚いた顔をしている。


 そうかと思うと、地母神様は背中に手をやり、慌てながら何かを探しているような仕草をしはじめた。


 何があったんだ?と思いながらも、そういや、この祭壇の傍には大きな鏡があったことを思い出し、そちらを見ると、向かい合った私と地母神様が映っている。


 私が鏡に気付いたことに地母神様も気づいたのか、目線が同じ方向に向かうと、


 「「あ。」」


 と、思わず同じタイミングで声が漏れてしまった。

 ミツキッス。


 思わず地母神様に直接話しかけてしまったッスけど、笑顔で御許しいただけて良かったッス。


 一瞬、天罰とか覚悟したッスよ……。


 サナちーと確認しあったところ、ちゃんと同じだけの能力を授かっているようなので、一安心ッス。


 次回、第八三六話 「淫魔と地母神」


 でもこれ、めちゃくちゃなスキルばっかりッスね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ