第八三三話 「勇者の証」
結局その後、引き続きサナもサオリさんも、そしてサビラギ様も隷属化の儀式に参加するらしく、サビラギ様とは屋根の上で別れた。
念話で詮議の内容の報告がてらミツキに聞いて見ると、台所の方は、今も賑やかに料理中だそうなので、邪魔をするのも悪そうだ。
サナの方には儀式が終わって早乙女家に帰れそうになったら念話をして貰うように頼んだし、それまで軽く時間でも潰すか。
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ちょっとした『実験』や『素材回収』などをしているうちに、サナとミツキから念話が入ったので、大人しく山の中から撤収する。
うん、これも問題なく使えるようだ。
これは中々悪くないぞ?
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いつもの淫魔法【ラブホテル】を使って早乙女家まで来た時には、既にサナやサオリさん、もちろんサビラギ様とミナちゃんも帰って来た後だった。
っていうか、シロツメとカタバミも一緒だ。
まあ、ミナちゃんの経済奴隷になったのだから、早乙女家にいてもおかしくはないのか。
先日の四家の長達が集まった時のように、また居間と客間を繋いで座卓を並べ、いなりずしが入った4つの重箱が綺麗に並んでいる。
俵型のスタンダードなものから、少し揚げの色が薄く三角型のもの、それらの間に挟むように並べられている卵焼き、これもぱっと見で3種類くらいありそうで、ちょっと楽しみだ。
「お疲れ様、たくさん作ったから、みんな遠慮なく食べてくださいね。」
と、アエさんがいい、ミツキとチャチャが、それぞれが座った場所にお茶を配り終わった後、ミナちゃんの号令で、「いただきます。」をし、アエさん方の作った料理に舌鼓をうった。
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「おなかいっぱいにゃね。」
「ああ、美味しかった。上手に出来たねチャチャ、ミツキ。」
「ふっふっふー、もっと褒めてもいいッスよ?」
「はぁ、わたしも食べすぎちゃった。」
「あはは、あたしも。」
少し遅めの昼食を終え、【ラブホテル】でいつもの別荘に帰り、今は居間でゆっくりとくつろいでいるところだ。
シロツメとカタバミの問題も一段落したので、もう少し食休みをしたら、今度はいよいよ私自身の勇者化を目指そうと思う。
今回、地母神様に願うことが確定しているのは2つ。
・私を地母神の勇者として帰依の儀式を行う事。
・ミツキにその眷属としてに授法の儀式を行う事。
「残りはなにか1つ質問をする感じッスかね?」
大きい方のソファの真ん中に座っている私に、しなだれかかるように座っているミツキが、この後の私達の予定を説明している私の言葉に続く。
「質問といっても難しいですよね。ましてや一つだけとなるとなおさら。」
1人掛けのソファに座っているサオリさんも、それに続いた。
「数が足りていれば、もう1回授法の儀式ができたのかな?」
珍しく1人掛けのソファの方に座っているサナが、そういいながら人差し指を顎にあて、小首を傾げてる。
「そうだろけど、数的には、ちょっと今日明日では間に合いそうにないからね、サオリさんの授法の儀式は、もうちょっと先になりそうだし、みんなが揃っているうちに先に済ませてしまおう。」
私の膝枕で寝そうな雰囲気なチャチャの頭を撫でながらそう答えると、サナとサオリさんが頷いた。
「そういえば、帰依の儀式を行えば、私は勇者という職業になって、人物鑑定とかをされると、それが相手に見えるようになるんだよね?
女王陛下の前、か、どうかは別として、アサーキ共和国首都トラージでも、そういう風に本物の勇者かどうか確認されるのかな?」
「たぶん、そうでしょうね。」
「また実力とかも試さりたりもするんじゃないッスか?」
サオリさんとミツキがほぼ同時にそう答える。
「それが何か問題があるんですか?」
不思議そうな顔をしたサナがそれに続いた。
「いや、職業を見られるのも実力を試させるのも構わないんだけども、むしろ大事なのは、アサーキ共和国の、あるいは地母神様の勇者であることをどう証明するか?ってことだと思うんだ。」
なにせ、私をこの世界に召喚したのはネローネ帝国ネブル・アリサリッサ・ネローネ王子でほぼ確定。
つまり、召喚者から考えると、ネローネ帝国の勇者で、かつ、天父神、あるいは宙転神の勇者というのが本来の筋なのだ。
召喚された場所からすると、エグザルの迷宮はナイラ王朝の所属なので、ナイラ王朝の勇者だしな。
これをサビラギ様がどうやって、アサーキ共和国の勇者、あるいは地母神様の勇者だと強弁するつもりなのかは分からない。
淫魔の方の私を勇者として、亜人族の勇者がアサーキ共和国の勇者じゃないわけがない。とかいって、召喚儀式自体はでっち上げるとか、そんな感じだろうか?
でもそれだと日中、困るしな。
「証明……ですか。」
「難しいッスね。」
「うん。」
サオリさんもミツキもサナも意図を察してくれたのか、難しそうな顔をしている。
そんな中、
「そんなの簡単にゃー。」
てっきりもう寝てしまっていると思っていたチャチャから意外な言葉が上がった。
驚いて、膝の上のチャチャを見つめると、笑顔で
「地母神様、本人にしょーめーして貰えばいいのにゃ。」
そんなことを言い出したのだ。
ミツキッス。
地母神様本人、いや本神に証明して貰うって、女王陛下の前でこの間の儀式をやるって事ッスか?
可能なら何よりの証明かもしれないッスけど、あれ、地母神様がこっちに来てくれているのか、それともあたし達が地母神様の所に行ってるのかどっちなんスかね?
次回、第八三四話 「神殿ふたたび」
どっちかというと、パパの宿の魔法みたいに別の空間で待合せしてるような感じな気がするんスけど……。
 




