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第八二七話 「留守番組」

 改めて淫魔法【ラブホテル】を離れ側に繋ぎ直し、戻ってくると、ちょうどミツキとチャチャが台所で水仕事をしていた。


 「うちらはこの後、どうしようか?」


 「そうッスね、イマイチ時間が読めないッスから、掃除とお勉強あたりッスかね?

 ちなみにママさんは川のお風呂洗いに行ってるッスよ。」


 こちらを向きつつも、手は止めずにミツキがそう話す。


 「ああ、じゃあ、家の掃除の方は私がやっておくよ。」


 「了解ッス。お願いするッスー。」



▽▽▽▽▽



 この離れ、家というか店舗を貰ったはいいが、なんといっても維持には手間がかかる。

 【ラブホテル】で繋ぐ別荘や部屋は、いつ入ってもリセットがかかっていて清掃済み、整頓済みなのだが、実際の世界にある離れはそうはいかない。


 電気、水道、ガスなどなど、元の世界に比べて壊れる部分は少ないし、屋根や壁なども、そうそう壊れるものでもないのだが、それでもガラスなんかは元の世界に比べ質が悪いので壊れやすい。

 それらの補修まではいかないものの、日頃の手入れは必要だし、その最たるものが掃除だろう。


 離れの本来の持ち主であるサオリさんは、わりと鷹揚だが、実質的に離れを預かるサナは結構掃除に厳しい。


 はたきをかけて、箒で掃き、雑巾で拭く。

 これを全部屋、毎日やりたがるのだ。


 オカンモードというより主婦モードだな。


 ただ、全員がかりでもそれなりに時間がかかるので、せめてなにか私の能力でチートができないか?と模索したことがある。


 昔、ジョークグッズを掃除機の先端につけて、男性器をどうにかする動画を見たことがあるせいか、淫魔法【淫具召喚】で召喚できるものの中に掃除機があったので、それを召喚して試してみた。


 が、当然、電源がないので失敗。


 充電式の掃除機も召喚してみたが、初期充電量では一部屋分も持たないのだ。


 「要はほこりを吸い取れればいいんだよな。」


 次に考えたのが、手からメニューのアイテム欄へ仕舞う方法だ。


 一度にアイテム欄に仕舞える物品の大きさは、現在の淫魔ランクの自乗m分。


 つまり25mの長さを宅急便よろしく幅、奥行、高さに割り振った大きさまでが1度に収納できる限界だ。


 立方体にすると、ざっくり一辺が3m弱くらいの大きさ。

 部屋なら四畳半の部屋がすっぽり収まるくらいの空間だ。


 この空間の範囲を手で空気に触れたことにして、射程内の空気をまとめて、ほこりごとアイテム欄に収納できないか?と、いうのも試してみたのだが、これも微妙に失敗。


 あくまでも直接触らないと駄目らしく、壁一面ごと、とか、床一面ごと、とかなら可能だが一発で部屋ごと、というのは無理だった。


 まあ、これでも相当便利ではあるのだが、水中で鬼灯提灯手長海老ほおずきらんたんてんがえびが吐いた鬼灯水の煙幕をメニューのアイテム欄にしまい込んだ時は、もっと空間的な収納が出来たはずだ。


 と、いうところで、思い立ったその差異が、種族スキル【男根のメタファー】の使用の有無だ。


 【男根のメタファー】は持っている刺突武器を身体の一部扱いにし、かつ、淫魔ランクに応じてのボーナスを確保するとともに別のスキルも付与できるという種族スキルなのだが、読んで字のごとし、その身体の一部というのは男根扱いなのだ。


 それならば、男の身体で全裸になって試してみれば、と一瞬考えたが、どう考えても家族に見られたら空気が凍るので、いつもどおり【淫具召喚】で槍を召喚し、【男根のメタファー】を使った上で、穂先からアイテム欄への収納を試みてみた。


 前にエグザルで西本社の兎の間を掃除してた時みたいな感じだな。


 結果としては、これが当たりで、淫魔ランクに応じてのボーナスが乗っているせいか、あるいは淫魔ランクが5まで上がったせいかは分からないが、穂先から半径25mの球体の範囲内の物をアイテム欄に収納できるようになった。


 もちろん、良くも悪くも無条件に、というわけではなく、収納できるものには当然制限がある。


 まず、自分の所有物は範囲内であれば一気に収納可能だ。


 逆にいうと、他人の所有物は収納出来ない。

 ただ、所有権を放棄した物、たとえば捨てたゴミ、払ったほこりなどは収納可能だ。


 眷属の所有物は、その気になれば収納できるようだが、離れがサオリさんの所有物であることを前提に、それ以外の物、ほこりだったりゴミだったり汚れだったりを収納することによって綺麗にすることが本来の目標なので、これは試していない。


 あとは、前からそうだったが、生き物も収納不可能だ。


 蜘蛛の巣は収納できるが、蜘蛛自体は無理、といった感じだな。


 もちろん、収納したものは後からアイテム欄で整理出来るので、大事なものを無くすこともないし、なんなら物によっては本当に収納してもいいかどうか?とか、これは収納できないとか、メッセージまで出たりするので、至れり尽くせりだ。


 これ使い方によっては空間感知スキルみたいに使えそうだな。


 と、いう実験の経緯と、みんなへの説明を経て、今では基本的に離れの掃除は私の仕事になっている。


 サナは不満がっていたが、台所だけは一切手を出さないということで妥協して貰った。


 だって迷宮で稼いでない私なんて、「レベル上げ」だけが取り柄のヒモみたいなんだもの。


 家での役割の一つでも欲しいのだ。


 とはいえ、実際のところ、短槍を片手に、各部屋と外回りをぐるりと回れば終わる程度の仕事なのだが。


 まあ、それでもサナに言わせれば、十分、綺麗になっているらしいのだが、それはそれとして、週に1度くらいはちゃんとした掃除をしたいらしい。


 特に拭き掃除を。


 主婦(?)の意地を感じるな。

 ミツキッス。


 パパの掃除機?能力は凄いッスけど、サナちーにいわせると、家にはある程度の水分が必要なのと、磨くことによって長持ちする部分もあるので、最低でも月一、できれば週一くらいで、家の手入れをしたいそうッス。


 次回、第八二八話 「お出かけ組」


 なんでも、今まで離れを使っていなかった時も、アエさんやサナちーとかが、月一で手入れに来ていたらしいッスよ。

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