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第八二六話 「サナの忙しい一日」

 また遠回りをしつつ、離れの居間に戻り、朝食を待つ。

 今回はサナも台所組ではなく待機組だ。


 そうこうするうち、ちょうどサオリさんも居間にやってきたくらいの時間に、台所の扉が開き、大きなまな板に乗った特長のフランスパンのようなものが運び込まれてきた。


 これもバゲットサンドというのだろうか?

 見た目のイメージとしては、デカいホットドックというおもむきだ。


 長いフランスパンが背開きにされており、そこにローストビーフのような肉やハム、葉野菜や刻み玉ねぎ、卵などが色とりどりに挟まれている。


 「じゃーん、にゃ!」

 「昨日の挑戦作の再利用ッスよ!」


 「挑戦作?」


 ミツキの話によると、昨日パンを焼いた時に、ノリでどれだけ長いバケットが焼けるかどうかという話になったらしいが、長いまま上手く焼けすぎて、微妙に持て余していたのだそうな。


 食材バッグの中には入り切らない長さなので、離れの台所のどこかにしまってあったのかな?


 それはそうと、


 「なかなか豪華で美味しそうだね。」


 「にゃははは、じゃあ、切るにゃー。」


 褒められて嬉しそうなチャチャが包丁を手に、そのバゲットサンドへ挑む。


 普通に考えれば、5分割って難しいよな。


 などと思っていると、チャチャはまず、両端のあまり具が入っていないところを、魚の頭を落とすように、トントンと二つ斬り落とし、自分の皿へと乗せる。


 その後は、具沢山のバケットサンドを半分に、そしてさらにもう半分ずつに切って、真ん中側の一つを私に、その隣をサナに、残りの端側の二つをサオリさんとミツキの皿に乗せた。


 「どうぞめしあがれにゃー!」


 まてまてまて、チャチャの悪い癖が出てる。

 いや、おそらく昔、弟妹と一緒の食事の時はこんな感じだったのだろうが、それを今もさせるわけにはいかない。


 本人に犠牲になっているという自覚すらおそらくないのが一番悪い。


 幸い、4つ切りにしたとはいえ、一人当たりのバゲットは、男の私でもかぶりつくにはまだ大きい。


 「チャチャ、まだちょっと大きくて食べづらいから、もう半分くらいの大きさに切ってくれないか?」


 自分の分を、まな板に戻し、そうチャチャにお願いすると、意を察したのかサナもそれに乗って来た。


 「にゃ?わかったにゃ。」


 改めて切り分けているうちに、ミツキもサオリさんも同じように頼み、チャチャの皿の上の端っこも、さりげなくミツキがまな板の上に戻している。


 「これくらいの大きさかにゃ?」


 「ありがとうチャチャ。」

 「あ、あたし、ここら辺の食べてみたいな。」


 改めて切り分けられたバケットの真ん中あたりと、元々チャチャの皿に乗っていたバケットの端っこを自分の皿へと運び、私が同じようにそれに続く。


 ミツキは自分の分を一つ取った後、チャチャの皿に、別のバゲットを乗せ、自分の皿にもう一つを乗せる。


 サオリさんも自分の皿に一つ乗せた後、まな板の上に残る二つを前に、


 「チャチャちゃんは、あと一つ、どっちがいいかしら?」


 と、問いかけると、


 「チャチャは端っこで十分なのにゃぁ。ととさんも、ねねさんも、美味しいところ食べて欲しいにゃぁ。」


 と、困り顔だが、


 「うん、それはちゃんと自分で味見をしてからにしようね。」とのサナのフォローで、迷いながらも一つ選び、残りの一つをサオリさんが皿に乗せた。


 「それじゃ、みんな、「「「「いただきます。」」」」」


 結果論だが、それぞれ好みの味の箇所を選ぶことが出来たというメリットもあり、チャチャとミツキ合作のバケットサンドは好評のうちに平らげられていった。


 私とサナはさり気にソースが多い部分をメインに選んでいるので、バケットの端っこも、うまくそのソースを絡めながら美味しくいただいている。


 「うん、美味しい。料理も上手になったね、チャチャ。」

 「ほんとにゃ?」

 「うん、これなら味見しなくても大丈夫だったかも?」

 私の言葉にすかさずフォローを入れてくれるサナ。


 続けてサオリさんもミツキも褒めたたえる。


 いや、実際、美味しいんだ。

 明らかにミツキが味付けをしただろう場所もあるのだが、切り分けてお好みで取ったのが幸いしたらしく、お世辞ではなく、普通に美味しい。


 「良かったにゃぁ、ほっとしたにゃぁ。」


 微妙に食が進んでいなかったチャチャも安心したのか、積極的に自分の皿の上のバゲットを食べ始めた。



▽▽▽▽▽



 「「「「「ごちそうさまでした。」」」」」


 「サナちー、後の片付けもアタシ達でやっておくッスから、早めに移動したほうがいいッスよ。」


 「うん、お願い、ミツキちゃん、ちーちゃん。」


 「まかせるにゃー!」


 「それじゃ、改めて早乙女家へ繋ぎ直すか。」


 「お父さん、よろしくお願いします。」


 サナと一緒に淫魔法【ラブホテル】で、いつもの別荘へ入り、出入り口を早乙女家の蔵の扉へと繋ぐ。


 「それじゃ、今日は大変そうだけど、頑張ってね。」

 「はい、いってきます、お父さん!」


 笑顔のサナを軽く抱き寄せ、その頭に並ぶ両角に軽くキスをして、扉の外へと送り出した。


 チャチャにゃ!


 みんな美味しいっていってくれて嬉しいにゃぁ。

 あれなら妹達に作ってあげても喜んでくれるかにゃ?


 でも、あんな長いパン、チャチャ焼けにゃいしにゃぁ……。


 次回、第八二七話 「留守番組」


 にゃ?そうにゃ、別に長くなくてもいいのにゃ。

 今日見たいに小さいのをいっぱい作ればいいにゃね?

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