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第八一八話 「勇者誕生」

 サビラギ様の話によると、アサーキ共和国首都トラージへ向かうのは3日後。


 メンバーは、サビラギ様と、私達5人、それからロマとマミ先生とヤコさん、それからもう一人、といっていたので、おそらくカレルラも連れて行くつもりなのだろう。


 ちなみにロマは俺もかよ!とか急なんだよ!とか文句をいっていたが、ケイジョウやイズライトの運搬的な意味で、いてもらえるのは正直助かる。


 サビラギ様が里をつまでに、各々準備などを済ませて置くことになった。


 里でいえば、赤家で匿っているカタバミと、同じく白家で匿っているシロツメの奴隷解除と、里への帰還と詮議。


 ざっくりとしたストーリーとしては、


 「すまん、諫言に踊らされて里を出たが、思い直して帰ってきた。

 その間稼いだ金差し出すから里で役立ててくれ。」


 「お前ら、本当なら奴隷に落とすところだが、その態度と金額に免じて執行猶予をつけてやる。

 その間、他の者に里を出るようなことを唆したりしたら実刑な。」


 みたいなやりとりで、決着をつけることになるらしい。


 そのままカタバミとシロツメはサビラギ様が里にいない間の里の防衛戦力として役立てるのだそうな。


 あと、ケイジョウとイズライトの奴隷化は里では行わないことになった。


 と、いうのも、主人が奴隷に本当のことを話せ、と命令して、真実を語らせるのは確かに有効な手段なのだが、その奴隷が、事前に主人に本当のことを話せと言われたらこういう内容を話せ、と仕込まれている可能性もありえるため、司法の場に出るときは、一度、奴隷から開放して、仕込まれている命令を解除した上で、改めて裁判用、あるいは取り調べ用に奴隷化するという手順になるらしい。


 つまり今、奴隷化しても二度手間なのだ。


 なので単純に縛って連れて行くことになる。


 逆にいうと、奴隷化の儀式をしなくて済むため、前に頼まれていた儀式への私達の協力は必要ないとのことだ。


 奴隷化の解除だけなら、たとえ2人でも五家で十分、手が、というか魔力が足りるらしい。


 その代わりといってはなんだが、カタバミとシロツメは、私達が住んでいる離れからスタートで里に帰ってくるという形にしたいのでと協力をお願いされたし、逆にサビラギ様は、里を正式に離れるが、実際には離れまでしか歩かず、そこからは私の淫魔法【ラブホテル】での移動を頼まれた。


 そのままエグザルの街に繋いで、ロマ達を迎え入れ、トラージの街へと直行する形だな。


 もちろん、それまでには私も種族特性【神殿】を使い、地母神様に拝謁して真の勇者になっておかなければならないし、ロマなんかは有給の申請しとかんとな、とボヤいていた。


 色々と迷ったが、これで明日にでも、ようやく勇者誕生となるのか。

 平和なスローライフよ、さようなら、と、ならなければいいが。


 とりあえず、これからの各々のスケジュールがはっきりとしたところで、この会合は解散となり、一同、それぞれの場所へと帰っていくことに……ならなかった。


 「よし、これで段取りはついた。

 各々、よろしゅう頼む。


 では、一杯やろうか!」


 と、サビラギ様が言い出したからだ。


 その声を待っていたかのように、アエさんが扉をあけ、お盆に酒器を小鉢を持ってくる。


 「アエ姉さん、手伝います!」

 「アタシも手伝うッスよ。」

 「チャチャも手伝うにゃー。」


 それに反応して三人娘が立ち上がるが、なぜかチャチャだけが止められた。


 と、いうか、いつのまにかロマの正面の席に移動して来た、赤家の家守やもり様に、首根っこを捕まれ、膝の上に座らされた。


 「こういうものは家を守る者に任せるもんだ。お前さんは、ここでアタイの相手をしておくれ。」


 「やもりのおばちゃんにゃー。」

 「やもりのおばちゃん?」


 なんだそれと、いわんばかりのロマの言葉を口切りに、赤家の家守様とロマとなぜかチャチャとの会話が始まった。


 ミツキは……アエさんに配膳をまかされたか、白角しろすみ亭で働いていたミツキだ、四家に対してもそう無礼な振る舞いはしないだろう。


 サナはもう完全に戦力として台所行きっぽい。

 アエさんもそういえばいないな、と思っていたが、台所でこのために孤軍奮闘していたのだろう。


 たいへんだな。


 っていうか、サナは分かるが、ミツキも早乙女家の一員として、しかも四家にまで認められている?


 なにか、知らないうちに外堀を埋められている予感を感じながらも、目の前の3人の会話に参加していく。


 客間側の方ではマミ先生とヤコさんが改めてサビラギ様から紹介されているようで、なぜか驚きの声が上がっていた。


 あの二人、地味に尼や巫女として地位が高いから、その話題で盛り上がっているのかな?


 かなり自由に席替えをしながら、会話も弾んでいるみたいだ。


 ミナちゃん以外は。


 ぽつねん、と、宴会は苦手そうなオーラを一人出しているので、見かねて、族長に対して失礼かとは思うが、今は無礼講っぽい雰囲気なので、手招きしてこちらへと呼んでみよう。

 サナです。


 うーん、アエ姉さん、大丈夫かな?

 もうちょっと手伝ってから席につきたかったけど……。


 でも、魔力コンロは買っておいて大正解だったと思う。

 あれがなければ、ちょっとこの人数分を用意するのは大変だろうし。


 次回、第八一九話 「ミナと酒席と」


 「アエ姉さん、手伝います!」


 後半戦は、あたしも腕を振るわなきゃ!

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