第八一六話 「スチールの探索者」
走って行こうとするチャチャとそれを捕まえて手を繋いで行くミツキを見送りながら、とりあえずロマのいる場所を考える。
普段会う時間を考えると、夜のお仕事がメインのようだから自宅か宿か知らないが、まだ住んでいる場所にいる可能性が高いだろう。
ゴールドともなれば、探索者ギルドの職員に知られてないかな?と思い、受付のおねーさんに試しに聞いてみるが、個人情報なので教えられないとのことだった。
コンプライアンス高いな、と、思ったが、ベテラン探索者の宿泊地に空き巣が入るのを防ぐためなのだそうな。
ケイジョウの宿から全財産を没収して来た身としては、よく分かる理由だ。
私がスチールの探索者票を持っていることを前提に、ギルドマスターに聞くのも手だが、サビラギ様案件なので、大事になられても困る。
と、なると、他に宛は……
▽▽▽▽▽
「どうした、こんなところに一人で。
あれか?検診に来たのか?」
おう、あっさり見つかった。
というか、
「ロマさんこそ、なんでここに?」
カレルラの娼館の応接室のソファーに、どっかと座るロマにそう聞いてみる。
「この娼館は、値段的に初めて探索者が使うことが多かったり、逆にリピーターが多かったりするから、シルバー以上の探索者が見張っているとはいえ、トラブルが多いんだよ。
お前もあっただろう、ミツキの時に。」
そういや、そうだった。
ロマの話によると、色恋沙汰の喧嘩や決闘に発展しやすいのだそうな。
それが駆け出し同士なら、シルバーでどうにかなるが、シルバー同士となると、こうしてロマが呼び出されるのだそうな。
仕事時間外なんだけどな。と、うんざりとした顔で髪をかき上げるロマ。
お仕事大変ね。
「で、センセはなんでここに?
検診はこの間終わったばかりだし、珍しくお忍びで遊びに来たのかしらぁ?」
カレルラはそういってキセルから紫煙ををくゆらす。
「サビラギ様のお使いですよ。
マミ先生とヤコさん、それからできればロマさんを里に連れてこい。とのことです。」
「ふ、む……。あたしが入っていないってことは、亜人族内の話、しかも、結構重たい話みたいねぇ。
ロマ、大人しく行かないとたぶん後が怖いわよぉ?」
お、意外とカレルラの話が早い。
詳しく説明しろとか言われるかと覚悟していたのだが、杞憂に終わりそうだ。
というか、これだけの情報である程度中身を読まれてそうなのが、この人の怖さなのだが。
「気軽に言うが、姐さんの里まで何日かかると思ってんだ。
とりあえずギルドマスターに相談しないと、そうそう仕事を開けられんぞ。」
宮仕えの大変なところだなぁ。
だが、
「それは大丈夫です。
たぶん、遅くても明日には帰って来れますよ。」
「なに?」
「ふぅん。」
▽▽▽▽▽
「あらー中はお家に繋がるのねー。」
「空間魔法の一種といってしまうには、ちょっと広すぎるべ。」
「この部屋は普段から使っているのか?」
カレルラを娼館に残し、社に改めて集合した後、淫魔法【ラブホテル】を使っていつもの別荘に繋ぎ、マミ先生、ヤコさん、ロマを招き入れると三者三様の感想が出てきた。
「主に使ってるのはこの部屋ッスね。」
「でも、内緒にしないと、ととさん、おばーちゃんに殺されちゃうのにゃ。」
「「「殺される?」」」
そんな声を揃えなくても。
「色々あるんですよ。じゃあ、もう一回、入った扉から出ましょう。」
「色々ってお前、姐さんがそこまでいうなんて、相当だぞ……って、ん?ここは?」
私の後について来たロマが目を丸くして外の景色を眺めている。
「ロマおじさま、ようこそサオトメ家へ。」
「お疲れ様です。」
そんなロマをサオリさんとサナが出迎えてくれた。
サオリです。
うふふ、この里にロマおじさまが来るのなんて、久しぶりですね。
ミナとサナを身ごもる前だから、わたしが今の二人と同じくらいの時だったかしら?
次回、第八一七話 「プラチナの探索者」
四家の皆さんも既にお集まりいただきましたし、これで今日集まる予定は全員揃いましたね。




