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第八一三話 「そして悪夢に」

 ぐだぐだとした酔っ払いの話の内容を少しずつ頭の中で整理していく。


 まず、大教会は大きくわけて2つ、勢力図的には3つに分かれている。


 長兄にして父なる神の眷属である人族のために用意された地上の物は全て人族の物であり、亜人族はそれを掠め取る害獣である。という「純タカ派」。


 この派閥は幸いにして勢力的には最小勢力だが、ネローネ帝国やナイラ王朝との繋がりもあり、油断は出来ない。


 もう一つの派閥は、地上の物は全て人族の物であり、亜人族もまたその一つである。という「ハト派」。


 このハト派の中に、だから労働力として奴隷化して使役しようという「準タカ派」と、亜人族を教化して信者とし、移民としてや労働力として使ったり、住んでいる土地を信心によって接収しようという「純ハト派」があり、イズライトはこの純ハト派に所属している。いや、いた。か。


 準タカ派と純ハト派は、亜人族を利用するという点で共闘できるため、大教会の派閥としてはハト派が最大勢力を誇り、トップである教皇も純ハト派出身だ。

 

 つまり、大教会の3大勢力としては、純ハト派>準タカ派>純タカ派の順となり、当然、各派閥内での勢力争いは純ハト派が熾烈なのだが、近年、準タカ派とネローネ帝国との結びつきが強くなってきており、その勢力を増して来ている。

 

 その準タカ派の力をどれだけ上手く利用しながら、あるいは純ハト派に派閥として取り込んでいきながら結果を出していくのかが枢機卿としての腕の見せ所らしい。

 

 お前ら聖職者なんだだから、もっとちゃんとお祈りとかに精出せよ。

 

 イズライトが亜人族の住んでいる土地を信心によって接収しようという純ハト派だというのであれば、稲白鬼の里の話はドンピシャだ。

 

 酒と話術とスキルの力を使い、そちらの方に話題をスライドさせていく。

 

 イズライトは純ハト派といっても、かなり準タカ派よりの立場で、そちらの派閥との付き合いも多く、逆に純ハト派の中でも3本の指に入るくらいの有力者だったそうだ。

 

 必然的に、色々なものが手に入りやすい立場で、変わった魔道具や、あくまでも体験として、との建前で、亜人族の奴隷を預かったこともある。というようなことをペラペラと話している。

 

 特に亜人族の奴隷、真っ白な猫人族の少女らしいのだが、これこそ神が人族のために下賜された芸術品と思えるほど白く美しく、文字通り猫可愛がりをしており、お勤めで留守にしがちの自分の代わりに、つがいの奴隷も用意してやろうと思って、注文しているところだ。などと、興奮気味に熱く語り始めた。

 

 「番となると、同じように猫人族の白い男の子ですか?それとも逆に黒い子?」

 

 と、ちょっと引きつつも合いの手を入れると、イズライトは、きょとんとした顔をした後、テーブルをドンと叩き、

 

 「分かってないな君は!我々が日々を暮らすのは修道院だ。清く正しく美しく、信仰をもって毎日を神に捧げる聖なる場所だ。


 俗っぽい男女の番などもってのほか。


 黒も駄目だ、ただ、白いというのは良い。


 今の娘は髪も肌も真っ白で目だけが赤いからな、やはり、ここは神聖な白でそろえ、対比も考えながら、肌は白く、金髪碧眼の猫人族こと番に相応しい。


 流石に簡単に注文通りの者を、すぐには用意は出来ないようだが、アグレス卿のことだ、きっと探し出してくれるに違いない。


 番が揃うまでは、清いまま可愛がり、奉仕をさせるが、二人揃うのが楽しみなことよの。」


 ()()()()を思い出したのか、上機嫌に戻り、グラスの酒を煽るイズライト。


 そのグラスにウイスキーを注ぎながら、個人的に大事なことを質問する。


 「さすが猊下、よいご趣味をなされています。

 やはり、次のは、()()()()()()()()()()()()?」


 「ほう、分かってきたではないか。

 今の娘は短めの髪だからな、ゆくゆくは伸ばして二人揃えても良いが、まずは対比を考え、美しい長髪の金髪が番として相応しかろう。」


 ああ、なるほどわかった。

 こいつ、()()()()()()()()だ。


 ついでにいうとロリコンだな。

 どうりでお色気攻撃が効かないはずだ。



▽▽▽▽▽



 その後、また少しずつ話題を変えながら、今度はどうやって、亜人族の住んでいる土地を信心によって接収するか、という本題を聞いていく。


 既にイズライトは淫スキル【催眠術】ほかでの誘導の結果、自分の武勇伝を話すのが楽しくてしょうがないという状態だ。


 イズライト曰く、まず、協力者を用意する。

 狙いをつけた集落の出身で、その集落に対して不満を持っているものならばなお良い。


 純ハト派の力を使い、丁重に扱い、不安を取り除き、欲しい物を与え、望みを叶え、我が神に帰依させる。


 その協力者とともに、集落に訪れ、その協力者から我が神への称賛を語らせ、それとは逆に我が神に帰依しないと、集落に良くないことが起こる。と、予言する。


 「それを無視すると神罰が当たるのですか?」


 「まさか、こんな些事さじに、我が神のお力を借りることなど恐れ多い。

 なに、良くないことなど、起きなければ起こせばよいのだ。


 それを切っ掛けに、我が神に帰依し、幸せになれるのであれば、多少の苦労はしてやっても良いだろう。」


 ああ、これは完全にクロだ。


 と、なれば、話はここまで、宴もたけなわで楽しそうなところ、この夢の世界から覚めて貰おう。

 サナです。


 うん、久しぶりにしてはうまく焼けたと思う。


 やっぱり魔力コンロの方が火力調整が楽な分、手間がかからなくて楽ですね。


 せっかくだから、このままお昼はパン食にしてしまおうかな?


 次回、第八一四話 「それは悪夢か現実か」


 さすがにお父さん、やっぱり焼きたてには間に合わなかったみたい。

 今度、道具揃えて離れでも焼いてあげたいな。

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