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第八一一話 「元枢機卿」

 さて、今更ながらの話だが、その枢機卿、いや元枢機卿の名前は、イズライトという名前らしい。


 今回の任務は、いかにしてそのイズライトを密かに里に連れてくるか?と、いうものだ。


 まあ、そもそもどこにいるのか?というところから始まるのだが、これについては、枢機卿の地位から落とされてもまだ湖の中心にある島、修道街に住んでいるらしいという情報をケイジョウからサビラギ様経由で聞いている。


 と、なると、あの修道士達が住んでいる区画だな。


 地味に広く人も多い上に、淫魔法【夜遊び情報誌】も役に立たないので、何気に大変そうだ。


 誰かに聞く、というのが一番てっとりばやいが、流石に怪しいだろうしなぁ。

 何か良い方法はないだろうか?



▽▽▽▽▽



 以前、修道院見学に参加した際、「修道服を着てみよう!」みたいな体験コーナーがあり、その部屋に淫魔法【ラブホテル】でショートカットを作っておいたのだが、ちょうどタイミングが良く、今はほとんど人がいない状態だった。


 外の物音を聞くと、ちょうどその体験が終わって、次の行程へと向かうところなのだろう。


 後片付けと次の準備をしようとしている修道士が二人いるだけなので、サクサクと淫魔法【睡眠姦】で眠りについてもらい、予備らしい修道服を1着失礼して着替えさせてもらう。


 着方はそれこそ一度この体験コーナーで経験があるので、まったく困らない。


 着替えて目深にフードを被ったあと、部屋を出て、中の二人にかけた【睡眠姦】を解除する。


 さて、目当てのイズライト元枢機卿はどこらへんかな?



▽▽▽▽▽



 たしか地位が高いほど大教会に近い区画に、地位が低いほど遠い区画に住んでいるという話を前にしていたので、おそらく南側の区画だろうと辺りを付けながら歩いていく。


 幸い、明日がお参りの本番ということもあって、人通りは多く、修道士たちも忙しそうにしているので、怪しまれている様子はなく、居住区画らしいところまでは、簡単にくることが出来た。


 これで表札でも出ていれば、もっと話は簡単なのだが、扉にはそっけのない部屋番号が書いてあるだけで、これだけではさすがに見つけられないし、さすがに一部屋ずつ確かめていくのも面倒な上、リスクが高い。


 幸い、レーダーで部屋の中に人がいるかどうかは確認できるので、一人だけ部屋にいるという状態の場所があったら勝負に出よう。


 とはいえ、先ほどもいったとおりお祭り本番前の昼間ということもあり、皆忙しいのか、全然部屋に人がいない。


 それどころか、人とすれ違うことすらない。


 ちょっと当てが外れたな。

 せっかく新しい淫スキル覚えたのに使う相手がいない。


 と、そんなことを考えながら、居住区の奥へ奥へと歩いていくと、ようやくレーダーに人影が映る部屋があった。


 コンコンと一応ノックをするが、返事がない。


 寝ているのか?

 もう一度ノックをすると、「うるさい!」という男の声ともに、なにかが扉にぶつかって割れる音がする。


 なんか修道士っぽくないリアクションだな。


 まあ、いいや、今のところ他に選択肢もないし、強行突破しよう。


 おもむろにドアを開け、中に入り、閉めなおした後、一足飛びに、先ほど声を上げたであろう、でっぷりと太った男の傍に駆け寄る。


 なにか呪文でも唱えようかとしたのか、自分の胸の前で腕を動かしていたが、軽く内側から払った上、掴み、相手の両目と視線を合わせる。


 淫スキル【催眠術】


 イズライトの居場所を人に聞く、だが、その聞いたことは覚えていて欲しくない。

 と、考えたときに得たスキルだ。


 基本的な効果は思考誘導だが、問答無用でかかるというスキルでもない。


 よくあるような相手がリラックスした状態が一番かかりやすいが、喜怒哀楽、なにか強い感情に揺らぐ瞬間とかでもかかりやすい。


 逆にいうと、激昂しているときとか、号泣しているときとか、感情が強く出続けている状態である意味安定していると、かけるのは難しい。


 とはいえ、発した言葉に【鎮静】あるいは【興奮】の効果を与え、【交渉】または【性技】に対して淫魔ランクに応じたボーナスを得る。あるいは対象に指定した幻聴を聞かせる淫魔法【ASMR】や、強制的に眠らせる【睡眠姦】と、コンボが効くので、この距離、この状態なら、まず外さないだろう。


 淫スキル【催眠術】を使い、ぶどう酒臭い息を吐いている50代くらいのその太った男に、話しかける。


 「お酒のおかわりをお持ちしましたが、なにかお気に触りましたか?」


 「あ、ああ、なんでもない、そうか、それならそれをよこせ。」


 酔って既に焦点が怪しい目を更に歪まして男はそういって手を伸ばすので、アイテム欄から適当な酒を出して渡してやる。


 「おお、これはなかなか良い酒だな。」


 ラッパ飲みで口の端から酒を垂らしながらも、機嫌良さげに酒を煽る男。


 「ああ、そういえば、私からもお願いがあったのでした。」

 「なんだ?いってみろ。」


 酒に気を良くしたのか、口元を雑にに拭いながらも、そう返してくる。

 よし、良い傾向だ。


 「イズライト元枢機卿を探しているのですが、どちらにいるかご存知ないですか?」


 「イズライト元枢機卿?

 何を言っている。


 ここ。

 ここにおるではないか。


 わたしがイズライトだ。」

 チャチャにゃ。


 にゃ?ととさんおでかけにゃ?


 お昼までは難しいけど、晩御飯までには戻ってくるのにゃ?


 うにゃぁ、それじゃぁ焼きたてのパンには間に合いそうにないのにゃぁ。


 次回、第八一二話 「イズライト元枢機卿」


 うにゃ?焼き方覚えて、何度でも焼けばいいのにゃ?

 さすがねぇねは頭いいのにゃ!

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