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第七九五話 「2人の男」

 「ぐっ!」


 痛いところを突かれたといわんばかりにケイジョウの表情が歪む。


 「いや、違う、誤解だ、あれは……」

 などと、クドクドと言い訳を始めるが、そんな事私に言われてもなー。


 後ろで顔が見えないように控えているサオリさんの怒りの気配の方がよっぽど気になる。


 「あ、駄目ッス、ご主人様。これ、時間稼ぎッスよ。」


 ケイジョウの癖かと思って無視していた、つま先でカツカツと床を叩く音が何かの合図になっているのをミツキが気づいた。


 マップを見ると、仲間らしき2人が、こちらに向かって移動してきているのが分かる。


 こりゃ、先に確保だな。


 淫魔法【緊縛の心得】で、足首、膝、後ろ手に両手、肘ごと胴体、目を頭ごとラバーマスクで囲い込み、辛うじて口だけは交渉のために開けてある。


 扉がある部屋までは少し距離があるが、歩かせるよりは抱えて運んだ方が早いか。


 移動式の三角木馬を淫魔法【淫具召喚】で出して運ぶ手もないわけではないが、いかにも教育に悪い。


 淫魔法【睡眠姦】でサクッと寝かせて連れて行くのがベストか。


 などと考えているうちに、ケイジョウの仲間らしき二人がゆるいカーブを曲がって表れた。


 「え?」


 その姿を見たサオリさんから小さな声が上がる。


 それはその巨漢の二人には大きな角が2本生えていたから。

 いや、違うな、この二人も白鬼族で、しかもサオリさんなら知っている人物だったからだろう。


 『二人の赤帯と一人の黒帯がケイジョウに引き続き新教に転び、里を後にすることになったのだそうな。』


 以前聞いた白家のおみなの言葉をふと思い出す。


 そして赤帯とは、白鬼族でいうところの第四階梯、つまりランク4の者の事を指すはずだ。


 つまり、最悪、碧拳サナブリ様クラス。


 咄嗟に淫スキル【性病検査】で相手のレベルを確認する。


 片方の名はカタバミ=シャク。


 名前的に赤家の出で、レベル45の【戦士】だ。


 白鬼族の男にしては、太っているというより筋肉質の身体付きで、両手で持つものと見間違えるような長く分厚いロングソードに半身が隠れるほどの大きな盾を構えている。


 もう一人の名はシロツメ=ハク


 こちらはケイジョウと同じく白家の出だろう。

 レベルは同じく45の【僧兵】だ。


 初対面のころのサオリさんを思わせるいかにも僧兵といった風貌で、持っているのは薙刀というより、大長巻おおながまきと呼ばれる刀身が長く、より攻撃性の高いものだ。

 こちらも白鬼族にしては、相当細い体形といえるだろう。


 今、うちのメンバーは全員レベル44になったとはいえ、正直、ちょっとまともには戦いたくない。


 レベル差はともかく、純粋な戦闘経験値が違いそうだしな。


 「なんだその塊は、ケイジョウか。」

 「お主ら人さらいのたぐいか?こんな所まで来て?」


 怒っているというより呆れたような口ぶりでこちらに話しかけてくるが、その佇まいには隙が見えない。


 とはいえ、白鬼族の出身だというのであれば、話は早い。

 2通目の書状の出番だ。


 「私はレイン=キュノミス。

 サビラギ=サオトメ様の名代で参った。

 詳しくはこれに。」


 淫スキル【マゾヒスト】の危険感知を最大限に発揮させながら、二人に書状の予備を手渡す。


 現族長のミナちゃんの名前ではなくサビラギ様の名前を使ったのは、ケイジョウ自体がミナちゃんの名前にピンときてなかった様子だからだ。


 「サビラギ様の?」

 「ふむ、拝見しよう。」


 装備の重そうなカタバミの代わりにシロツメが書状を開き、それをカタバミが覗き込む。


 二人の表情はさきほどのケイジョウのものとは、まるで逆。


 読み進めるうちに怪訝そうに眉に皺がより、目は細くなり、おそらく怒りでであろう、白い肌がみるみると赤くなっていく。


 「ケイジョウを連れていく理由を分かっていただけましたか?」


 「理解した。」

 「相分かった。だが、連れていく前に、その男の…


 「『命令』だ!こいつらを殺せ!一人も生かして帰すな!」


 シロツメの言葉が終わるまえに、絶叫ともいえるケイジョウの声が迷宮内に響く。

 ミツキッス。


 いや、なんか不自然だと思ったんスよね、あの足。


 音が響き過ぎるんスよ。


 やっぱりあれで仲間に合図を送っていたんスね。


 次回、第七九六話 「カタバミとシロツメ」


 来たのは話の通じそうなおじさんだったッスけど、これはちょっとミスったかもしんないッスね。

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