第七八七話 「大聖神国修道院」
さて、その修道院見学だが、1グループ8人と思ったより少ない人数での案内だ。
この人数だとガイドの目を盗んで勝手にあちこち調べるというわけにはいかないだろう。
ま、そこまでしなくても、究極のところ、適当なタイミングで「トイレ貸してください。」とでもいって、どこかのドアを開けることが出来れば、淫魔法【ラブホテル】を使って、後から調べにくることはどうとでもなる。
実際、夜に淫魔の方の身体で忍び込んだ方が能力的には安定するしな。
ちなみに現在、ケイジョウは方向と距離的に見て、今いる島が浮かんでいる湖の北北東側にいるようだ。
流石に泳いでいるとか船に乗っているとかの可能性よりは、探索者ギルドから迷宮に入って、潜っている先がその位置だと考えた方が手堅いだろう。
今のところ距離と方角は出ても高さとか深さまでは出ないしな。
いや、ひょっとしたら表示されている距離は直線距離で、それらも加味されている可能性もあるか。
前の時はあっさり対象が見つかったからそこまで考えていなかったな。
「はーい、では、次の区画にいきますよー。」
そんなことを考えながら、そばかすの目立つ金髪でくせ毛の修道士についていく。
へえ、豚なんかも飼ってるんだ。あ、ロバもいる。
▽▽▽▽▽
修道士の清く正しく美しい上に規則的で信仰心に満ち足りた生活を見せつけられると、酒池肉林気味な己の生活が恥ずかしく……は、ならないな。
根本的な価値観が違うせいだろう。
この世界に来る前ならともかく、今では家族がいない生活なんて考えられなくなっている自分にちょっと嬉しく思ったりなんかもした。
あと、一つ、特筆することがあったのだが、それはこの修道院にある礼拝堂の事だ。
大教会の見た目に比べれば、もちろんかなり質素なもので、ここで礼拝体験をさせられたのだが、ここでも橋の時と同じく魔力を吸い取られているのだ。
ここの場合は祈る時間に応じて吸い上げられている、いや、捧げられているといった方が修道院では正しいのだろう。
また、その逆に、祈る時間に応じて気力(私のパラメーターの場合は精力だが)の方は上がっていく。
端的に言えば魔力を提供すればすればするほどテンションが上がっていく仕組みになっているのだ。
パラメーターとしては表示されていないので確証は持てないが、おそらく地母神様の言っていた【信仰心】といったものも、魔力同様捧げられ、それが何処かに、あるいは誰かに集められているような気がする。
おそらくこれも大教会の方に本命の仕組みがあるのだろう。
そう考えると、修道士を募集している意味が分かる。
同じ信仰心を持った仲間を増やしたい。とか労働力を増やしたい。とか、まっとうな理由もあるだろうが、『魔力や信仰心の充電装置として必要』なのかもしれない。と、ちょっと不謹慎なことを考えてしまった。
ちなみにガイドをしてくれている、そばかすの修道士にはまったくこちらへの害意は無い。
それは淫スキル【マゾヒスト】の危険感知で確認済みだ。
騙すつもりでもなんでもなく、本心からこれが清く正しいことと信じて、それを勧めている。
ただ、この場所がそういう仕組になっている。というだけの話だ。
このシステム、どれくらいの地位の人から知っている、あるいは、構築した話なんだろうな?
ガイドの修道士の話によると、階位の高い聖職者ほど大教会に近い区画に住むことができ、教皇にいたっては、大教会の中に居住空間があるのだそうな。
なので、実質、この修道院で一番大教会の近くに住んでいるのは、数名の枢機卿なのだとのことだ。
あれ?これ、ケイジョウ見つけるより枢機卿見つける方が楽だったりしない?
チャチャにゃー。
しゅーどーいん、始めてだけど、ご飯も寝るところもちゃんとあって凄いにゃあ。
でもチャチャ神様にお祈りするより、みんなで「いただきます」と「ごちそうさま」する方が好きにゃ。
次回、第七八八話 「大聖神国大教会拝廊」
神様にお祈りしても、お腹は膨れないしにゃぁ……。




