第七八五話 「大聖神国街観光」
前にチャチャと来た時のように通りがかったレモネード売りからレモネードを人数分買って、いや、喜捨を渡して施しを受けているうちに、女性陣はホットサンドの屋台から、思い思いの品物を手にしていた。
ちなみに、私の分は、私の味の好みを理解しているサナと、好みが近いミツキにお任せしている。
サオリさんは手堅くホットタマゴサンドを選んだようだが、サナはベーコンとほうれん草のホットサンドにしたようだ。
ミツキはその中間というか卵とベーコンのホットサンドを、チャチャはベーコンとチーズのホットサンドを選んでいる。
私用のは、なんだこれ?
皆にレモネードを配って、いただきますをした後、一口齧ってみると、粒マスタード入りのコンビーフみたいな味わいのホットサンドだ。
缶のコンビーフという技術はないだろうが、ああいうタイプの肉はこの世界にもあるようで、中々に美味い。
近くにあったテラス上の休憩所で座って、風景を眺めながらの朝食なのだが、相変わらず見渡す限りエーゲ海の街並みを思わせる白壁の建物が広がっており、街の中心部の大きな湖と、その中心の島に建っている城と間違うような、大小3つの教会が印象的だ。
カルデラ状の街の中で、今いる探索者ギルドの近くは、かなり内側に近く、湖からもほど近い。
「ととさん、ごはん食べ終わったら、ばちゃばちゃしてきてもいい?」
「ばちゃばちゃ?」
チャチャの話をよく聞くと、湖に住む魚に餌をやりたいという事だった。
そういえばあったな、そんな事。
「いいよ、みんな食べ終わったら、今度は湖回りを散歩しよう。
▽▽▽▽▽
チャチャの希望どおり湖のほとりで鯉のような魚に餌やりをしたり、不自然に直立している橋を見たりしながら、散歩をしていたのだが、以前来た時と比べ、ちょっと違和感がある。
湖の中心にある島、修道街だったかな?へは東西南北から4本の跳ね橋が用意され、先ほど見た探索者ギルドから近い北側の橋のように、東西の橋も跳ね上がっているのだが、角度的にちゃんと見えてはいないものの、今は南側の橋は跳ね上がっておらず、ちゃんとかかっているように見えるのだ。
橋がちゃんとかかっていて驚くというのも変な話だが、あれだけ、あからさまに隔離されている島に行き来が出来るようになっているというのは、なにか、特別なことがあったと思うのが普通だろう。
また、それとは別に、あそこはまだマップを得ていないエリアの上、淫魔法【ラブホテル】でショートカットも出来ない場所でもあるので、可能なら入っておきたい場所でもある。
ケイジョウがそこに逃げ込まないとも限らないしな。
と、いうわけで、観光馬車を捕まえて、まずは町の南側へと向かうことにした。
▽▽▽▽▽
さすが観光馬車、街並みを珍しそうにキョロキョロと見ている私たちにサービスなのだろう、気さくに声をかけてきた。
曰く「今日は巡礼ですか?それとも観光?」
「あはは、熱心な信者というわけではないので、半々といったところですね。」
と、あいまいに返事を返すと、「それは良い時期に来られましたね。」と、ちょうど気になっていた南側の橋の話をしてくれた。
あの橋は年に2回、8月8日と2月2日を中心に前後4日間だけ、湖の中心にある島に繋がり、その期間は修道街の大教会へお参りが出来るのだそうな。
そのため、8月4日である今日から9日間は、他の街からの巡礼の信者も集まり、街も賑やかになるらしい。
今はまだ、速い時間なので、そうでもないが、もう少しすると観光馬車も増便がかかり、島へと目指す人も、もっともっと増えるので、お参りをするのであれば今のうちに行かれると良いですよ?とアドバイスまでされてしまった。
そこまで言われてしまうと、営業トークだと分かっていても、効率的に考えれば行かないという選択肢はない。
皆と話し合って、まずは大教会見学をしようという話になった。
わざわざ混む時間に並ぶことはないしな。
いきなり敵(?)の本陣に乗り込む形になってしまうが、まあ、これもまた経験だろう。
甘い考えかもしれないが、扉さえあれば淫魔法【ラブホテル】で、どこからでも逃げられる身でもあることだし、自分だけじゃなく皆のレベルも十分に上がってる。
いきなり神様登場、とかでもないかぎり大丈夫だろう。
大丈夫だよね?
いきなり宙転神登場!なんてオチはないよな?
サオリです。
全体的に綺麗な街、というか、治安の良さそうな街ですね。
今まで訪れた中でも一番かもしれません。
それにしてもさすが大聖神国街、探索者ギルドではともかく、外ではほとんど人族しか見ませんね。
次回、第七八六話 「大聖神国大教会」
目深にフードを被って街の掃除をしている人たちは、なんとなく亜人族のような気がしますが、どうなのでしょうか?




