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第七八一話 「とととちゃちゃ」

 チャチャと遊ぶ番といっても、もちろんサオリさんとお風呂場で遊んでいたような内容をするわけではない。


 その辺りは、おおらかな鬼組に対しミツキも「せめてチーちゃんが発情期を迎えるまでは!」と防波堤になってくれているので、性人組、いや成人組の共通認識にはなっている。


 とはいえ、家族とのふれあいは平等ではなくても公平ではありたい。


 ほかの三人とは二人きりの時間を過ごしたというのに、チャチャとだけは無しというのは、最近ようやく素直に懐いてきてくれているチャチャの情操教育的にも良くない。


 そうはいっても、チャチャが喜びそうなことで、逆にほかの三人が不公平だ、とか、ズルいと思わないようなこととなると、さて、どうしたものか……。



▽▽▽▽▽



 「ととさん、はいこれ。」


 チャチャが今まで拾い集めたカプセルや魔素石を差し出してくる。


 チャチャ自体は昔からそういう生活をしていたせいか気にならないどころか、フリスビーを投げた後の犬のように楽しそうに拾い集めてくるのだが、正直なところ、稼ぎを巻き上げているようで心苦しい。


 心苦しいのだが、実は私達のように長距離を頻繁に移動する者にとっては、運搬者ポーター役の私が別空間に保管するのは必須だったりするらしいのだ。


 と、いうのも、比較的安定した結晶である魔素石はともかく、カプセルは不安定というか、それが取れた迷宮の影響を強く受けるらしく、通常の保管方法では迷宮から離れ過ぎると消えてしまうそうなのだ。


 感覚としては、迷宮と存在が繋がったままになっていて、迷宮から離れると高台に上げた水のように存在が迷宮方向に流れてしまい、希薄となっていくという感じらしい。


 存在が、って、本当に感覚的な話だな。


 逆にいうと、運搬者や私のように、なんらかの亜空間にカプセルを保管すると、この存在が繋がっている部分が捩じれたような状態になるのか、なぜか存在が希薄することなく運搬出来るのだが、今度は逆に、存在が確定し過ぎて、迷宮との距離に応じて、カプセルの質量ではなく、その中身の質量を運ぶ能力が必要なのだそうな。


 運搬者がカプセルを運んで遠方で取り出し、消える前にカプセルを開け、中身を取り出す。という裏技はあるらしいが、そんなことをするくらいなら、最初から中身を運んでも変わらないことから、運搬者も、そして通常の運送者も、長距離のカプセル運搬はしないらしい。


 このカプセルの状態で長距離運搬出来たら、鮮度を保ったまま大量運搬とかできて、ある種の産業革命とか起きそうだと思ってはいたが、そう話は旨くないようだ。


 じゃあ、どれくらいの距離までなら安全に運べるのか?と、いう話になると、十二振興街においては隣街ならぬ隣町までなら大丈夫らしい。


 というか、街と街の双方からカプセルを含んだ物流が保てるから間の町が栄えている、という方が分かりやすいだろう。


 ウシトラ温泉街なんて、その際たるものだ。

 たぶん、あそこ、稲白鬼の里からも品物流れてるだろうしな。


 カプセルのこの話は、サオリさんにも以前聞いていたのだが、前にトラージの迷宮の係員さんにも詳しく説明を受けてたりする。


 なんでも、カプセルを故郷のお土産にしようとして失敗するという話は、出稼ぎの探索者のあるあるなのだそうな。


 さて、なんで今さらこんな話をしているかというと、結局、チャチャにとっては、さきほどのお宝拾いと身体を動かすことが一番楽しんで貰えるのではないか?と、思ったからだ。


 先程まで鬼族語の勉強を頑張っていたらしいし、本人も、そろそろ身体を動かしたいところだったのか、嬉々としてモグラ叩きならぬデミオーク叩きをしている。


 現在二人でいるのはエグザルの新迷宮の三階。


 今となっては懐かしいデミオークの団体さんがいた辺りのエリアだ。


 なんで、いまさらデミオークを、と、いう話になると、まあ、ぶっちゃけスキル【絶倫】のランク上げが目当てだったりする。


 今日のペースが毎日、ということは流石にないだろうが、このままでは身が持たない。

 スキルを上げておいて困るものではないが、自前のスキルポイントを振り分けるほど優先度は高くない。


 と、いうことで、淫魔ランクも5に上がったこともあるし、種族特性【ドレイン】でスキルをギュイギュイと吸い上げて【絶倫】スキルを上げつつ、硬直したデミオークをチャチャが叩き、魔素石は加工用の素材に、豚皮はミツキのお薬辞典を入れるカバンの材料に、豚肉は今晩のおかずに、と、考えたのだ。


 ちなみに事前にチャチャには、とんかつの旨さを、念入りに説明して、テンションとモチベーションを上げていたところに、サナが今晩はカツカレーはどうでしょう?と提案したものだから、今日のチャチャのハンマーは一味違うぞ?という勢いで、デミオークが迷宮の光へと返って行っている。


 というか、あとこの階層には残り3匹くらいしかデミオークは残っていない。


 流石に乱獲しすぎたな。


 豚肉は今度、女将さんのところか、アエさんや里にでもお裾分けしよう。

 今となっては角赤亭に分けるほどにはグレードが高い肉でもないしな。

 チャチャにゃ!


 今晩のご飯は、か・つ・か・れー!なのにゃ!


 しかも、おかわりし放題なのにゃあ!

 かつも、とんかつもにゃよ?


 次回、第七八二話 「擬人化」


 チャチャ、がんばるにゃよ!


 ……え?ととさん、もう終わりなのにゃ?


 もうサツキちゃんのところに分けて上げられるくらいあるのにゃ?


 それはいいことにゃ!

 きっと喜んでくれるにゃ!

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