第七七八話 「朝帰り」
「で、この画面?とやらにケイジョウが出たはいいが、どうすればいいんじゃ?」
「ああ、それはですね、じゃ、一回離れの方に戻りましょう。」
「なんでじゃ?」と不思議そうな顔をするラギちゃんをなぜかそのままおんぶして、淫魔法【ラブホテル】の別荘から、離れの裏口へと出て、台所を通り居間へと場所を移す。
どうやらは他の皆は2階の寝室で寝ているらしく、隣の和室に気配は無い。
囲炉裏の上に大きく特性【ビジュアライズ】で広げた地図を出し、その横にA3程度の大きさにしたケイジョウのデータを出す。
「これは魔法の地図か?珍しいのぉ。」
子どものように囲炉裏テーブルに手をついて身を乗り出しながら、それを眺めるラギちゃん。
「現在地は……ここですね。」
その地図に現在地である稲白鬼の里の位置をマークピンのように表示させる。
厳密にいうと表示させているのは、現在自分がいる位置だ。
「で、ケイジョウの居る位置は、ここから……」
表示されている方向と距離をみながら、地図と照らし合わせていき、同じようにマークピンを表示させる。
「ふむ、やはり、大聖神国街にいるようじゃな。」
ラギちゃんの目が、スーッと細くなる。
「とりあえず生きてはいるようですね。」
軽く殺気のようなものを感じながら、ラギちゃんにそう返事をする。
ケイジョウ自体のレベルは36と年齢のわりにはかなり高めなので、おそらく探索者なのだろう。
流石に鬼族じゃ新教の役職についているとは思えない。
「ふむ……、婿殿に一つ頼みがあるのじゃが……」
「なんですか?」
嫌な予感しかしないが、それこそ今更だ。
「ちょっと大聖神国街行って、こいつ攫ってきてもらえんか?」
▽▽▽▽▽
「それ捕まりませんか?」
「そこは上手くやってじゃな。
というのは、冗談じゃが、ま、大義名分の一つは付ける。
白鬼族の長としての召集令状をワシと連名でミナに書かせる。
それがあれば、多少揉めはしても、大丈夫じゃろう。
とはいえ、婿殿のこの能力を仕えば、普通に攫う方が楽じゃろ?」
ラギちゃんのいっているのは、淫魔法【ラブホテル】の事だろう。
確かに、どこかの適当な扉から連れ込んで、ラギちゃんのいる場所に連れ出せば良いのだから、人攫いには最適な能力ではあるかもしれない。
ましてや相手はレベル36とはいえ格下の相手だ。
不本意ながらレベル52となった私にとっては難しい仕事ではない。
淫魔法【睡眠姦】で眠らせて連れてくるだけで十分だろう。
「それでも一人でとなると、何かあった時に困りそうですね。」
「ふむ……。」
特に多人数戦に弱いというか、有効な手段をほとんど持っていない私では、完全に取り囲まれると中々難しい。
いや、今となっては、圧倒的なレベル差でなんとかできてしまうような気もしないでもないのだが。
「婿殿は不思議な能力を覚えていると聞いておるが、こういうのは持っていないのかの?」
▽▽▽▽▽
>種族特性【擬人化】を得た
ラギちゃんの問いかけは、人間に化ける能力はないのか?と、いうものだった。
こんな子どもに化けれる能力があるのなら、角や耳、尻尾を隠すことなんぞ、簡単なことではないか?
と、いわれると、そうかな?そうかも?と思ってしまう。
そしてそう思ってしまった瞬間、いつものように能力を得てしまったというわけだ。
厳密にいうと得たのは、一定時間、動物を亜人族に、亜人族を人族に化けさせる能力だ。
ちなみに前者の場合、一定の知能と命令を行うことが出来る。
一応、地母神様系列の亜人族にしか出来ない、仕えないという縛りはあるようだが、使いようによっては、かなり有効な能力かもしれない。
ちなみに能力の名前から、船とか刀とか無機物まで亜人族化させられるような能力だったらどうしようかと思ったが杞憂だったな。
チャチャにゃー。
って、まだ暗いにゃね。
にゃ?にゃ?下で話し声がするにゃ。
ととさんが帰ってきたのかにゃ?
次回、第七七九話 「罰とコミュニケーション」
でも、かかさんに出迎えなくても大丈夫っていわれてたし、このまま二度寝しちゃっていいのかにゃ?




