第七七七話 「ワシとケイジョウ」
それにしても『レベル上げ』のランク差ボーナスが最初7,000。
レベル50以上に上がった後でも3,000あったということは、過去の経験から考えても、私より今で2ランク、最初で3ランク、ラギちゃん、いや、サビラギ様の方がランクが高いということだろう。
と、いうことは、最低でも今のサビラギ様のレベルは70はあるということだ。
さすが魔王と勇者を倒したという話は伊達ではない。
レベル50まで上がれば、勇者だっていけるみたいな話をしていたが、魔族や魔王もそれくらいのレベルなんだろうか?
いや、流石にさらに1ランクくらい上そうだけども、それを考えたって、その更に1ランク上なのか、この人、いやこの鬼。
どうやってそんな高いレベルまで上がることが出来たのだろう?という疑問はあるが、3国がプラチナの探索者に奉じて敵対しないようにしているのも分かる気がする。
「おお、こいつじゃ、こいつ。
こいつがケイジョウじゃよ。」
風呂から上がり、そんな事を考えながら、ドライヤーでラギちゃんの髪を乾かしている間、特性【ビジュアライズ】で表示させているラギちゃん、いや、サビラギ様の経験相手の中から、お目当ての相手を探して貰っていたのだが、思ったより簡単に見つかったようだ。
というか、本人は卒業アルバムでも眺めるように、懐かしいのう、などといいながらの確認作業だったので、時間自体は結構かかっている。
身体を拭かされて、髪を乾かし、櫛を通して、もとの髪型…は、ちょっと自身がなかったので、淫魔法【トリコフェリア】で髪型を調整させて貰っていた。
もう、お姫様扱いだな。
いや『金剛姫』だからお姫様扱いでもいいんだが。
そんなラギちゃんをお姫様抱っこでかかえ、居間まで連れていき、そのケイジョウについてのデータを見せて貰った。
意外、というか、細面で中々の色男だ。
髪が長めというのもあるが、角は短く、ほとんど目立たない。
歳はサオリさんと同じ27歳。
身長は白鬼族の男らしく180と高いが、体重は70半ばといったところだ。
つまり、
「ケイジョウはな、昔から、やせっぽっちで里では全然モテなくてな。
それだけならまだ良いが、少しこじらせたところもあって、本人の好みも里の女達と合わなかったようなんじゃよ。
まあ、たまにおるんじゃがな、そういうタイプは。
早乙女家は、その成り立ちから他の種族と交わる事が多い関係で、白鬼族としては美しくはないが、細身の体型の者が多い。
まあ、それでも、普段の行いがあまり良くなかったのかの。
最初の発情期でも相手がおらず、ワシが筆おろしをしてやったのよ。
その後は、思うところがあったらしく、発情期が来ては早乙女家の分家に世話になっていたようじゃ。」
ラギちゃんがそう懐かしそうにというか、まるで先生が生徒の事を語るような口調で、ケイジョウについて説明してくれた。
端的にいってしまえば、ケイジョウ自体は、人族の中でならモテに対して需要と供給が合いそうなタイプのようだ。
そりゃ、同行していたという新教の枢機卿ともなれば、説法にも強いであろうから、騙すというか説得するのも難しくはなかっただろう。
ラギちゃんの話によると、結局のところ、二十歳を迎える前に外の世界で探索者をやると里から飛び出し、帰ってきたのが例の事件の頃だというので、逆算すると24歳頃の話か。
「外の世界で探索者になる。ってのは良くある話なんですか?」
「それなりにある。といったところじゃな。
腕に自慢がある者、ケイジョウのように里の者と合わなくなった者、色々な者が出ていき、それでも7割ほどは5年もたたずに戻ってくることが多いな。
実を言えば、ワシもその口じゃよ。
15でネネの街の探索者になって、二十歳の頃にサオリを生みに一度里に帰ってきたんじゃ。」
サオリさんを身ごもっていた、ということは、既にその頃にはアサーキ共和国の勇者パーティーの一員だったんだろうな。
「ロマさん達と会うのはもっと後なんですか?」
「アエを生んで、勇者タダシを送った後から、ナイラ王朝の勇者タクミのパーティーに呼ばれる前じゃから、25くらいの頃じゃな。
そう考えると、なかなか付き合いも長いの。」
そういってまたカカカと笑うラギちゃん。
その4年後、勇者タクミの子であり、サオリさんの弟でもあるサノボリさんを生んだそうだ。
その後、32歳でネローネ帝国の勇者ケンジと出会う。
サオリさんの初めての相手であり、あまりの扱いの酷さにサビラギ様がボッコボコにした相手だが、その事件以来、里の族長に就任し、外の世界にはなるべく出ないようにしていたとのことだった。
ネローネ帝国となんらかの取引があったのかもしれないなそれ。
サナです。
お父さん、お婆ちゃんと一緒らしいけど、なにか難しい話事かな?
お婆ちゃんはお父さんの事、気に入ってるみたいだから、変なことにはならないと思うけど……。
次回、第七七八話 「朝帰り」
あ、そういえば、娼館のお姉さん方、手鞠飴喜んでくれて良かった!




