第七七三話 「ワシとパーティー」
「姫様めんこいべー。」
「かわいーわねー。」
「触るな触るな、揉むなというに!」
ヤコさんとマミ先生にラギちゃんが、もみくちゃにされている。
カレルラは特に外見に興味がないのか、警戒しているのか、煙管の紫煙をたゆらせながら、それを眺めていた。
今、いる場所は、カレルラの応接室。
ロマの手配で元サビラギ様のパーティーメンバーが集められている。
「まぁ、実際に呼んで回ったのは、うちの黒服たちだけどねぇ。」
そうぼやきながら、自分の机をラギちゃんに譲り、応接セットの1人がけのソファーへと腰をかけるカレルラ。
隣のソファーはロマが既に座っている。
反対側の三人掛けのソファーには、しっしっとラギちゃんに追い払われたヤコさんとマミ先生、そして私が掛けており、私の膝の上にはチャチャが抱きかかえられて座っている。
私の横、予備として用意されたスツールにはサオリさんが座っているが、サナとミツキの姿はここにはない。
単純に椅子が足りないのもあるが、子どもには聞かせたくない話もでるやもしれぬ、というサビラギ様の意見にもよるものだ。
ちなみにその二人は今、娼館のお姉さん方にお土産を配りに控室へと足を延ばしている。
逆にチャチャが残っているのは、例の事件の話も出るからだろう。
「それじゃ、ちょっとまとめるかの。
各々、ケツはワシが持つ。
忌憚なく意見をいって欲しい。」
あれ?サビラギ様がここまで言うということは、これ流れによっては、私も正体とかも話さなきゃならない流れ?
▽▽▽▽▽
まずはラギちゃんから里での事件について語られた。
最悪を考えた場合、3年前より枢機卿を含む新教からの断種活動を受けていた可能性があり、手引きしたものは里の者だが、現在は里にはおらず、行方不明。
もっとも軽い被害であっても新教への改宗を目的とした里の切り崩しであり、すなわち里への攻撃である。
ただ、それが、その里の者の私怨なのか、枢機卿個人の布教活動なのか、それとも枢機卿が所属するグループによる断種、もしくは里の財産を狙う活動なのか、あるいは新教の相違としての侵略行為なのかにより、ラギちゃんの矛先が変わっていく。
3国のプラチナであるワシは3国とは喧嘩は出来んが、大教会は国じゃないしの。という言葉は、たぶん冗談じゃないだろう。
次に続くのはロマからの国境を跨いだ誘拐事件及び亜人族少女の暴走事件についてだ。
端的にいえば、サナとミツキが巻き込まれた誘拐事件とチャチャが暴走して化け猫になった事件のことだな。
と、その話が佳境に入る前に、
「実は、ここで、打ち明けたい話があります。」
そういって、膝の上のチャチャをサオリさんにあずけ、席を立ち、スキルを使う。
使うのは淫スキル【淫魔】
それを使い、淫魔、レイン=キュノミスへと姿を変えて見せる。
「ロマさんの話に度々でてくるであろう、レインという女性は、私のもう一つの姿です。」
▽▽▽▽▽
驚きの表情が出たのはヤコさんやマミ先生。
カレルラやロマは、なんとなく察していたのだろう。
特にレインとしては探索者ギルドからスチールの称号を貰っている以上、もろバレだったのかもしれない。
「ワシとしては、このレイン、あるいはレンをアサーキ共和国の勇者にしようと考えておる。
理由としては政治的な意味がほとんどではあったが、レンのこの世界でのあり方として、それが一番自然だとも考えているからじゃ。
レン、この世界に来た時の事を皆に話せ。」
ラギちゃんの声に答えるように皆の視線が私に集まった。
チャチャにゃ。
ねねさんとねぇねはお友達にお土産を渡すからって、いっちゃったにゃ。
チャチャはなにかお話があるからって、ととさんと一緒にゃけど、また難しい話にゃのかにゃ?
次回、第七七四話 「娼館主人カレルラ」
にゃんか、空気がピリピリして落ち着かにゃいにゃぁ。




