第七七二話 「ワシとプラチナ」
そういや、ラギちゃんことサビラギ様はプラチナの探索者だったか。
アサーキ共和国系だっけ?
そんなようなことを前にヤコさんが言っていたような気がする。
「それに、3国でプラチナになってしまえば、実質軍属なんぞ無視できるしの?」
ん?!
まて、今、とんでもないこと言わなかったか?
いや、『金剛姫』が三国の勇者に仕えたというのなら、そういうことなのか?
「そんな事をこの島で許されているのは一人だけなんだよ!
あんたそんな恰好しているが、姐さんだろ?!」
そういって、ぐいっと顔を向け、指でラギちゃんの鼻筋の傷を指差すロマ。
「お前さんとパーティーを組んでたのは、もっと後の歳だったが、流石に分かるか。」
ニシシと笑いながら、頭の上のロマの手をいとも簡単に払いのけるラギちゃん。
「まあ、恰好が恰好だから少し迷ったが、流石に本性を隠しきれてないぞ?
また、勇者先生の魔法具か?」
「ああ、あれは壊れてしまったから、もうない。」
「壊れた、じゃなくて、壊した、だろう?
力を押さえる魔法具だから本気出したら壊れると注意されてただろうに。」
「まあ、まあ、昔の事じゃ。」
「いうほど前じゃないぞ?」
「仲良しにゃね。」
チャチャがそういって笑うほど、ラギちゃんとロマは楽しそうにじゃれあっているように見える。
なんだかんだいって、二人も会えて嬉しいのだろう。
▽▽▽▽▽
「ギルドマスターだけには報告するからな。」
「えー、いやじゃー。」
「いやじゃー。じゃない。俺らの立場も考えてくれ。」
しばらく言い争って落ち着いたのか、今は酒を酌み交わしているラギちゃんとロマ。
ちなみにこの酒は、ロマが近くの若い探索者らしい男に言って買わせてきたものだ。
前にもなかったっけか?こういうこと。
ついでというわけではないが、サオリさんや私もご相伴に預かっている。
酒の種類は相変わらず清酒『鬼盛り』。
なんだかんだいって、ラギちゃんのいうとおり、これを飲ませておけばロマはご機嫌なのだ。
「で、わざわざこの街まで来たということは、手紙では伝えきれない内容なのか?」
少し声を潜め、ラギちゃんにそう問いかけるロマ。
「まあ、それほどの事ではない。
手紙の返事なら婿殿にそのうち届けて貰おうと頼んだのじゃが、さっそくこっちに行くというのでな、里が少し落ち着いたので、ついてきただけじゃ。
とはいえ、うーん、考えすぎかもしれんが、お前たちの意見も聞いて見た方が良いかもしれんな。」
一度腕を組み、ロマの顔を見つめた後、清酒をあおるラギちゃん。
その表情はサビラギ様の時と変わらず、真剣なものだった。
「それは、もちろん構わんし、皆を集めるのもすぐ手配するが……婿殿ってなんだ?」
あ、そこ食いついちゃうんだ。
「レンの事じゃよ、そのうちサナの婿になって貰い、ゆくゆくはアサーキ共和国の勇者になって貰おうかと思っておる。」
「ほう、サナの婿か。」
ロマがサナと私の顔を見比べながら、うんうんと無骨だが優しげな顔で頷く。
「それは良かった、おめでとう。
と、いうことはサオトメ家に入る事になるのか?」
「今のところはサナが分家を立てる形を考えておる。ま、色々とまだ先の話じゃな。」
「なるほど。それは良いとして、アサーキ共和国の勇者という話は、ちょっと聞き捨てならないな。」
そういって、険しい顔をするロマ。
ついつい忘れがちだが、勇者関係は国家機密だから、その表情もさもありなんだ。
ミツキッス。
ロマさんとサビラギ様って、どれくらいの歳の差なんスかね?
姐さんっていっているからには、ロマさんの方が年下っぽいッスけど、思ったより上下関係厳しくないみたいッスし……。
次回、第七七三話 「ワシとパーティー」
そういえば、パーティーの中ではロマさんが一番下っ端で、カレルラさんが歳は一つ下っていってたッスね。




