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第七七〇話 「ワシと夜市」


 「ご無沙汰してます、おかみさん。」

 「あら、お久しぶり。」


 外見年齢は20代中盤から後半くらい。


 栗毛の長い髪を首の後で結び、白い三角巾とエプロンをつけ、その三角巾のスリットの間からは2本の青みがかった角を伸ばした青鬼族の女性が、その夜市の店では愛想よく出迎えてくれた。


 「あたし達、里帰りしてたんです。はいこれ、おかみさんにお土産。」

 「え?私にかい?」


 久しぶりに会えたサナも嬉しそうにそういっておかみさんに紙包みを渡している。


 「おや、エプロンじゃないか、しかも卯の花織りの?!

 いい値段したんじゃないかい?」


 「おかみさんからいただいたエプロンのお返しも兼ねてです。受け取ってください。」


 そういや今も愛用しているサナのエプロンは、おかみさんから貰ったものだったか。


 「ありがとう、大事に使わせてもらうよ。あと、今日は、サービスするからね、どんどん注文しておくれよ?」


 ニコニコ顔で貰ったエプロンをしまい込み、おたまをカンカンとならす、おかみさんだった。



▽▽▽▽▽



 「そういえば、いつの間にか一人増えてるね。」


 まずはと取皿やコップを並べに来た、おかみさんがそういってラギちゃんに目配せする。


 「お初にお目にかかる、サナの親戚にあたるラギと申すものじゃ。

 サナ達が世話になったようで、お礼申し上げる。」


 そういって、深々と頭を下げるラギちゃん。

 なんかちょっと意外だ。


 「ははは、ご丁寧にどうも。若いのにしっかりしてるわね。

 世話なんて大したしてないわよ?

 ちょっと乙女心のお手伝いをしただけで。」


 「おやおや、なにやら面白そうなことをあったようで、良ければそちらも聞かせては貰えないかのう?」


 そういいながら、テーブルの上に大銀貨を積むラギちゃん。


 「ははは、気前も良いのね、いいわよ、料理も話もごちそうをつくって上げましょう。」


 そういって簡易コンロの方に戻っていく、おかみさん。


 料理は期待できそうだが、色々と暴露話もされそうでちょっと怖いな。



▽▽▽▽▽



 「これは美味い!」

 「美味しいにゃぁ!」

 「久しぶりッスね!」

 「うん、懐かしく感じちゃう。」

 「あいかわらず美味しいわ。」


 テーブルの上に並ぶ数々の料理に舌鼓を打ちながら、それぞれが感想を漏らす。


 通常の6人がけのテーブルでは狭いので、4人がけのテーブルを2つ合わせて使っているくらい、大量の、そして屋台とは思えない豪華な料理が並んでいる。


 イメージとしては中華料理の大皿が並んでいるといった方が近いかな?


 ゲージが充填していくようにテーブルが料理が埋まっていく中、「いただきます」はまだ?まだ?という、チャチャとラギちゃんの視線が痛かった。


 満を持して、「「「「「「いただきます。」」」」」」から、は、箸が踊るようにテーブルの上を舞っている。


 「いや、美味い、美味いが、酒が欲しくなる味じゃの。

 婿殿、あれじゃ、あれを出してくれ。

 もう飲んでしまおう。」


 満面の笑顔で鶏の唐揚げを食らい、おかみさんからサナの話を聞き、ご機嫌を絵に書いたようなラギちゃんがそういって催促する。


 「駄目ですよ、あれはロマさん達に、って貰ってきたんですから。」


 ラギちゃんのいうあれはコマさんから貰った清酒『くれない八塩やしお』の事だろう。


 酒が欲しいのは同意するが、さすがにあれをここで開けるわけにはいかない。


 「大丈夫じゃ大丈夫、ロマはどうせいつもの『鬼盛り』でも飲ませておけばご機嫌じゃ。

 『紅の八塩』なんて勿体ないわい。」


 「誰がご機嫌だって?」


 あー、今さっきまでは、目の前のラギちゃんがご機嫌だったのだが、いつのまにかその後ろに立っているプロレスラーを二回りくらい大きくしたような軽戦士風の装いの赤鬼族の男が、その顎髭を撫でながら不機嫌な顔をしていた。


 チャッチャにゃー!


 ごっちそうにゃー♪ごっちそうにゃー!


 どれ食べても良いのにゃー天国にゃー。


 次回、第七七一話 「ワシとロマ」


 うにゃ?何かあったのかにゃ?

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