第七六三話 「ミツキのお薬辞典」
「それともう一冊。」
『ミツキのお薬辞典(材料順)』ver.1.0
個々の内容は同じだが、こちらは使用頻度の多い材料から少ない材料の順に並び替えて印刷?したものだ。
この材料があれば何の薬が作れるか?というのを調べやすくしてある。
ちなみに2冊とも目次は無い。
面倒というか、そこまでやるとまだまだ時間がかかりそうだったからだ。
久しぶりのデスクワークなので疲れたというか集中力が持たなかったというのもある。
「見てもいいんスか?」
「見るどころか文字どおりミツキに上げるために作ったんだから、好きに使っていいよ。」
一冊を脇に挟み、もう片方をペラペラと捲っていくミツキ。
チャチャも珍しそうに横から覗きこんでいる。
見終わった後、一冊目を興味深そうにしているサオリさんに渡し、二冊目へ取り掛かるミツキ。
「お父さん、お茶どうぞ。」
「ああ、ありがとう。」
そんなミツキを眺めている間にサナが麦茶を持ってきてくれた。
よく冷えていて美味い。
「並べなおしただけだから、読みづらいからもしれないけど、どうかな?」
校正も何もしていない、刷りっぱなしの資料なので、リアクションがないと、不備があったのでは?と、段々不安になってきた。
「パパ。」
「はい。」
サオリさんから戻って来た分も重ね、二冊を胸に抱くミツキ。
「ありがとうッス!これならきっと覚えやすいッス!大切にするッス!」
そういって深々と礼をするミツキ。
なんだ他人行儀だな。
「何冊でも作れるし、作り直せるから、何か書き込んだりして雑に使っても大丈夫だよ。」
そういって目の前のウサ耳を避け、ミツキの頭を撫でる。
「本を作る技能ですか?」
「ああ、絵や文字も書きやすくなっているはずだから、サナも今度試してみたら?」
地母神様の話によると、私が覚えた淫スキルはサナにも使えるようになっているはずだ。
って、淫魔ランクについてはどういう扱いなんだろ?
気になったのでサナに念話で確認してみると、サナというか眷属の場合、淫スキル【淫魔】を使うと、一定時間【性技】スキルのランクが淫魔ランクとみなされるらしい。
サナの【性技】スキルを考えると、その場合の淫魔ランク3になるから、かなり高い方だ。
……最近サキュバスちゃん度に磨きがかかり過ぎではないでしょうか?
それはさておき、私みたいにいきなり製本は無理でも、チャチャ用に料理のレシピを紙に書いてやるくらいは出来るようになっているはずだから、こんど試してみるといいと話し、話題は晩御飯の話へと移っていった。
▽▽▽▽▽
「じゃあ、後はアタシが片付けとくッスよー。」
「お願いね、ミツキちゃん。さ、お父さん、いこいこ?」
「行くにゃー!」
サナの作った夕食に舌鼓をうち、サオリさんの報告を聞いた後、流石に今日の神秘体験&久しぶりのデスクワークでの疲れが出たのか、それとも単純にお腹が満たされたせいかは分からないが、睡魔が襲ってきたのでとりあえず仮眠する。と、告げたところ、先にお風呂へ入った方が良いと、あれよあれよという間に淫魔法【ラブホテル】で繋げた、いつもの別荘のお風呂場までサナとチャチャに連行されてしまった。
「いつも思うんですけど、温泉って最初からお湯沸かさなくてもいいから便利ですよね。」
そんなことをいいながら、私の胸元から身体を素手で洗い始めるサナ。
もうスポンジとかタオル使ったら?という説得は既に諦めている。
「でも、チャチャはあの川にどぼーんっての好きにゃよ?熱くにゃくて。」
背後から楽しそうに私の頭を泡立てているチャチャ。
チャチャのいっているのは離れの川の側にある焼石を入れて沸かすタイプのお風呂の事だろう。
黙って『お父さん洗い』をされていると寝てしまいそうなので、ボディーソープを両手に塗りつけて、目の前のサナの胴へと伸ばした。
ミツキッス!
パパが、パパがアタシのために本作ってくれたッス!
しかも2冊も!
嬉しい!絶対大事にするッス!勉強するッス!
次回、第七六四話 「月夜のウサギ」
でもアタシだけにだから、あんまり喜び過ぎるとサナちー達に悪いし……でも嬉しいッス!




