第七四九話 「休日」
「あら?」
「エアコン入っているとはいえ、暑くないんだろうか?」
サオリさんと2階の寝室へ来ると、サナとミツキが抱きつきあい、ミツキの背中にチャチャがコアラの子のようにくっついて寝ていた。
またミツキの抱きつき癖が出たのだろうが、さっきのチャチャの時と違い、誰もうなされていないようなので、そのままにしておこう。
そう思いながら、サナの横の布団へと腰を下ろすと、そっと横にサオリさんが身を寄せてきた。
「わたしも抱きついて寝ても良いですか?」
少女のようなキラキラとした瞳で、見つめてくるサオリさん。
「えーと、おっきな身体で?それとも小さいまま?」
「うふふ、大きな身体で抱きしめてくださいな。」
どうやらサオリさんの甘えさせたい欲は、先程の露天風呂で満足したらしい。
種族特性【ペドフィリア】を解除し、元の大人の姿に戻った後、横になり、腕を伸ばすと、そのままサオリさんも私の胸を枕にするように身を添え、横になった。
「おやすみなさい、レン君。」
「おやすみなさい、サオリさん。」
▽▽▽▽▽
「これが離れの権利書。名義はサオリ、あんたにしてある。
で、こっちが昨晩の長老会で承認された、レン、ミツキ、チャチャの離れでの居住許可書。
監督者はサオリ、監督補佐はサナのほか、アエ、そしてワシを登録してある。
里に入る時、そして里に何か影響を及ぼすような行動をする時は、最低でも監督者または監督補佐と一緒に行動することが居住の条件じゃ。
一応、行動に関しては、族長や長老会の面子と一緒でも大丈夫なようにしてあるが、早々あることではなかろう。」
サビラギ様が、そう説明しながら、何枚かの書類を目の前に並べている。
いつも朝にアエさんが離れまで歩いて用事を伝えに来てくれることが心苦しかったので、今朝は、サナとチャチャ謹製の朝食を取った後、蔵の扉に繋げた淫魔法【ラブホテル】経由で早乙女家に先に顔を出したのだが、この調子でサビラギ様が手ぐすね引いて待っていたのだ。
「次の特別集会は明日の朝から、人数は30までいかないくらいだろうよ。
なので、今日は一日、ゆっくり休むといい。」
サビラギ様はそういって笑い、私の目の前に一抱えもある革袋を置く。
「昨日の診察料と治療費じゃ。
里では高額な金を使うことは少ないでな、細かい銀貨がほとんどなのは容赦して欲しい。」
「いえ、構いません、大丈夫です。」
そういって受け取り、メニューのアイテム欄に仕舞うと、ざっくり13金貨くらいの金額だった。
全部銀貨なら1300枚なので、確かにちょっと細かいが、私なら問題ない。
「はは、本来なら持ち運びのために、大金貨や、せめて金貨にしてくれということろじゃぞ?
他所では気をつけたほうがええ。」
カラカラと笑いながらそう注意するサビラギ様に礼をして部屋を後にした。
▽▽▽▽▽
「お父さん、お父さん。」
「ん?どうした?」
袖を引っ張られ、サナに呼び止められる。
見上げられたその顔は、少し頬に赤みが差していた。
「あの、朝からなんですけど、少し調子が……」
具合が悪そうなので、慌てて淫スキル【性病検査】で鑑定をする。
「あれ?」
「あの……。」
更に袖を引っ張られ、低くなった私の耳元で、サナが、そっと囁く。
「なぜかまた発情しちゃってるみたいです……。」
いや、そんな色っぽい声で言わないでも。
っていうか、
「とりあえず、いつもの部屋に行こう。
ごめん、サオリさん、後、よろしくお願いします。」
「はい?」
「うにゃ?」
「なんすか?」
頭にハテナマークを浮かべる3人を後に、サナを抱きかかえて、淫魔法【ラブホテル】を使うために、急いで蔵を目指した。
サナです。
うん……やっぱり、気のせいじゃないみたい。
お腹熱い……。
なんでこんな時期に……。
次回、第七五〇話 「淫魔の眷属」
このまま里にいると、匂いで発情が移っちゃうかも?




