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第七四八話 「サオリの目標」


 「族長になるために、族長であるために、を目標に生きてきましたから、それが無くなって、これから何をしたらいいのか、ちょっと迷ってしまっているのかもしれません。」


 燃え尽き症候群というものがある。


 それまで目標を高く掲げていた人が、突然やる気を失ってしまう症状だ。


 それは努力のかいなく目標を失敗してしまったことが原因だったり、逆に大きな目標を見事達成出来たことにより、打ち込めるものがなくなってしまい、何もやる気が起きなくなってしまうような状態。


 ひょっとしたら今のサオリさんも、それに近いような状態なのかもしれない。


 「だから、離れを与えられたので、そこで隠居生活というのは、ちょうどいいかな?とも思ってますよ。」


 意外と、というと失礼かもしれないが、サオリさんは思ったより里自体には執着していないようだ。


 いや、どちらかというと、自分はもう口出しをする立場ではない。と、思っているのかもしれない。


 「サオリさん。」


 不安を感じ、その表情が見たくて身体を反転させ、浴槽の両縁に手を着くようにして、向かい合う。


 「どうしたの?レン君?」


 しかし、その表情は、いつもの優しげな表情のサオリさんのままだった。


 ミツキのように、あまり深刻に考え過ぎないところが、サオリさんの良さなのかもしれない。


 「これからは、ゆっくりサオリさんのやりたいことを探していけば良いと思いますよ。」


 ちょっと必死で、壁ドンのような体勢になってしまっているのを、誤魔化すように、そう告げる。


 「うふふ、そうね。」


 口元に手を置き、くすくすと笑うサオリさん。


 子どもの姿での、この行動は、ちょっと背伸びをしているような滑稽な姿に見えたのかもしれない。


 「あ、そうだ、一つ、やりたいことが思い浮かびました。」


 顎の下で、拍手をするように両手を軽くパンと叩いて、上目遣いでいたずら気な笑顔を見せるサオリさん。


 子どもっぽい仕草だが、少しだけ瞳に熱が籠もっているように見える。


 と、思った瞬間、顎の下で合わさっていた両手が私の頬を捉え、そのまま唇を奪われた。


 「わたし、今度は好きな人の子どもを生みたいなー。」


 長い口づけの後に、そんな事をいいだすサオリさんだった。



▽▽▽▽▽



>サオリは淫魔の契りにより主を倒した

>190ポイントの経験値を得た



>レンは淫魔の契りにより眷属を倒した

>70ポイントの経験値を得た

>サオリは淫魔の契りにより主を倒した

>190ポイントの経験値を得た



▽▽▽▽▽



 サオリさんの要望は、もちろん、今すぐ、という話ではなく、少なくても次の発情期以降の話だそうなので、ちょっとホッとする。


 ただ、三十路になるまでには一人は生みたいという期限付きなので、この場の冗談ではなく、結構ガチな感じだ。


 ただ、族長の血に連なるものの責務としての子作りと出産ではなく、一人の女としての幸せのため、と言われると当然、無下には出来ない。


 「うふふ、考えておいてくださいね?」

 「はい。」


 再び露天風呂の浴槽の中で、子どもの身体のまま、今度は正面から抱きしめられながら、そんな睦言を重ねていた。



▽▽▽▽▽



 ちなみに余談なのだが、サオリさんの話によると、一般的な発情期の時期以外での妊娠は、里ではあまり良いイメージが無いのだそうな。


 察するに、人族でいう淫乱みたいなニュアンスに思われてしまうようだ。


 ってことは、特別集会で提案した淫魔法【発情】を使っての再発情化の希望者はほとんどいなさそうだな。


 サオリです。


 レン君の赤ちゃん……うふふ、ちょっとドキドキしちゃいますね。


 男性恐怖症だった、わたしが、こんなことを考えられるようになるなんて、思ってもみませんでした。


 次回、第七四九話 「休日」


 本当は今すぐにでも欲しいですけど、色々落ち着くまでは我慢ですね。

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