表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

744/979

第七四三話 「ミツキとパパ」


 最後の言葉が兎人語だったところをみると、今日は甘えたい気分なのだろう。


 「いいよ。」

 

 そう一声かけ、扉を背に腰を下ろすと、それにすがり付くようにミツキも、しなだれかかる。


 改めてミツキの肩を抱き寄せ、密着度を高めると、ミツキも私の背中に回した手を首へと回しなおし、唇を寄せてきたのでそれに答える。


 「んっ……。」


 ミツキの吐息とも声ともつかない音が、静かな寝室に響く。


 「パパ、ちゅー、もっと……」


 今日は酔ってるせいか、随分甘えたさんだな。


 再びミツキの唇に口寄せ、ついばむようなキスをすると、満足したのか、おでこを私の胸に擦り付けるよう、また抱きついてきた。


 首というか顔が、ウサ耳に挟まれるような形だな。


 「ミツキ。」

 「ん?」


 「本当にお疲れ様。

 ミツキがいなかったら、こんなに早く里の不妊問題を解決出来なかったよ。」


 「そんなことないッスよ。」


 おや?鬼族語に戻ってしまった。


 「そんなことなくないさ。

 ミツキの魔法効果解除魔法のおかげさ。」


 ミツキの頭を撫でながら話を続ける。


 「それだって、パパの『レベル上げ』のおかげッスよ。」

 「違うね。」


 ミツキの私なんかといいたげな言葉を食い気味に否定する。


 「普段からミツキが私達のパーティーの、いや、家族全体の事を補佐するような選択をし続けてくれた結果だよ。


 いつも私達みんなの事を気にかけてくれていて、ありがとう、ミツキ。」


 そういって改めてミツキを抱きしめる手に力を込める。


 いつも一歩引いて、自分のやりたいことよりも、私達に必要なことを一番に考えてくれているミツキ。


 その想いと行動の結実こそが、今回の件の早期解決に繋がったと私は思っている。


 「がんばったね。よくがんばった。偉いぞミツキ。」


 再び、ミツキの頭をゆっくりと撫でる。

 頭の形を確かめるように、うなじに至るまで、ゆっくりと大きく。


 「んぐっ……」


 ミツキの口からくぐもった声が漏れたかと思うと、ゆっくりとミツキが顔を上げた。


 「アタシ、ちゃんと頑張ったッスか?

 みんなの、パパの力になれてるッスか?」


 ポロポロと涙を流しながら、不安そうな瞳で見つめてくるミツキ。


 「もちろんだとも、ミツキ。さすが私の愛しい娘だ。」


 そういって、頬に手のひらを添え、親指で涙を拭ってやると、ミツキは目を細め笑顔を作ろうとする。


 「無理に笑顔を作らなくてもいいよ、ミツキはミツキのままでいいんだよ。」


 そう告げると、ミツキは頬に当てている私の片手を両手でそっと握り、目を伏せ、愛おしそうに頬ずりする。


 しばらくの沈黙。


 そして、


 「パパ、大好き。


 アタシ、パパと出会えて、本当に幸せです。」


 はにかむような笑顔で、そう兎人語で告白したミツキの顔は晴れやかだった。



▽▽▽▽▽



 乙女のようなその笑顔が可愛くて、ミツキのおでこにキスをしてしまうと、我に返ってしまって恥ずかしいのか、再び、おでこを胸に当てるように抱きつき直すミツキ。


 さっきまで垂れていたウサ耳も、すっかり元気を取り戻しているが、照れているのか、内側が朱に染まっている。


 ちょうどいい位置にあるので、首を回し、唇でそっとそれをはむ。


 そのまま、ウサ耳の天辺まで甘噛をつづけ、こんどは下へ。


 根本までたどり着いたので、耳の根元のモフモフとした場所に鼻を埋め、南国のフルーツを思わせるミツキの体臭を胸いっぱいに吸い込むと、ミツキの身体が電気でも流れたかのように震えた。


 「ちょっ、パパ、いま駄目ぇ……。」


 私の両肩を両手で掴み、そう絞り出すようにいうミツキ。


 「なんで?」


 嫌がってはいなさそうなので、もう片方のウサ耳へと取り掛かる。

 今度は根本から一周しようと、甘噛した瞬間、


 「パパが好きすぎて、えっちしたくなっちゃう……。」


 ウサ耳を真っ赤にして、目をそらしながらミツキはそういった。



 サナです。


 えーと、金網と炭はそのままで良いんだっけ?

 じゃ、だいたい外は片付いたかな?


 え、うん、良いと思う。

 いってらっしゃい。


 次回、第七四四話 「サナと台所」


 それじゃ、あたしは洗い物と明日の朝ごはんの準備しちゃおうかな?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ