第七十三話 「ローション」
さて、敵と私とのステータス差や、敵のレベル差からくるステータスの差があるので、サナのところまではある程度バラバラに連れてはいけると思うがデミミノタウロスの【突進】がネックだな。
発動されると一気に追いつかれそうだ。
逆に考えるとサナのところに着くまでに【突進】を浪費させれたら安全性が高まるか。
ゴールまでおおよそ200mくらい。
ふーむ。
よし、試してみるか。
敵に背を向け、レーダーを頼りに20m弱くらいの距離を保ちながら階段の踊り場に向かい移動する。
そしてその際に、淫魔法【ウェット&メッシー】で大量の粘性の高いローションを両脚の踵からコーン状にぶちまけながら走った。
遠くから見たらまるでナメクジが這った後に見えるかもしれないが、実際には豪雨の時の舗装道路よろしくちょっとした層になるくらいの厚さで石畳がローションでコーティングされていく。
ブモッ!という叫び声に首だけで振り返ってみると先頭を走っていたデミミノタウロスが見事にコケていた。
そりゃその硬そうな蹄と石畳とローションは相性悪かろう。
むしろ人間の素足のようなデミオークの方がまだ歩きやすそうだ。
あ、コケた。
>デミミノタウロスの【突進】
来た!
コケて無い方のデミミノタウロスだ。
>デミミノタウロスの【突進】
それを受けて、コケた後、立ち上がったもう一体もスキルを発動するらしい。
こちらも前回ドレインした【突進】を使って逃げる覚悟もしておく。
ブモグジャラヴア!
ブモラプッラァ!
そりゃ前傾姿勢になられば尚更足元グリップしないよな。
見事に2体とも大ゴケしている。
結局現在先頭はレベル20のデミオークだ。
結構いい感じにバラけて来てついて来てるので、最後尾が諦めない程度の速度でサナの元に向かう。
あらかじめ念話で状況を伝えておこう。
『サナ、そろそろそちらから見えてくる頃だと思うから、通路前まで来て弓で狙う準備して。』
『わかりました。予定通り先頭から順に射っていいですか?』
『うん、よろしく。』
角を曲がりラストの直線コース。
ここまで来たらローションの噴出はもういいだろう。
サナの方に向かって一直線に走っていく。
ローションのせいで角を曲がりきれずにすっ飛んでいくデミオークLv.20をレーダーで眺めながら、弓を構えているサナの横に付き、メニューのアイテム欄から槍を取り出す。
「今回はデミミノタウロスの突進も来ないから、十分引きつけて射ってもいいよ。」
「はい!」
先頭はデミミノタウロス。
サナは5mくらいの近距離まで引きつけて確実に矢を当てに行った。
無事命中して矢に付与してあるドレインの効果で一時的にスタンしたところで、すかさず近づき左手で股間から【ドレイン】し、体力の9割を吸出し気絶させると、そのまま左足で踏むようにして、今度は魔力をドレイン。
そのまま振り返るようにして槍で首筋を突き刺しトドメを刺し、今度はまた逆回転で壁側に避けサナの射線を開ける。
>デミミノタウロスを倒した
>90ポイントの経験値を得た
次に来ているのはデミオークLv.15。
「サナ、こいつの後ろの奴を狙って!」
「はい!」
私の方に向かってくるデミオークの短剣を持っている方の腕を槍で突き、武器を落とさせると、そのまま槍をアイテム欄に仕舞い、素手で相手の鼻を潰すような掌底から中指の指先で額の魔素核からドレインして気絶させる。
気絶させている間に足でまた魔力をドレインしておく。
結構ローションで魔力使ってしまったのだ。
そうしている間に目の前をサナの矢が走り、近くまでやってきていた、もう一体のデミミノタウロスにヒット。
スタンした隙を見て、また股間からドレインして気絶させる。
高さ的に掴みやすいのだ。
「サナ、この2体のトドメお願い!」
「はい!」
気絶したのはサナに任せて、アイテム欄から槍を取り出し、近くまで迫ってきているデミオークLv.25に構える。
相手の武器は手斧だ。
間合いは短いが投げられると危ないので、淫スキル【男根のメタファー】で槍に【ドレイン】を付与させて、とりあず当てることだけ考える。
急所ではないので3割吸収+スタンしたところで間合いを詰め、槍を消して額からドレインして気絶させ、次にその後ろにいるデミオークLv.20に回し蹴りの要領で股間から足でドレイン。
気絶しているところで、また魔力をドレインして回復させる。
>レベルが22になった
お、ちょうどドレインで吸った分でレベルが上がったようだ。
>サナはデミオークを倒した
>30ポイントの経験値を得た
>サナはデミミノタウロスを倒した
>80ポイントの経験値を得た
「サナ、残り2体もお願いしていい?」
「はい!」
>サナはデミオークを倒した
>190ポイントの経験値を得た
>サナはデミオークを倒した
>80ポイントの経験値を得た
ざっくりあと1,000ポイントくらい稼げば、サナももう1レベル上がりそうだな。
他の探索者の迷惑になっても困るのでローションの召喚をキャンセルしながら、そんな事を考えていた。




