第七三○話 「不妊治療」
単純にいえば、淫スキル【婦人科】と淫魔法【発情】の組み合わせを、来年の発情期の時期に必要に応じて使うか、せっかく集まっている今使うかのどちらかだな。
族長であるミナちゃん、サビラギ様、白家の嫗、サナブリ様にも集まって貰って、私が出来ることを提示した上、相談すると、今期、遅れてでも発情したいものは、後日改めて集まって貰うということで纏まった。
理由としては、上手く発情して、妊娠したとしても、本来、子どもが生まれ、育てる時期から、ざっくり2~3か月ずれ込んでしまう事に各家庭が対応出来るかの確認が必要だということと、今すぐ発情してしまうと、どうしても妊婦は鬼灯水の影響を受けてしまうので、白家の飲料水の供給が間に合わない事の2点だ。
発情期が基本的に固定している亜人属ならではの問題だな。
これは思いつかなかった。
なので、優先度としては、当初どおり妊娠している女性たちが使っている井戸等の浄化が最優先として、里の水質浄化が終わり次第、希望者を募るという形を取ることになり、その旨、今回集まっている女性たちにも告知され、今、集まっていない今年つわり等の妊娠初期症状が出なかった者に関しても、口コミで広げるよう告げられ、特別診断はお開きとなった。
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次々と集会場から女性たちが退場していくに中、サオリさん、サナ、ミツキ、チャチャの4人は壁に大きく【ビジュアライズ】で表示させている里の地図を前に打ち合わせをしているようだ。
どうやらここからの帰り道にも何箇所か浄化しておいたほうが良い井戸があるらしい。
里の者が二人いるとはいえ、基本的に働きものなんだよな、皆。
「おう、婿殿、おつかれ。」
そんな事を考えていると、サナブリ様を見送りにいっていたサビラギ様が戻って来た。
ミナちゃんは……まだ集会場の出入り口近くで里の人達に捕まっているっぽいな。
「婿殿のお陰で、『碧拳』サナブリが短期とはいえ復帰して、里の現役護りが手厚くなった。
これらなら、まともな軍隊がまともな人数で攻めてこない限り、里もワシ抜きでも大丈夫じゃろう。
……婿殿の、あの部屋の魔法で急襲でもされない限りはな?」
いや、殺気見せるのやめてくださいってば。
「これで、ワシも少しの間なら、里を離れることが出来そうじゃ。」
「それもあって、サナブリ様の治療を?」
「いや、それは結果論じゃよ。
あんなに元気になるとは思ってもみなかったからな。
……あの強くて美しかった『師匠』が、病に冒されたまま、迷宮へと消えていく。
それが……寂しかった。と、いうのは正直あったがな。
それが迷宮と鬼族の、さだめとしてもな。
でもそれは人族の中で生活した時間が長かった故の、ワシの余計な感情じゃよ。
しかし、それでも元気な師匠をまた見れたのは嬉しかった。
ありがとう、婿殿。」
そういって、人知れず私に頭を下げる、サビラギ様。
恐縮して私も頭を下げてしまい、微妙な空気が流れた。
「今日の件で、今晩にも詮議で婿殿達に課せられた、里のへの滞在期間中、里に有益な者であることを皆に更に示す、という課題を婿殿達は達成出来たと長老会は認定するじゃろう。
そうすれば、婿殿達は、結界守跡地にのみ最低1年間の居住が許可され、里への出入りも、今まで以上に自由となる。
今後ともよろしくな、婿殿。」
そういって私の肩をポンポンと叩くサビラギ様。
そういや、今日で稲白鬼の里について5日目か、そう考えると結構ギリギリだったな。
なんでも、最後の長老会の決定は、また改めて詮議の場を設けるという形ではなく、5家の署名をもって、文章で本人へ通知と、里への告知、そして各家へ回覧されることになるらしい。
公式文章として残す、という考え方なのかな?
準、里の一員として認められたと思っても良いとのサビラギ様の言葉なので、サナを故郷に戻し、一緒に住む場所を見つける、という当初の目的は達成出来たと思っても良さそうだ。
とはいえ、まだまだお仕事は残っているんだがな。
「お父さーん、相談があるから来てー。」
そんな事を考えていると、里の地図側にいるサナから声がかかる。
よし、とりあえず、里の水の問題はなるべく早く終わらせてしまおう。
ミツキッス。
んー、結果だけ見れば、妊婦さんの数は白家が全滅で、青、赤家が7人ずつ、黒家が3人とと早乙女家が4人ッスね。
白家は水源に湧き水や川を多く使っている関係で、濃いめの鬼灯水が流れていた関係ッスかね?
逆に今は浄化後の水が流れているので、ここは手を付けなくても良しッス。
早乙女家の方は、先に必要なところは井戸の浄化を全部やっちゃったから、こっちも大丈夫ッス。
次回、第七三一話 「残業」
黒家の水の供給は地理的に白家に任せてしまって、早乙女家とも白家とも比較的遠目な青家から片付けていくのが効率的な感じがするッス。




