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第七二五話 「特別集会」


 里の人たちからの質問を大別すると、


 ・本当に迷宮外に魔物がいたのか?


 ・汚染された水は毒ではないのか?堕胎以外に健康被害はないのか?


 ・井戸水はいつ頃から普通に使えるようになるのか?


 ・勇者は医者なのか?治療の腕を証明させるというのは何をするのか?


の四つだ。


 本当に迷宮外に魔物がいたのか?という件については、白家のおうなが水面越しだが、自分の目で確認したと宣言し、原型となった個体も確保してある。ということで、巨大手長海老の死体を里の人たちに見せことになった。


 また、併せて白家の聖域でもある地底湖と里を覆う結界の関係性を説明し、地底湖が迷宮となんらかの繋がりを持っている仮説を話すことによって、納得して貰えたようだ。


 汚染された水は毒ではないのか?堕胎以外に健康被害はないのか?という件については、私から説明することとなった。


 説明に先立って、自分はエグザルの公営娼館の主治医をしており、トラージの街の娼館ギルドでも診断と治療の経験がある婦人科を専門とする治療師でもある。という自己紹介を改めてする。


 これをしないと、まず説明に説得力が出ないからな。


 現在、一部の井戸水はまだ「鬼灯水」と名の酸漿さんしょうという薬に近い性質になっている。


 これは子宮こぶくろの動きを活発することにより堕胎作用をもたらすが、本来、咳止めや解熱、利尿を促す薬でもあるので、大量に摂取しなければ、直ちに健康被害をもたらすものではなく、それはこの3年間で実証されているのでは?という、説明で、納得して貰った。


 次に順番は前後するが、勇者は医者なのか?治療の腕を証明させるというのは何をするのか?という件については、先ほど自己紹介した婦人科医であることと、その腕前が嘘ではないことの証明として、サナブリ様の癌を癒して見せることを、ミナちゃんが宣言すると、一時騒然とはなったが、続いて手を挙げたサオリさんの、自分も癌で私に治療して貰った。という、発言で、嘘や誇張ではないと思ってくれたのか、納得して貰えたようだ。


 最後に井戸水はいつ頃から普通に使えるようになるのか?という件については、改めて妊婦がいる家を優先的に浄化作業することを告げた上で、午後からの女性の健康診断が終わり次第、水質検査と浄化作業を行うことを説明し、実際の浄化作業をするサナ、ミツキ、チャチャを紹介する形となった。


 期間としては、自然な希釈による水質改善も含めて、おそらく3日までかからないだろう。という言葉が一番効いたらしく、安堵の声がいろんなところから聞こえていた。


 そんな感じで集会はおおよそ2時間程度で終わり、昼を挟んで集会場でサナブリ様の公開治療、そして今期、つわりの症状が現れた里の女性たちの健康診断という流れなのだが、公開治療を見てみたい、という人と、つわりの症状はないのだが、健康に不安があるので見て欲しい、という人が思ったより多く、女性限定の上、後者を優先させ、前者は抽選で何人か追加で集会場に入ることになってしまった。


 ちなみに診察代金は、サナブリ様の分を早乙女家が、つわりの症状が現れた里の女性たちの分は、それぞれの所属する家が負担することとなり、それ以外は、個人負担という話になっている。


 これは事前に私自体はお金を取らなくても良いと話したのだ、それをすると、際限なく見てもらいにくる人が出てくるようになるから駄目だという話になったからだ。


 男性についても、明日以降、診察の希望を取るという話になり、これで一度、集会広場はお開きとなった。



▽▽▽▽▽



 集会場の大広間に集まった人数は120人程度。


 この大広間は、緞帳どんちょうのついたステージもあり、印象としては、天井の低い体育館といった雰囲気なので、これだけの人数が入っても、まだまだ余裕がある。


 入場者には、とりあえずは座布団を片手にステージに向かって集まって貰い、ステージの上の椅子には、サナブリ様に既に座って貰っている。

 

 サナブリ様は病院服に雰囲気が似ている貫頭衣姿だ。

 ギャラリーの多さに悪態をついているものの、凛として動揺した様子もない。


 この場の仕切りはミナちゃんの役割のようだが、女性ばかりの集まりなので、当然のように姦しく、公開治療を行う旨の発声をしたものの、場はまだ静まらない。


 まあ、族長とはいえ、ここに集まっているのは、ほぼ全員がミナちゃんより年上だしなあ。


 サビラギ様もしばらく助けを出さずに見守っていた様子だが、途中で埒が明かないと思ったのか、縁台前のミナちゃんの近くに歩み寄ったところで、


 「静かにおし!」


と、場を一喝する声がサナブリ様から上がった。


 「族長の御言葉中だよ!

 あんたらいい年をして、礼儀の一つもわきまえられないのかい!」


 続いたその言葉で場は静まりかえり、その後、サビラギ様の促しで、ミナちゃんから、改めて今回の公開治療の趣旨が述べられた。


 さて、そろそろ出番だな。



 サオリです。


 今日の集会場でのわたしの役割はレン君の補助です。

 問診表の筆記をお願いされました。


 集まっているのは年代的に知っている人ばかりなので、レン君の心配している名前の聞き漏らしなどは大丈夫だと思います。


 次回、第七二六話 「公開治療」


 サナ達みたいに魔力でお手伝い出来ない分、頑張らなくちゃ!

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