第七二〇話 「人探し再び」
問題なのは、ケイジョウを探すことを頼まれてしまった事だ。
サビラギ様から、「勇者殿は人探しも得意だとサオリからきいておるぞ?」とか言われてしまうと断りづらい。
というか、私の知らないところでの私上げが凄いなサオリさん。
確かに今回の事件の真相は、ケイジョウを直接問いたださないことには話が進まない。
いや、同席してたであろう枢機卿でもいいんだろうが、それやっちゃうと最悪新教と戦争まっしぐらだしな。
サビラギ様と赤の家守はそれでもやる気満々だったが、穏健派の青家と黒家がそれを抑えた形だ。
さすがに「ケイジョウとヤッたことある女性とヤッたらすぐ場所分かりますよ?」とは言えない雰囲気なので、最善は尽くしますが、条件が厳しいので約束しかねます。と答え、詳しくは落ち着いたころにサビラギ様にでも改めて相談しよう。
そのほか、鬼灯提灯の出どころなど、調べなきゃならないことは山積みなのだが、狭い里内で、ああでもない、こうでもないと考えていても良い案は出そうにないので、サビラギ様の元仲間であるロマ達に相談してみては?と提案してみた。
上手く話を持っていけば、探索者ギルドや娼館ギルドでも情報を扱ってくれるかもしれない。と、いうことを説明すると、かなりの好感触だった。
これは一度、近いうちにエグザルに里帰り?する事になりそうだな。
▽▽▽▽▽
長老会も終わり、帰り道がてら、里を流れる川の水質をチェックして歩く。
うん、思ったより水の流れが早いのか、それとも既に希釈されているのかは分からないが、現時点で既に上流側は『鬼灯水』では無くなっているようだ。
これなら予定どおり白家が飲料水の配布を行うことも問題なさそうだな。
下流側までいくには、ちょっと回り道になるな。と、思っていたところ、遠くに見知った人影が見える。
「あ、ととさんにゃ!」
「パパ、お疲れっス!」
「お疲れ様。」
三人娘もこちらに気づいたのか駆け寄ってきた。
「思ったよりかかりましたね。」
一足遅れて、サオリさんも合流する。
迎えにでも来てくれたのかと思ったが、時間のあるうちに、早乙女家系の井戸の浄化をして回ってくれていたらしい。
少なくても今現在、つわりが出ている女性がいる家は全部浄化し終わったとのことだ。
「それは凄い!みんなもお疲れさま。」
かわりばんこに三人娘の頭を撫でて回る。
ついでといってはなんだが、そっと差し出されたサオリさんの頭も撫でる。
「おかげで明日以降のお仕事が少し楽になりそうだよ。」
「良かった。」
「読み通りッスね。」
「頑張ったにゃー。」
「うふふ、レン君に頼り切りというわけにもいかないですしね。」
そんな話をしながら手を繋ぎ、里を後にした。
▽▽▽▽▽
「アエ姉さんがすぐご飯つくりに来ちゃうから、全然お父さんのご飯作れない。」
「新しい魔力コンロが便利で、色々作ってみたい状態なんだそうだよ?」
夕食の片付けが終わり、居間で一段落していると、麦茶を持ってきたサナからそんな愚痴が飛び出してきた。
ちなみにミツキは私の片方の胡座に仰向けに頭を乗せて寝そべり、うちわで自分を扇いでいる。
暑いなら離れればいいのに、と思わないでもないが、たまにこっちも扇いでくれるので、まあいいだろう。
チャチャはというと、なんか疲れたので寝るといってサオリさんに連れられ、2階の寝室へと行ってしまっている。
ミツキの話によると、魔力回復剤の副作用かもしれないとのことだ。
便利だからといって、あまり乱用はしないほうが良さそうだな。
「気持ちは分かるけど、お父さんのご飯は、あたしがつくりたいの!」
私に寄り添うようにストン、と腰を下ろしながらも唇を尖らせるサナ。
こういう表情はちょっと珍しいな。
「まぁまぁ、落ち着くッスよ、サナちー。」
そういいながら、腕を伸ばし、サナを扇ぐミツキ。
3人でこうしてダラダラと過ごすのも久しぶりな感じがするな。
チャチャにゃぁ。
なんか凄く眠いにゃぁ。
ねぇねがお薬飲んでるせいかも?っていってたけど、チャチャ魔力?少ないから、いっぱい飲まないとついていけないにゃぁ。
でも、ととさんにも褒められたにゃよ?
次回、第七二一話 「思えば遠くへ」
うにゃ?かかさんも一緒に寝てくれるのにゃ?
うん、嬉しいにゃぁ。
 




