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第七一四話 「鬼灯提灯手長海老」


 「また煙が来るわよ!」


 鬼灯提灯手長海老がノーモーションから煙幕を吐く。


 いや、厳密にいうなら高濃度で緋色の鬼灯水を吐くので煙ではないのだが、いわばタコの吐く墨みたいなものだ。


 こちら側を一瞬に緋色に染め上げ、その上で、


 「散開!」


 私達が立っていた場所に、高速のストレートをハサミで打ってくる。

 ハサミなのに挟むのは二の次、突き刺す事を目的としたような1撃、いや2撃だ。


 「やっかいッスね、この海老!」

 「見えないにゃぁ!」


 煙幕からの攻撃を交わすことに必死で間合いを詰められないでいるミツキとチャチャ。


 ミツキのいうとおり、この海老、強いというより厄介なのだ。


 アウトボクサースタイルとでも言えば良いのだろうか?


 長いリーチを生かし、素早く重いハサミ捌きで、懐に入りづらく、


 「ああ!また躱された!」


 サナの嘆きのように、魔法攻撃にも敏感で、正面からだとダッキングやウィービング、あるいはサイドステップで避けるか、ハサミによるパーリングで弾き、地面からなどの死角からの魔法ですら、バックダッシュで避けられてしまう。


 特に海老っぽい動きのバックダッシュが高速の上に距離も長く、範囲魔法でも躱されてしまう上に、相手の得意な距離を保たれてしまうので厄介な海老ボクサーなのだ。


 それに加え、今みたいに煙幕を張るような真似もしてくるので、トリプルヘッド・シャークのような派手な攻撃力は無いが、地味に戦いづらい。


 鬼灯水の煙幕をメニューのアイテム欄にしまい込む形で吸い取り、視界を吸い取ると、また威嚇するように両方のハサミを上下させている。むかつく。


 からの、水底を薙ぐような右ロングフック!


 ミツキとチャチャはジャンプで躱し、間合いを詰めるが、左のジャブで止められる。


 その左のジャブに合わせて私が間合いを詰めると、裏拳のような機動のハサミが先程とは逆の横薙ぎで襲ってくる。


 それを躱した頃には、ピーカーブースタイルの構えに戻っているという悪循環だ。


 「ハサミが邪魔にゃぁ!」


 チャチャの素早さでも、かい潜れないボクシングスタイルは見事ではあるが、関心してばかりもいられない。


 こちらのメンバーも回避が高いので、大きなダメージは受けていないものの、何か策を練らないと、このままじゃ埒が明かないな。



▽▽▽▽▽



 「煙!来るわよ!」


 何度目かの煙幕が湖底を緋色に染め上げ、視界を奪う。


 そこから繰り出される2本のハサミによるストレートが、今度は人影を捉え、貫きはしないものの、ようやくグローブではなくハサミだった事を思い出させるかのように、その両のハサミが2つの身体を挟み、軽く振り回したかと思うと、威嚇するように、あるいは嬉しそうに挟んだまま両手を上下に動かしている。


 だが、鬼灯提灯手長海老は気づいていなかったろう。


 その人影は単なるルアーであった事を。


 「フィーッシュ!」


 海老ボクサーが嬉しそうに掲げているのは、淫魔法【淫具召喚】で召喚したダッチワイフ、いや最近の言い方でいうならラブドールだ。


 高級品で金属の骨格が入っている上に、革製品のSM衣装とグッズで完全武装させているので、簡単にはハサミで千切られなかったようだ。


 続けて淫魔法【淫具操作】で、それぞれのラブドールのSMグッズから伸びるロープを操り、海老ボクサーのハサミをグルグル巻きにした後、お互いのロープを結び、中央へと締め上げていく。


 両手に手錠をかけられたような形に締め上げられていく両手を抵抗しながら、海老ボクサーは煙幕を張るが、今更遅い。


 両のハサミが近づくに連れて、【淫具召喚】で召喚したロープが更に何重にも締め上げていく。


 「いいわよ!」


 視界を奪っている煙幕を再度メニューのアイテム欄に仕舞いつつ、三人娘に号令を出す。


 「いきます!」

 「いくッス!」

 「いくにゃぁ!」


 三人娘の掛け声とともに、その縛り上げられた両のハサミの上に、巨大な岩石が現れた


 チャチャにゃ!


 えびー!はさみー!じゃまにゃー!

 近づけないにゃー!


 近づけないとチャチャ、叩けないにゃぁ。


 次回、第七一五話 「鬼灯提灯」


 うにゃ?チャチャもそれお手伝い出来るのにゃ?

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