第七○六話 「離れの夜再び」
「じゃあ、アタシ達、先に戻ってお布団敷いてるッス。」
「お先にゃー!」
まてまて、流石に裸で帰るのはよせ。
と、いうわけで、淫魔【コスチュームプレイ】を使って、夏用の半袖半ズボンパジャマをミツキとチャチャに着せてやる。
色は選ぶ時間がなかったので、両方とも白地にネイビーのラインが入った前開きのパジャマだ。
「おそろいにゃ!」
「肌触りいいッスね。」
チャチャが前裾を両手でひっぱりながら、ミツキは袖口を確かめながらそんな事をいっている。
「夜道だから気をつけてね。」
「了解ッス!」
「はいにゃぁ!」
元気よく返事をして駆けていく二人。
「うふふ、仲がいいわね。」
「うん。」
湯船の中で、サオリさんはお向かいで、そしてサナは、あぐらをかいた私の上で、そういって小さくなっていく二人を眺めていた。
「5人だけっていうのも久しぶりな感じがしますね。」
「レン君が忙しそうでしたしね。」
「んー、家や里だと『お父さん』って呼べないから、すとれす溜まっちゃう。」
里ではサナにお父さんと呼ばせると色々説明が面倒だということで、その呼び方は禁止していたのだが、思いのほかサナにとってはストレスだったようだ。
まあ、ミナちゃんの事とかもあったしね。
風呂でくらいは甘えさせてやろうと思い、腕のなかのサナを抱きしめ直す。
「お父さん、明日は朝一で家に戻るの?」
抱きしめた腕を抱きかかえながらサナがそう問いかけてくる。
「そうだね。家の人が起きる前には着いて井戸を鑑定しておきたい。」
まだ淫魔の身体を見せる訳にはいかないので、明日は相当朝早くなりそうだ。
「じゃあ、夜が明けたらすぐこっちでないと、アエ姉さん朝早いから間に合わないかも?」
「それなら朝ごはんは実家でいただいた方が良さそうですね。」
サオリさんが両手を前に伸ばしながら、気持ちよさそうな声でそういった。
サオリさんにはちょうど良さそうだけど、ミツキじゃないが私にはちょっとこの風呂の温度は熱いな。
そんな会話をしながら、星空の下の露天風呂を楽しんだ。
▽▽▽▽▽
「おかえりにゃー。」
「おかえりッスー。」
離れの二階まで戻ると、チャチャのミツキが布団の上でゴロゴロとしていた。
しかも、
「おお、蚊帳まで付けてくれたんだ。ありがとう。」
「身長足りなくて、ちょっと大変だったッス。」
「ねぇねに肩車して貰ったにゃよ?」
「あはは、二人共お疲れ様。
両方の頭を撫でて二人を労う。
明日の朝が早いといったので、またサナに襲われるかと思ったが、思いの外、露天風呂では大人しく、早めに開放して貰った。
サオリさんとサナはもう少し温まったあと、水浴びしてから戻るらしい。
サウナみたいなだな。
「ととさん、今日ここにゃね。」
「ん?もう寝る位置決まってるの?」
チャチャが真ん中の布団を両手でパンパンと叩いて寝転がるのを催促している。
「今晩はアタシ達が左右で添い寝ッス。」
その布団に寝転がった途端、滑り込むようにミツキが左側に擦り寄ってきた。
と、思ったら、チャチャも真似をしようとしたらしいが、ヘッドスライディングみたいになってしまっている。
「今晩は、いっからんらんにゃ。」
「一家団らんな。」
いや、実際たまにチャチャを除いて一家乱々になっていることはあるのだけれども。
チャチャにゃー。
ごろごろなのにゃー。
今日はみんなでおやすみなのにゃ。
うれしいにゃぁ。
あ、ねねさん、かかさんも戻って来たのにゃ?
次回、第七○七話 「井戸と三人娘」
ととさん、ととさん、ねねさんたちも寝間着、おそろいにして欲しいのにゃー。




