第七○五話 「大地の加護再び?」
目の前に並んでいるのは、言ってみれば、とろろ定食。
採れたての自然薯で作った、とろろに麦飯とお味噌汁、囲炉裏で焼いたヤマメに切り干し大根の小鉢、野沢菜風の漬物を添えて、と、中々に豪華で美味しそうだ。
美味しそうだが、まずは淫スキル【淫具鑑定】で、鑑定、鑑定と……。
んー、鑑定結果的には『大地の加護』が付くかどうかまでは分からないな。
ちなみに、とろろは淫具扱いらしい。
いかにも精つきそうだしな。
たぶん、とろろご飯になっても淫具扱いだと思うが、これは後で鑑定しておこう。
さて、とろろが確定で『大地の加護』がつくかどうか分からないとなると、ちょっと事情が変わってくるな……いや、待てよ?
以前、兎の肉を食べた時も人族の私だけは『大地の加護』が付かなかったな。
で、たしかその後、淫魔の身体になったら、『大地の加護』が発動していたっけ。
と、いうことは……。
改めて淫スキルで淫魔化してから再度とろろを鑑定してみると、『食べることにより大地の加護(10%)が発動する。』と、追記表示された。
「どうしたッスか?急にその身体になっちゃって。」
「いや、鑑定結果に不満があってね。」
「ともあれ、たぶん、このとろろを食べると『大地の加護』が付きそうだということが分かっわよ。」
「じゃ、実験継続ッスね。」
「えーと、自分のとろろに魔法解除の魔法をかければいいんだっけ?」
「そうッス、アタシは魔法効果解除の魔法をかけてみるッス。」
ちなみに、サナの魔法は魔法そのものを不浄なものと扱いお祓いする魔法で、ミツキの方は魔法や魔術の術式に介入して、その効果を無効化する魔法だ。
二人が魔法を唱えた後、改めて、とろろを鑑定すると、ミツキの方のとろろから追記表示が無くなった。
「うん、予想通りね。」
この『大地の加護』は、当該種族の体内に入ってから発動するタイプのものなので、現時点ではまだ魔法の効果としては現れていない。
なので、サナの魔法解除魔法は不発だったが、ミツキの魔法は術式自体に介入するので、体内に入ったら発動するという術式自体が無効化され、効果が発動したのだろう。
「ミツキの方の、とろろを食べても『大地の加護』は付かなくなったはずだわ。」
「じゃ、次の実験ッスね。」
ミツキがそういって、サオリさんと、とろろを交換する。
「これでわたし達二人が、これを食べてみて、『大地の加護』が、わたしにだけ付かなければ成功でいいのですか?」
サオリさんが、サナと目を合わせながら、そう確認を取る。
よし、ここまでくれば、しばらくは元の身体でも大丈夫だろう。
「そうですね。でも、とりあえず、せっかくの料理がこれ以上冷めるのは勿体ないですから、まずはいただきましょう。」
男の身体に戻ってから、そう告げると、みんな一斉に手を合わせる。
「「「「「いただきます!」」」」」
▽▽▽▽▽
美味なとろろ定食に舌鼓を打った後、久しぶりにみんなで風呂へ行くということになった。
場所はもちろん、昼間にサオリさんが磨いていた川辺の露天風呂だ。
ご飯前に既に焼石を入れてあったのか、近づくと湯気がたっているのがわかる。
「それにしても、さすがに5人は狭いな。」
「アタシ達二人は、こっちで水浴びするから大丈夫ッスよ!」
「にゃ!」
熱い長風呂が苦手なミツキとチャチャが早々に逃げた。
「3人ならなんとか入れるか。」
「うん!」
「そうですね、入りましょう!」
今度はサナとサオリさんに食い気味肯定される。
さて、実験の結果だが、現在、無事、サナだけに『大地の加護』がついている。
こんなゆっくりしていられるのも、ミツキの魔法効果解除の魔法で、『大地の加護」、ひいては『鬼灯の加護』の原因物質を解除出来ることが確認出来たからだ。
「お父さん、早く早く!」
風呂桶から手招きしているサナを見ながら、明日は少し忙しくなりそうだな、と、気を引き締めた。
ミツキッス。
実験成功で良かったッスー。
これで失敗だったら、頑張って【魔力操作】スキル覚えたのが無駄になるところだったッス。
まぁ、それでも覚えていれば何かの時に使ったりしそうな気もするッスけどね。
次回、第七○六話 「離れの夜再び」
あ、ママさん、あれでも温度足りなかったのか、追加で丸石焼いてるッス。
タオルは巻いているとはいえ、シュールな絵ッスね。




