第七○四話 「久しぶりの」
「もう帰るにゃ?」
「うん、ご飯の準備があるからね。」
確かにチャチャの言う通り、帰るのには早い時間で、晩御飯の時間までも結構時間がある。
だが、サナがそういうからには何か時間がかかる理由があるのだろう。
実は今日の晩御飯にはあるものをサナにリクエストしているのだ。
そのあるものというのはズバリ、『大地の加護』が付きそうなご飯だ。
と、いっても、サナは鑑定が使えるわけではないので、『大地の加護』が付いたような感じがする、食べた後、元気が出る食べ物がリクエスト品だったりする。
そのリクエストをしたところ、しばらくサオリさんと話し合っていたようだが、一応あてはあるらしく、こうして迷宮を早上がりすることにしたらしい。
▽▽▽▽▽
「んー、この下ね。」
「結構深いかなぁ?」
離れまで戻った後、サオリさんとサナに連れられて来たのは森の中だ。
「なんか埋まっているんスか?」
「自然薯ですよ。」
「自然薯ってなんにゃ?」
「お芋だよお芋。」
代わる代わる問いかけるミツキとチャチャにサオリさんとサナが次々答えていく。
なるほど、自然薯とは、たしかにいかにも『大地の加護』が付きそうな食べ物だ。
「でも、折れないように綺麗に掘るの大変なんですよね。」
サオリさんが肩にしょっていたスコップを手に持ち替えながらそういって、自然薯の蔓の周りを見渡している。
「ああ、それなら大丈夫ですよ。」
淫魔法【淫具召喚】でいつもの槍を召喚して、穂先を土から伸びる蔓の先に当てる。
「お父さん、切っちゃ駄目ですよ?」
「大丈夫、大丈夫。」
そういってから、槍に種族スキル【男根のメタファー】をかけ、自分の身体の一部扱いにしたあと、穂先から地下方向へ可能な限りな量の土をアイテム欄にしまい込む。
「わっ!」
「うにゃっ!」
「大丈夫ッスか?」
「あら?」
思ったより土が仕舞えてしまい、近くに寄っていたサナとチャチャが出来てしまった穴に落ちそうになるというハプニングもあったものの、自然薯の周りに綺麗に空間が出来ている。
蔓を中心に直径も深さも1m半前後くらいだろうか?
たぶんこの範囲も淫魔ランク依存っぽいな。
「にゃっていうまにゃぁ。」
「あっという間ッスよ。」
チャチャとミツキがそんな事を言いながら穴を覗き込んでいる。
「ぶら下がっちゃってますね。」
その長さより深く一気に掘った形になってしまったのか、蔓から自然薯がぶら下がって揺れているので、サナが蔓を手繰り寄せ始めた。
「やりすぎちゃったかな?」
「うふふ、思ったより早く終わっちゃいましたね。」
サオリさんがサナから自然薯を受け取り、そんな事をいいながら微笑んでいる。
まぁ、この暑い中、土だらけ、汗だらけで掘るよりは良しとしよう。
▽▽▽▽▽
「全員揃って、っていうか、このメンバーだけで晩御飯って久しぶりな感じするッスね。」
「そうにゃねぇ。」
居間の囲炉裏で串に刺さったヤマメを焼きながらミツキとチャチャが、くつろいでいる。
このヤマメは時間が余ったということで、裏の川から二人が釣ってきたものだ。
ちなみにサオリさんは珍しく台所仕事を手伝っている。
と、いっても、さっき覗いた限りだと、自然薯をすりおろす係らしい。
その頃サナはというと、小鉢に切り干し大根を盛り付け終わったらしく、漬物の瓶に手を伸ばしていた。
「ちーちゃーん、運ぶの手伝ってー。」
「はいにゃー。」
うーん、こういうやり取りも、たしかに久しぶりのように感じるな。
サオリです。
自然薯掘り出すまで小一時間くらいはかかると思っていたのですが、レン君のお陰で一瞬で済んでしまいましたね。
実はこの離れの近くには、もう何本か生えているところがあって、こういう時のために残してあるんですよ?
次回、第七○五話 「大地の加護再び?」
それにしても、思ったより大きいのが取れてしまいましたね。
本家におそそわけしようかしら?




