第七○二話 「サンプル」
結論からいってしまえば、全員シロ。
私を含め、誰にも現状『鬼灯の加護』は付いていない状態だった。
「水はハズレだったッスかね?」
「単に濃度の問題な気もするな、川には大量の水が流れているわけだろ?
原因が何であってもそれで大幅に希釈されて、効果が発動してないのかもしれない。」
「なるほどッス。」
「とりあえず、これでお米は無罪なんですね?」
「よかった。」
『鬼灯の加護』の原因が水か米かもしれないという話をした時のサナとサオリさんの落胆ぷりは相当のなものだった。
なんせ米が原因だった場合、しばらく里の米が食べれないどころか、最悪、貯蔵してある米が全部廃棄になる可能性すらあったからだ。
先程食べた昼食の米は里の米だったのだが、それを食べた後でも『鬼灯の加護』がついていない現状を見て、二人は胸をなでおろしている。
「仮に水が原因だったとしても、最低6時間あれば『鬼灯の加護』は抜けるだろうという仮説も立ったし、決して無駄じゃなかったと思うよ。」
今朝の朝食の時間が約7時、今がだいたい13時だから、仮に里の水が原因だったとしても、そういう理屈になるはずだ。
朝食後の段階で、全員のステータスをチェックしておけば一番良かったのだが、サナブリ様のところに行く件で頭が一杯で、それどころじゃなかったな。
「大量の水が流れている川なら駄目なら、逆は何ッスかね?」
「チャチャわかったにゃ!」
ミツキのハテナにチャチャがそういって手を挙げる。
「瓶にゃ!」
「汲み置き用の水瓶に細工かぁ……それを全家庭となると、流石に誰かが気づきそうだな。
もう一段階くらい前……」
「それなら井戸でしょうか?
共同井戸や湧き水を使っている家もありますが、大体の家には井戸がありますよ?」
今度はサオリさんがそういって手を上げた。
井戸なら家の中にある水瓶よりは、何をしても見つかりづらいだろうし、毒を入れられるというシチュエーションもよくありそうだ。
いや、よくあっちゃ駄目なんだけど。
「調べてみないと断言できませんが、井戸に『鬼灯の加護』を付与させる何かはあるとは思います。」
「お父さん、一回里に戻ります?」
なぜか少し残念そうな顔をしてそう問いかけるサナ。
「いや、今日はトラージの街に行こう。」
▽▽▽▽▽
みんなをトラージの迷宮に置いてきた後、私は一人離れに戻り、こうして淫魔の身体で川辺に降りてきている。
「サオリさんの話だと、もう少し上流に少し深いところがあるらしいけど……あれかしら?」
視線の先には、滝までいかないものの、2mほどの高さから沢水が流れ落ちているところがある。
「それじゃ早速……。」
淫魔法【コスチュームプレイ】を解除し、真っ裸になって川の中へと入っていく。
こういっちゃなんだが、炎天下の中の水浴び状態で非常に心地良い。
ってそうじゃなく、深い所、深い所。
すり足で川底を辿りながら、先程の沢水のところを目指す。
「おぷっ…」
思ったよりいきなり深くなってたようで、頭の先まで一気に沈んでしまうが、むしろ好都合だ。
息を吐き切り、代わりに、ゆっくりと息を吸うように鼻から水を吸い込んでいく。
わざわざトラージの街に行ったのは、この『遊泳の加護』を受けるためだ。
これがあれば、水中で呼吸ができ、浮力を感じず、水中に沈んだままでいられる。
「さてと……」
今回は勇者装備である『変成の腕輪』の効果だけじゃなく、人前ではやりずらい、淫魔ランクに依存する調理スキル兼、露出度に応じて魔法使用の際にボーナスがつく淫スキル【裸エプロン】を加えての淫魔法【夜遊び情報誌】といこう。
サナです!
里のお米が無罪で良かった!
食べ物としても、もちろん大事ですけど、里にとっては神聖なものでもあるので、これが原因だったらどうしようかと思っていました。
次回、第七○三話 「水脈」
お父さん、一人で調べ物があるっていってたけど、あたし達がいたらやりづらい事なのかな?




