第六九九話 「淫具制作」
「出来たよ。」
「もうッスか?!」
まあ、外から見ていれば何の盛り上がりもないだろうが、自分の視界の中ではメニューから色々選んだりと、それなりにやっていたのだ。
ちなみに、目を開けたままでこれをやろうとすると、目線が挙動不審過ぎるので、こういう作業は目をつぶってやることにしている。
「薬は出来たものの、どうやって出すかな。」
「粉なら懐紙の上で、液体ならあの小瓶に……って、先に洗っておけば良かったッスね。」
ミツキの指差した先の小瓶類は掃除が行き届いているのか、ホコリこそ被ってないものの、中の状態は良くわからないというのが正直なところだ。
なにせガラス瓶じゃなくて陶器の瓶だしな。
ガラスの塊が入ったカプセルが在庫にあったはずなので、今、メニューからガラス瓶も作っておこう。
それはさておき、
「とりあえず今回のは粉だから大丈夫。懐紙見つけてたら持ってきてくれるかい?」
「了解ッスー。たしかこっちの引き出しだったッスね。」
背を向け、ピコピコと動く尻尾を眺めながら、ミツキを待つ。
「広げちゃった方がいいッスか?」
「畳み方とか失敗しそうだから、一回収納するよ。」
ミツキから数枚の懐紙を受け取り、メニューのアイテム欄に仕舞い、出来上がった『熱冷まし薬(魔)』と組み合わせる。
これくらいの作業なら魔素核は必要ないようだ。
出来た薬包をアイテム欄から取り出し、人差し指と中指で挟んでミツキに見せる。
「おー、それっぽいッスね。」
「それっぽいだろう?」
ちゃんと自動的に薬包の形に折ってくれるの便利だな。
実は折り方知らなかったんだよね。
「問題は品質だな。」
その薬包を淫スキル【淫具鑑定】で鑑定してみる。
「どうッスか?」
私が鑑定スキルを持っていることを知っているミツキが、そういって私の顔を除きこんできた。
「失敗……じゃないけど、成功でもないな。予想外ってとこか。」
「それじゃ分からないッスよ。」
改めてレシピ集を見直し、該当するものを探す。
「ふむふむ……。」
大雑把に斜め読みをすると、大抵の薬品は無級、初級、中級、上級、特級など、ランクが別れており、ランクが高いほど要求される素材の質や種類、数などが増え、必要なスキルランクも高くなっていくのだが、魔素核を使うレシピの方だと少し話が違ってくるようだ。
どの級でも使用素材は同じなのだが、使う魔素核のランクだけが変わってくる。といえば、分かりやすいだろうか?
要求素材を見比べてみると、魔素核を使う薬の場合、それ意外の素材は、初級と中級の中間くらいの質と種類のように思える。
魔素核を使う場合でも、その使用ランクに応じて無級からランク付けが行われるようだが、魔素核を使わないものに比べて薬効が高く、かつ、効果が早いのがメリットらしく、扱いとしてはマジックアイテムのような扱いになるらしい。
「えーと、予想外ってことは、魔素核無しの無級のレシピで、魔法の無級熱冷まし薬が出来たって事ッスか?」
「そういう事っぽいな。」
レシピ集に顔を寄せ合いながら、二人で出した結論はそうだった。」
「さっき使った魔素核のランクはどれくらいだったんスか?」
「試しだったから、ランク無しの物を使ったんだけど、試しにランク1の魔素核使ってみるか。」
「それで初級の魔法の熱冷まし薬が出来たら確実にお得ッスね。」
なんだその、確実にお得って。
いや、要求素材を考えると確かにお得か。
期待に輝くミツキの目の視線を感じながら、また目をつぶりメニュー内で今度はランク1の魔素核を使い作業を進めた。
▽▽▽▽▽
「出来た。」
「どうッスか?!」
アイテム名でほぼ確実だとは思うのだが、念の為【淫具鑑定】で鑑定してみると、ちゃんと、『初級熱冷まし薬(魔)』として、マジックアイテムになっている。
「とりあえず、お得に薬が作れるってことは分かった。」
「成功ッスね!」
ミツキッス。
パパ、あっさりと色々作ってたッスけど、これ本当は道具の扱い覚えるだけで大変なやつッスよね?
今更ッスけど、やっぱりパパは凄いというか規格外ッスね。
次回、第七○○話 「魔力回復薬」
他の勇者も、みんなこんな感じなんスかねぇ。




