第六七一話 「鋼の巨人」
グラっと鋼の巨人の体勢が崩れたところに、私のスキル【突進】と【格闘】を使った飛び蹴りがその顔面に【ドレイン】しつつも刺さり、ズシンと音を立てて倒れる巨人。
それを待っていたかのように、その顔面に打ち付けられるチャチャのハンマー。
ミツキの方は、今のうちに、と、【ドレイン】を付与した投げナイフを直接刺して、体力を削っている。
そんな攻撃を受けながらも、ゆっくりと体勢を整えつつ、立ち上がる鋼の巨人。
再度倒そうと再び振るわれた顔面ハンマーも、その体制を崩すことはできず、元通りに立ち上がり、巨人は剣と盾を構える。
いや、しかし、
「今ので大分削れたわ!」
体力ゲージ2本持ちの敵とはいえ、1本目のゲージはかなり良いところまで減っている。
正面を私が受け持ち、ミツキが縦横無尽に、かく乱し、死角というか、巨人の剣が届かない角度からチャチャが削っていく。
そして、
「飛ぶ方!私じゃない!」
鋼の巨人の3度目の【大砲拳】がチャチャを狙った。
狙ったのだが、
軽くステップを踏み、立ち位置を変えたチャチャが、
「うんんんんんにゃぁああああああ!」
飛んできた拳をハンマーで打ち返したのだ。
っていうか、打ち返せるのそれ?!
ピッチャー返しよろしく打ち返された鋼の拳が一直線に鋼の巨人の顔面に突き刺さり、その頭部を破壊する。
「手がしびれたにゃぁ…。」
ハンマーを足で挟み、両手をぷらぷらと振っているチャチャ。
本当にチャチャは直感的というか、頭が柔らかいというか……。
私やミツキみたいに考えすぎるタイプには無い強さがあるな。
見習わなくては。
「ミツキ。」
「はいッス。」
「作戦変更、私とチャチャの二人で、腕を砕きにいくわ。」
▽▽▽▽▽
頭部を失うとともに、ゲージを1本減った鋼の巨人は、若干動きが鈍くなったとはいえ相変わらず防御が上手く、ミツキの攻撃を的確に盾で受けてくる。
が、それ故に、位置が読みやすい。
「チー、もう1回いくわよ!」
「はいにゃ!」
ミツキの攻撃によって場所が固定された鋼の巨人の腕を、武器を槍からハンマーに持ち替えた私の攻撃とチャチャの攻撃が前後からクロスすると、ベキベキベキと音を立て二の腕あたりから砕け落ちた。
よし、ピンポイントな位置じゃなくても2撃×2人で砕けるな。
「じゃ、反対側いきましょうか。」
▽▽▽▽▽
攻略方法が確立した以上、鋼の巨人はもうそんなに怖い相手ではなくなった。
あの後、剣のついている方の腕も砕き、それでも蹴りで攻撃してこようとする鋼の巨人の膝裏を、またチャチャがハンマーで打ち付け倒すと、あとは【ドレイン】経由、ミツキも加わってのハンマーでの滅多打ちで倒しきる。
「やったッスね!」
「また棒が出たにゃ。」
ドロップ品は、ランク4の魔素核、そして鋼の延べ棒だ。
こっち側のルートは上手く選べば、鋼の巨人ともう2連戦できる。
この調子で、ちゃっちゃと片付けてしまおう。
▽▽▽▽▽
「お父さん、お帰りなさい。」
「婿殿、早かったのぅ。」
「ミツキちゃんも、チャチャちゃんもお疲れさま。」
祠の出入り口から里へと戻ると、事前に念話で連絡してあったとはいえ、サナ、サビラギ様、サオリさんが出迎えに来てくれていた。
外はすっかりもう暗くなっており、思ったより迷宮の攻略に時間がかかっていたようだ。
サナです。
里の迷宮は、道を覚えるまで大変だから時間がかかると思ってたけど、こんなにかかるなら、お弁当作っておいて正解だったかも?
次回、第六七二話 「結界守跡地」
大丈夫だとは信じてたけと、無事に帰ってきてくれて良かったです。




