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第六三八話 「三人の勇者」


 「え?じゃ、その話は嘘なんスか?」


 よほどの驚きだったのか、さっきまで怯えてた様子のミツキが身を乗り出してそう切り出した。


 「嘘というより、三国同盟のための方便じゃな。


 確かにワシは三人の勇者と共に戦い、一人の勇者と二柱の魔王を倒した。


 しかし、ワシと勇者達の関係は、ワシが仕えるといったものではなかったということじゃよ。」


 そういって、ぐい呑を傾けるサビラギ様。


 っていうか、


 「勇者と一緒に勇者と魔王をですか…」


 「まあ、ワシ独りでも、三人の勇者のうち二人を倒してるでの。」


 凄いですねと言葉を繋げる前にサビラギ様が爆弾発言をぶっこんでくる。


 「あのー、この話、お酒入った状態で聞いて良いものなのでしょうか?」


 「アタシもそう思うッス。もっと真面目に聞いた方がいいような気がするッス。」


 「真面目に聞かれてたまるかい。


 酒の席で口が滑った、飲んでいたから覚えていない。

 今、話しているのはそんなたぐいの扱いにしなきゃならない話さね。


 身内にすら聞かせられない。

 漏れたら国すら傾きかねない話だが、ありがたく酒の肴にするがいいさ。」


 カカカと笑いながら、こちらにぐい呑を差し出すサビラギ様。

 どうやら中身が空いてしまったようなので、お酌をさせて貰う。


 「そんな事より、婿殿が聞きたいのは別のことじゃろ?

 勇者は元の世界に帰れたのか?

 違うか?」


 そのずばり確信をついてきた言葉にミツキがキュッと私の腕を強く抱く。


 「違いません。

 まずはその事を確認したいです。」


 「帰れるのであれば、帰りたい。と?」


 「いえ、娘たちが出来た今となっては帰る気はありません。

 ただ、帰れないと、帰らないとでは、心の置き方が変わってきます。」


 「ふむ、嫁や娘を連れてなら元の世界に帰りたい。という場合もあるじゃろうがな。


 まぁ、婿殿が帰る気が無いというのであれば、教えよう。


 ワシの知る限り、勇者が元の世界に帰れたかどうかは分からない。


 なにせ、元の世界とやらを確認する方法がないのじゃからな。


 じゃが、帰ろうとした勇者は当然いた。


 一人目の勇者で、探索者として仲間になったアサーキ共和国の勇者、タダシ・タカキ。


 サオリの父親じゃよ。」



▽▽▽▽▽



 「仲間になって、10年近く一緒にいて、二人も子を生んでやったというのに、元の世界に帰りたいとは薄情なもんさね。」


 少し寂しげにサビラギ様が目を伏せる。


 今、この瞬間、サビラギ様は、元族長でも、金剛姫でも、母でも祖母でもない、一人の寂しげな女性の顔をしていた。

 

 ああ、確かにこの顔こそ身内には見せられないだろう。


 「その勇者は、どう…したんですか?」


 「サオリの妹のアエが生まれた後、大喧嘩の後、里を出ていったよ。


 元々、アサーキ共和国の勇者召喚は、人族から漏れた術式を使ったもの。


 一番 つたなく、奴でやっと二人目の勇者というていたらくじゃ。


 元の世界に戻るすべが合ったとしても、伝わっているわけが無い。


 そこで元の世界に戻るべく、ライバルだったナイラ王朝の勇者を通じて、ナイラ王朝に亡命しようとして、暗殺された。


 このワシにな。」


 そういって、ぐい呑みをあおるサビラギ様。


 「な、なんでッスか!里にいたってことは、その勇者はサビラギ様の婿だったんスよね?

 なんで、自分の旦那を……。」


 「簡単じゃよ。


 ナイラ王朝に奴が渡り、勇者が二人となれば、アサーキ共和国だけではなく、ネローネ帝国との軍事バランスも崩れてしまう。


 そうなれば、三国同盟もご破産じゃ。


 アサーキ共和国としては、それだけは阻まねばならなかった。


 そして、当時、アサーキ共和国には奴を倒せる者がワシしかいなかった。それだけのことじゃよ。」



 サナです。


 こっそりとお婆ちゃんにお母さんを部屋から連れ出して欲しいと言われて、一緒にお風呂にいったけど、なにか難しい話でもするのかな?


 次回、第六三九話 「二人目の勇者」


 お母さんに聞かせたくない話といえば……あたしの実の父親の話?

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