第六三〇話 「金剛姫が来た」
「二人もサナのお婆ちゃんに会ったの?」
「あったにゃ!てっきり、ねねさんのお姉ちゃんかと思ったにゃ。」
え?サナのお婆ちゃん、そんなに若いの?
「いや、違うッスよ。確かに人族の感覚からしたら、ママさんの姉くらいには見えてもしょうがないッスけど、流石にサナちー以上ママさん以下は無いッス。
ほら、ママさんてアタシ達の前じゃ、わりと、ほわほわしてるじゃないッスか。
しっかりものサナちーの方が雰囲気や髪の毛の色とかが似てるって意味ッス。」
私の動揺が顔に出ていたのか、チャチャの言葉が足りない分をミツキが丁寧に解説してくれた。
金剛姫、姫と呼ばれるくらいだから、やっぱりそういう気品のある感じなんだろうか?
「アタシ達とはまた改めて、っていってたッスから、後でパパも会えると思うッスよ?
でも……」
「でも?」
「アタシ自身のレベルが高くなったせいか、迷宮での経験のせいか分かんないッスけど……あんな強そうな生き物、初めて見たッス。」
それは相手の強さが分かるようになったということなのか?
▽▽▽▽▽
ミツキ曰く、普通の鬼族の女性だと思ってたのが、サナを見て一瞬気が緩んだのか、ブワッと気配が増したように感じたのだそうな。
それはチャチャも同じだったようで、びっくりして尻尾ピンってなったにゃ、と語っている。
先日戦ったトリプルヘッド・シャークが小魚に感じられるくらい、というのだから、どれだけ強いんだって感じだ。
会うのが正直怖い。
結局、その後、ミツキやチャチャと窓の外の風景を見たりして過ごしていたが、途中で仲居のマソホちゃんが、サナとサオリさんの二人は今日、貴賓室の方に泊まることになった、との伝言を持ってきたので、今日は大人しく三人で寝ることにした。
家族団らんや、温泉街を楽しむことは出来なかったが、コマさんの図らいで、明日も連泊させてくれるとのことなので、その当たりは明日以降の楽しみにとっておこう。
▽▽▽▽▽
「(ちょっとミツキ、いたずらしない。)」
「(むー、かまってくださいッスよー。)」
私を中心に川の字に、いや『小』の字で、奥の和室で床に着いたのだが、チャチャの寝息が聞こえ始めた頃、何処にとはいえないが、ミツキがちょっかいをかけてきた。
「(…不安なんスよ、サナちー達とアタシ達、これで離れ離れになったりしないッスよね?)」
唐突にサナのお婆ちゃんという究極の保護者が現れたことによって、環境というか事情が変わったように感じたのか、ちょっとミツキはナーバスになっているらしい。
だからそこを撫でるなというに。
「(そこはサオリさんとサナが説得できると信じるしかないだろう。
それに受け入れて貰えるだけの貢ぎ物も用意したし、少なくても二度と会えなくなる、なんてことは無いさ。)」
自分自身の不安をも説得するように、そう話しながらミツキの頭を撫でてやる。
「(うーん、そうッスよね。)」
「(どちらにしても、明日以降、私達も会ってからの話だろう。
今、気に病んでもしょうがないさ。)」
そう語りかけると少し納得したのか、甘えるように兎耳ごと頭を押し付けてくるミツキ。
「(わかったッスー……それはそうとなんスけど、パパ、アタシ達が部屋に戻るまで、ママさんと「レベル上げ」してたッスよね?)」
なぜバレた。
「(いや、あれだけ匂いすれば、わかるッスよ。いつもの部屋と違って、空気清浄機?ついてないんスから。
ろくに換気もしてないッスよね?)」
おっしゃるとおりでございます。
つまりミツキはその残り香に当てられていると。
「(……小上がり和室の布団の方に行く?)」
「(行くッス。)」
だからそこを握るなというに。
そんな訳でチャチャを起こさないようにミツキと布団を抜け出すことになった。
▽▽▽▽▽
>ミツキは淫魔の契りにより主を倒した
>190ポイントの経験値を得た
>ランク差ボーナスとして1,000ポイントの経験値を得た
>レンは淫魔の契りにより眷属を倒した
>70ポイントの経験値を得た
>ミツキは淫魔の契りにより主を倒した
>190ポイントの経験値を得た
>ランク差ボーナスとして1,000ポイントの経験値を得た
>レベル39になった
>レンは淫魔の契りにより眷属を倒した
>80ポイントの経験値を得た
>ミツキは淫魔の契りにより主を倒した
>140ポイントの経験値を得た
>ランク差ボーナスとして1,000ポイントの経験値を得た
ミツキッス。
むー、お腹もやもやしてるのは、そのとおりッスけど、何より少しでも今すぐ強くなっておきたいッス。
少しくらいレベル上がったとしても、到底追いつけないのは分かってるんスけど…。
次回、第六三一話 「朝が来た」
今のうち出来ることは全部しておきたいッス。




