第六二一話 「ゴールドへの道」
「お主のその治療の腕は、娼館に限らず、どこの街でも、国だろうと欲しがろう。
探索者など危険な商売をせぬとも、その紹介状があれば、この街で十分以上に食っていけるじゃろうし、街や国の有力者を紹介してやってもよい。
どうだ?この街のゴールドにならぬか?」
「せっかくですが、お断りします。」
「なんじゃ、欲のない。」
呆れたような顔でソファーに背を預けるギルドマスター。
「私に治させたい街や国の有力者いると顔に書いてありますよ?
治したい人と治させたくない人の間に立つような真似はご遠慮させて貰います。
どうしても、と、いうのであれば、カレルラさんを通してください。」
確実に病気や怪我を治せる医者というのは、治してほしい人にとっては味方だが、それを望まない人にとっては最大の敵だ。
それが有力者であればなおさらで、それが原因で命を狙われるような状態や家族が危険な目にあうのは避けたい。
ここはカレルラさんに防波堤になって貰おう。
「ふむ、駄目か。」
「駄目です。」
「しょうがないのう、じゃあ、こっちを受け取るがいい。」
そういうと、ギルドマスターはもう一通の、今度は封筒をテーブルの上に乗せる。
「こっちはシルバーの紹介状じゃ。
取引とはいえ、娼館の娘達が世話になったからのう。
心配なら中を改めても良いぞ?」
だまし討ちでこちらもゴールドへの紹介状では?と思ったのが顔に出てしまったのか、それとも冗談なのかは分からない台詞だが、こちらは蝋で封がしていないので中を改めさせて貰うと、確かにシルバーへの紹介状だ。
得意な仕事に怪我、病気の治療など、医術に関することと、注意書きが添えてある事以外は不審な点は見受けられない。
「確かに。これでしたら喜んで受け取らせて貰います。」
「しばらくしたらこの街を立つといっておったが、また立ち寄ることがあれば、声をかけるがよい。
路銀くらいは稼がせてやろう。」
足が出た分のおつりが30金貨分なら、路銀どころか1年の生活費レベルなのだが、これは好意として受け取っておこう。
「ありがとうございます。あ、最後に一つ良いですか?」
「なんじゃー?」
仕事は終わったとばかりに、足を組み直してくつろぐギルドマスターに問いかける。
「ゴールドが金を払ってでも街にいてもらいたい探索者なら、プラチナの探索差は、どうなんでしょうか?」
「決まっておろう。国が金と権力を与えてでも敵に回したくない探索者じゃ。」
▽▽▽▽▽
「やっぱりご主人様がいると、戦闘が安定するッスねー。」
「あっという間にのろま達成にゃ!」
ノルマな。
娼館ギルドのギルドマスターと別れた後、早速みんなと合流したのだが、そういって貰えると来たかいがあったというものだ。
まあ、ミツキの戦闘方法は私の種族特性【ドレイン】とそれを付与する種族スキル【男根のメタファー】の利活用に特化しているので、そんな感想も出るだろう。
短槍を相手の身体に突き刺す、ミツキとチャチャのコンビネーション技、『杭打ち』も、淫魔法【淫具召喚】で、ほぼ無尽蔵に短槍を用意出来るとなると尚更だ。
「依頼されたものも揃いましたし、ちょっと早いですが納品に行きましょうか?」
「それじゃ、御主人様も、そろそろお父さんに戻って。」
▽▽▽▽▽
「はい、確かに。これだけの紹介状があれば、昇格はほぼ確実ですので、3日後にもう一度、この窓口に来てください。」
スラッとした細身の山羊族らしい受付嬢は、そういいながら、書類を揃え、レベルを計測する『真実の双子板』をカウンターに出してくる。
そういやこれがあったか。
そりゃシルバーは20以上のレベルが必要なのだから、当然、チェックはするか。
メニューのステータスから淫スキル【ナルシスト】を使って、偽装工作している全員のレベルを調整する。
チャチャをレベル20まで上げて、サナとミツキをレベル25へ、サオリさんは35、私も30と、ざっくりそれぞれ1万ポイントくらい経験値を稼いだくらいのレベルにしておこう。
実際、これくらいのレベルがないと金素材を納品していることに違和感が出るだろうしな。
念話でレベルを調整したことを皆に告げ、驚かないように注意した後、受付嬢に促されるまま、サオリさんから順に見かけのレベルが高い順に計測していく。
「さすが皆さんレベルが高いですね。びっくりです。」
いや、本当のレベル知ったらびっくりどころで済まないだろうけどな。
ミツキッス。
ご主人様がいると切り札を温存しなくてもいいのが楽ッスね。
ママさんも結界張りまくりで、安心感と安定感がダンチッス。
次回、第六二二話 「ウシトラ温泉街へ」
おかげでお昼前にノルマ達成ッスよ。
凄いッスね。




