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第六十一話 「サキュバスさん」

 絶対に帰ってくると誓ってはいても、これが最後の温もりになるかもしれない。


 そんな不安と少しのアルコールが引き金となりサナを求めてしまった。

 サナが「お父さんから求めてくれるの嬉しい。」と受け入れてくれたのだけが救いだ。


 と、いうか激しく求めあってしまった。

 日数的にサナも発情期のピークだったのもあるだろう。


 もうすぐ出かけなくてはいけないというのに、今は二人で風呂に入っている。

 「お父さん、気を付けて帰ってきてね。」

 「なにかお土産に欲しいものはあるかい?」

 「お父さんが早く帰って来てくれれば何も。」

 そういって、サナは頬にキスをしてくれる。

 サナ曰くお父さんは、唇よりも頬っぺたにキスをされたほうが嬉しそうにしているそうな。

 そうなの?


 「なるべく早く帰ってくるよ。」

 先に風呂を上がり、淫スキル【淫魔】で淫魔モードになり淫魔法【コスチュームプレイ】で着替えることにする。

 欲を言えば安全のために買ったばかりの革装備を着ていきたいところだが、敵意むき出しに見えてしまうかもしれない。

 とりあえず一式を淫魔法【コスチュームプレイ】に登録しておいて、いつでも着替えられるようにしておこう。


 結局、白のタートルネックの薄手ニットに濃いグレーのクラシカルなハイウエストロングスカート。

 淫魔法【淫具召喚】のカタログにあった、いわゆる「童貞を殺す服」というやつを着ていくことにする。

 

 せっかくなので中身も白のスリーインワンで、ガーターベルトに同じく白のストッキング、そしてローファーを履いている。

 

 白のニットが身体のラインと小麦色の肌を強調し、淡く紫がかった緩い三つ編みの髪は肩から身体の前に下がり柔らかい雰囲気を与える。

 少し尖った耳、つり目がちのサナより明るい紫の瞳は神秘的な印象すらある。と、自画自賛する。


 男相手なら見た目も武器のうちだ。

 問題が美醜の基準が元の世界と違うことだが。

 少なくとも大人しそうに見える分だけ敵意を呼ばないだろう。

 今日は清楚系サキュバスさんでいくとする。


 ラブホテルから簡易宿泊所の部屋へ、そして部屋からギルド二階の踊場へ出てバーカウンター側の階段を目指す。

 途中、吹き抜けから下を見るとロマはもうバーカウンターに座っているようだ。

 時間が時間のせいかホール内の人は少なめの様子。

 

 階段を降りバーカウンターへ向かうとそのままロマの横に座る。

 「ご注文は?」

 先程もいた初老で白髪オールバックのバーテンダーがそう聞いて来たので「隣の男性と同じものを。」と答える。

 なかなか渋い声のバーテンだ。


 「おいおいお嬢さん、これは清酒だぞ?」

 「また『鬼盛り』ですか?」

 「…どこかで会ったかな?」

 「さあ?でもロマさんの待ち人は私ですよ。」

 ちょうどグラスが運ばれてきたのでロマに向かって掲げる。


 「良い戦に。」

 「…ふむ、良い戦に。」

 二人で乾杯をする。

 ロマの方は陶器の御猪口だ。


 「あくまでも個人的になのだが関係を聞いても良いか?」

 「サナちゃんと同じく犠牲者候補だった。かしら。」

 そう答え軽くグラスを傾け話を続ける。

 「そして奴隷として売られたサナちゃんの主人をレンに移し替えたのも私よ。」

 

 「なぜそんな事を?」

 ロマはこちらを見ないまま問う。

 「そうしなきゃサナちゃんは逃げられなかったのよ。」

 「奴隷への『命令』か。」

 「ええ。私も逃げるのに精一杯でしたしね。」

 本格的な話に入る前に、この身体でもロマには味方だと思わせたいが、後々を考えると嘘もつけない。


 「状況は分からないが事情は分かった。」

 「信じて貰えるかしら?」

 「レンの紹介でサナの恩人となれば俺は信じるほかあるまい。

 悪いようにはしないから今回の問題に協力して貰えると助かる。」

 「私も二人の仲間であるロマさんを信じるわ。だから力を貸してちょうだい。」

 「目的は?」

 「人助け。かしら?自分自身も含めてね。」

 「よかろう。」


 ロマがこちらに向き直し御猪口を掲げるので再度乾杯をし、改めて自己紹介をする。

 「レインよ。」

 「ロマだ。」

 そのまましばらく二人とも無言でグラスと御猪口を傾ける。

 お互いこの後の事を考えているのだろう。

 そうこうするうちにバーテンダーが口を開いた。

 「お部屋のご用意が出来たとのことなので、ご案内いたします。」

 ボーンボーンと時計が鳴る。

 ちょうど0時になったようだ。


 バーテンダーの言葉とともに入れ替わりで別のバーテンダーが入ってくる。

 背の高い女性で金髪のショートカットに大き目のピアスが似合っている。


 初老のバーテンダーはその女性に目配せをし、バーカウンターから出ると、簡易宿泊所のフロントとの間にある奥への通路を手のひらで示す。

 「こちらへどうぞ。」


 バーテンダーに促され、後を着いて行くとその後ろにロマが続く。

 その後、通路を真っすぐ暫く進むと正面に両開きの扉が見えてくる。

 バーテンダーはその扉をノックもせずに開けると中に入る様に促すので、部屋に入り、その後をロマ、バーテンダーと続く。


 部屋の中はかなり広い。

 高級そうな大きな机が中央にあり、その背後には大きな地図も貼ってある。

 どうやら街とその周辺の地図のようだ。

 扉側から見て左右の壁は天井まで届く大きな本棚になっており、左側の本棚の前には本棚側に一人用のソファーが一つ、その前に厚い天板の木製のテーブル、そしてそれを挟むように3人掛けのソファーが二つ置いてある。

 

 窓は無く、天井から吊るされたシャンデリアが魔法の明かりを灯しているようだ。

 ワイン色の絨毯がまた部屋の高級感を強調している。


 向って右側の扉から遠い3人掛けのソファーに座るよう促されたのでそこに座ると反対側のソファーにロマが。

 そして奥の一人用のソファーにバーテンダーが座ると


 「エグザル迷宮探索者ギルドマスター、ソーン・エイジャーだ。」

 そうバーテンダーは名乗った。


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