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第六一七話 「グレード」


 料理人らしき男がいうには、今回の蟹肉や、以前に手にした鶏肉や豚肉などのカプセル、通称【食材カプセル】には、実はグレードの違いがあるのだそうな。


 もっともグレードに違いがあるのは食材カプセルに限った話ではないらしく、カプセルの内側の底に小さく円形に光る場所があり、そこでグレードを判断できるらしい。


 それは知らなかったと素直に口に出してしまうと、それを気にされる探索者は普通ゴールド以上でしょうから、仕方ありません。とフォローされてしまった。


 逆にいうと、商人なら気にして当然なのかもしれない。


 そのグレードは一番下のカッパーから、一番上のプラチナまで4ランクが存在しており、一説によると、探索者のランクの呼び名も、ここから来ているという話があるそうだ。


 通常、市場に出回るのは、シルバーかカッパーの素材なので、商人、今回の場合でいえば料理人は、なるべく安くシルバーの食材を集めたいのが本音なのだそうな。


 探索者側は普通、グレードの存在を知らないくらいなので、その理屈でいうと、カッパーの素材はギルドに、シルバー以上の素材は本職に流した方が効率的に儲かるのだろうか?というような事をミツキが口にすると、その通りです。と大きく頷かれてしまった。


 ちなみに探索者ギルドの掲示板に貼ってある依頼文で個数指定のものは、実はギルド側には依頼者からシルバー以上でとか、グレードを指定しているものも多いのだそうな。


 セットだと高いのはそういう理由だったのか。


 多く収めるとお得と思わせて大量に納品させて、ギルドでグレードを仕分けした後、卸先を決める。


 そう考えると、今回、サナ達が依頼人から重宝されていたのは、納品のシルバー率どころかゴールド率まで高いせいもあったのだろう。


 微妙にカモられてたともいえなくもない。


 そんなことを、わざわざ教えてくれるということは…


 「つまり、私どもから、直接その()()とやらを仕入れたい。と、いう話ですか?」 「話が早くて助かります。」



▽▽▽▽▽



 一応誤解しないでいただきたいのですが、と前置きをした上で、その料理人は【食材カプセル】について改めて説明してくれた。


 端的に今回の【蟹肉】で例えると、シルバーの蟹肉は、天然の採れたてと同クラスの味の上、カプセルのままなら保存が利く。


 カッパーだと、それよりは鮮度が落ちたような味ではあるが、保存の面では天然物より遥かに有利であり、普段、一般人の口に入るのはこのクラスなのだそうな。


 カッパーが悪いのではなくて、カッパーが普通で、シルバーが良い。といった感じなんだな。


 天然物の素材でも、カプセルの素材であっても目利きをするのは料理人として当然のことであり、より良い素材をより良い料理にしたいというのは、料理人のサガみたいなものなのだそうな。


 サナが大いに頷くかと思ったが、意外とリアクションが少ない。

 それはサナが家庭料理に求める部分とはまた違う思いなのかもしれない。


 「と、すると、金蟹は保存が利く上に…」

 「天然物より味が良いってことッスか?」


 あ、ミツキにセリフを取られた。


 「そのとおりでございます。そして探索者ギルドで集められる【蟹肉】を始めとした食材カプセルはカッパーのグレードを価格の基準としておりますので…」


 「それで値段が安いのですね。」


 サオリさんがそういいながら納得したような顔で甲羅酒を傾ける。


 「えーと、料理人、いえ、お店としては、良い食材を確実に入荷したいので、直接取り引きをしたい。ということなんですね。」


 「はい。おっしゃるとおりで。」


 サナが少し困ったような顔をしながらそう話すと、我が意を得たりと料理人が大きく頷く。


 「お話は分かりましたが一つ問題がありまして…。」



▽▽▽▽▽



 料理人は探索者ギルドでの納品に比べて高額で買い取ってくれるというのだが、ぶっちゃけた話として、今となっては、うちのパーティーはお金に困っていない。


 今、欲しいのはお金ではなく探索者ギルドでの評価なのだ。


 と、いうような内容を遠回しに料理人に話したところ、それでは手数料分安くはなってはしまいますが、一度探索者ギルドを通しましょう。と、提案された。


 今朝、商人と直接依頼を受けることが出来たのと同じ状態か。

 ギルド側がOKなら願ったりだな。


 普通にギルドに納品するより価格も評価も高くなるのなら、反対する理由はない。


 一応、あまり長くこの街に滞在するつもりが無いという話と、そこから始まった雑談で、早くシルバーの探索者になって卸売市場に出入り出来るようになりたい。という話をすると、それならば、と、朝の仕入れの時間なら、この料理人や店の者に同行して市場に入っても構わないとの提案を受けた。


 この提案にはサナが食い気味に食いつき、結果的にサナが満足する店になったので、今回は良しとしよう。



 サオリです。


 せっかくの美味しい料理と美味しいお酒が美味しくなくなるようなお話かと思ったら、良い話に落ち着いたようで何よりです。


 それにしてもこの甲羅酒、美味しいですね。


 次回、第六一八話 「一服」


 蟹味噌入りのもコクが合って美味しいですが、甲羅で香り付けをしただけのお酒の方が好みですね。


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