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第六一四話 「瞬間」


 その矢に封じられていた魔法は…


 トリプルヘッド・シャークの傷口から、まるで爆発が起こったかのような火柱が上がる。


 現在のサナの最大攻撃である単体中級炎魔法、鮫肌の上からならともかく、体内から燃やされたら防御のしようもあるまい。


 トリプルヘッド・シャークの体力ゲージが一気に減り、最初の体力ゲージを削りきった。


 ガァァァァァッツという重機の音にも似た悲鳴を上げながらも、まだジャンプの頂点に達していないサメは、空中で固まっているかのように口を開けたまま上昇を続けている。


 そう、過去の戦闘経験からだが、体力ゲージ複数持ちは大ダメージの1撃で即死しない代わりに、ゲージが切り替わる時、一瞬の硬直があるのだ。


 とはいえ、もう1本分の体力をその瞬間に削り切るには手も時間も足りない。


 普通の攻撃ならば、だ。


 「サナ、いってくるわ。」

 「!?わ、わかりました。いってらっしゃい!」


 掴まっているロープから手を離し、自分にかかっている淫魔法【コスチュームプレイ】を解いて全裸になりつつ、落下していく。


 落下先にはサメの大きな口が開いているが、大人の女性の身体がスルリと入るほどの大きさではない。


 サメの口の中で【ドレイン】?

 相手の硬直が解けるのが早ければ、そのまま噛まれて終わりだ。


 ここでの選択肢は…


 種族特性【ペドフィリア】


 大人の身体で駄目なら、子どもの身体になればいい。


 今頃硬直が解けて噛みつこうと思っても既に遅い。


 サナやチャチャよりも更に小さい女の子の身体になりながら、落下速度はそのままでサメの口どころか喉までストンと落ちていく。


 胃まで落ちないようにサメの食道に両手両足をかけ、落下のスピードを落とそうとするのと、逆にサメが胃まで飲み込もうと喉を締めるのは、ほぼ同時。


 結果的に全裸の少女がサメの喉に詰まっているという猟奇的な絵面だ。


 そして、手足どころか薄くなってしまった胸やその先までがサメの食道の粘膜に触れている。


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 粘膜から乳首を使っての吸収攻撃、【真・ドレイン】が、トリプルヘッド・シャークの膨大な体力を一気に吸い取っていく。


 相手の予備体力ゲージが無く、かつ、噛まれずに口内に侵入できる瞬間しかできない捨て身技。


 この瞬間だけを待っていた。


 やがてサメが私を飲み込むために喉を締めようとする力が弱まったかと思ったら、身体に接している部分が、いや、視界全てが淡い青い光となり、そして消えていく。


 サメの身体は消え、そのまま自分の身体は落下していくところで、再びサナと目が会う。


 「おかえりなさい。」

 「ただいま。」

 「御主人様、泳ぐなら裸より水着の方がいいと思いますよ?」

 「そうね、考えておくわ。」


 サナを見て、そんな軽口を叩きながらも、まっすぐ水面に落ちていく。


 と、いうか今、下見たら絶対怖い。

 サンダーボルトハーピーの時も、めっちゃ怖かったもの。


 身体が小さいせいか、体勢が良かったせいか、ツポンと小さな音だけを立てて水中へと落ちていく。


 ここで【遊泳の加護】の意識を切り替えないと、そのまま水中でも落下を続け、墜落死してしまう。


 意識を落下から泳ぎに切り替え、落下スピードを落としていったが、地面までは結構ギリギリだった。


 ちょっと上手に落ちすぎたな。


 「なんでご主人様、小さくなってるんスか?」

 「少しでも安全に危険な事をするためよ。」

 「チャチャよりもちっちゃいにゃー。」


 ゲージを一本削りきったら、あとは【ドレイン】でなんとかする。としか伝えてなかったので、ミツキからは不思議がられ、チャチャからはなぜか頭を撫でられた。


 「そうだ、サオリさん。」


 そのまま二人を引き連れて、サオリさんの元へと向かう。

 回復して攻撃までしていたものの、【ライトニングボルト】を食らったら無事では済まないのは私自身が知っている。



 サオリです。


 油断…だったのだと思います。

 あるいは【金剛結界】は破れないという慢心か…。


 どちらにせよ、あやうく命を落とすところでした。


 次回、第六一五話 「井戸より」


 片脚だけで済んだのは幸運でしたね。

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