第六○二話 「かけっこ」
「チャチャ、頑張って走ると、すごく速く走れることに最近気づいたのにゃ!」
チャチャのいう最近というのは、おそらく私達と会ってからの事だろう。
そりゃ、それまでレベル4だったのがレベル44になったのだから、ステータスの【敏捷】の値も、文字通り桁違いに上がっているだろうしなぁ。
【耐久力】の素質が低いので、本来は短距離ランナー系なんだとは思うが、それすら上がりに上がったレベルとステータスでカバーされているらしい。
よくよく話を聞くと、最初の方は、たまに釣った敵が途中で付いてこなくなったりもしていたそうな。
相手の索敵範囲から逃げ切れちゃったんだな。たぶん。
「チャチャも色々出来るようになったんだね。偉いぞ。」
そういいながら、チャチャの頭を撫でる。
なぜか続いて頭を突き出すミツキの頭もついでに撫でる。
「お父さん、あたしも。」
サナもかい。
▽▽▽▽▽
その後、みんなと別れ、私は午後からの診察と治療に入ったのだが、そこでギルドマスターからの伝言を貰った。
なんでも初日に頼んでおいたお願いの結果が明日の朝、出るらしい。
相変わらず仕事が早いな。
うーん、それだと、明日は少し早起きになるだろうから、今日はみんなに少し早上がりをしておいて貰うか。
明日、朝早くから、みんなを連れていきたいところがあるから、と、その旨をみんなに念話で伝え、今日の分の診察と治療を終わらせる。
今日でギルドマスターの娼館のお姉さん達は全員診ることが出来たので、明日からは治療だけだ。
魔力消費量と回復量的に考えると、明日中には終わらないが、明後日の午前中には終わりそうな感じだな。
明日、最終の見積をギルドマスターに出して、明後日の午前中に治療は終わり。
料金不足分の補填としての治療があれば、その日の午後に終わらせてしまいたいところだ。
▽▽▽▽▽
「明日の朝、連れて行く所って、今、聞いていいッスか?」
「駄目。」
「秘密なの?」
「秘密ってほどじゃないけど、まぁ、ちょっとね。
残念ながら楽しい場所じゃないよ。」
こちらが治療を終わり、あちらが狩りを終わって合流後、ミツキとサナに明日のことを軽く問い詰められる。
今から話しても良いのだが、自分でもこれが正しいかどうか分からないので、当日に事後承諾的にしてしまいたいのが正直なところだ。
まぁ、怒られることはないと思う。いや、思いたい。
「チャチャは、かかさんや、ねねさんや、ねぇねや、ととさんと一緒だと、どこでも楽しいにゃよ?」
「うふふ、ありがとう。」
膝枕で丸くなっているチャチャの頭を微笑みながら優しく撫でるサオリさん。
わりとチャチャはサオリさんにくっついている事が多いな。
母性に飢えているのだろうか?
私の方にサナやミツキがくっついている事が多くて、私の方が空いていないせいもあるのかもしれない。
意外とミツキもサオリさんにくっついている事がちょいちょいあり、そういう意味ではサナがサオリさんにくっついて甘えている事が少ないな。
「レベル上げ」の時にくっついているのは、あれはまた違うだろうし。
そんな事をダラダラと考えながら、夕食後の団らんを、淫魔法【ラブホテル】で繋げた、いつもの別荘で、まったりと過ごしている。
今日は三人娘がお疲れ気味だったので、夕食は夜一で済まして来たところだ。
合流した時はそうでもなかったのだが、ひとっ風呂浴びた後、狩りの緊張が解けたのか、釣りに行っていたミツキとチャチャは体力的に、魔法と弓を使い分けながら、戦闘のタイミングを図っていたサナは、精神的に疲れていた様子だったのだ。
晩御飯を自分で作りたがるサナを宥めながらの夕食だったが、こうして外から帰ってきて、ソファーに座ってしまうと、見るからに眠そうにしている。
と、いうか、いつの間にか静かになったチャチャがもう寝ていて、サオリさんに抱きかかえられていた。
「さ、二人も無理しないで、明日は早いから寝てしまいな。」
「うーん、パパおんぶー。」
「抱っこー。」
眠くて、ふにゃふにゃになっているミツキとサナを、お望みの方法で運んでやりたいのは山々だが、物理的に腕が足りないので、両方無理やり片手づつで抱っこして、寝室に運んでやった。
サナです。
うーん、やっぱり気が張っていたのか、お風呂から上がったら、一気に疲れが出ちゃいました。
晩御飯は作れなかったけど、今日は昨日よりも沢山ギルドに納品出来たので、良い日だったと思います。
次回、第六○三話 「お姉ちゃん」
エグザルの街での事を考えると、この調子なら、ひょっとしたらそんなにかからずにランク上げられるかも?
 




